第Ⅸ章 僕は、ある日猫を拾った。

唐突であるが、僕は猫を拾った。

その猫はとっても可愛らしかった。

しかし、その猫には、一つだけおかしいところがあった。おかしいというよりも不思議なところが。

それは、あの日、僕が空から降ってきた石にとても似ていた物を首にぶら下げているところだ。

でも、それが、運命なのでないかと。思って僕はその猫を拾った。


そして、猫との毎日が始まった。

猫の世話は大変だと思っていた。餌やりや、トイレにちゃんと行くようにする躾など。でも、この猫はそういうことは一切なかった。

しっかりと、ご飯の時間になったら、飼い主である僕の元にきて、餌をねだってきて。トイレは自分でいって。全く困らなかった。

強いて言うならば、餌やりを自分ではなく猫が、自ら食べに来ている点であろう。

猫と一緒に暮らしていく内に、あの悪夢とも言える夢を見なくなった。これは、猫の効果なのか、それとも僕自身がもう、あのことになにも思っていないのか。それはわかんないけど、僕は、猫のおかげであると信じている。

そして、僕は、半年、このすこし、変わった猫と過ごして、やっと名前を付けた。

マナカと。

なぜその名前にしたのか。それは、至って簡単なことである。僕の好きな人だった坂山愛佳の愛佳を英語にしただけ。

そうして、僕はこう、言う。

「マナカ、こっちにおいで」

と。

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