第Ⅷ章 そして、また僕は、ひとつの可能性を、幻想を抱いてしまう。
あの日、僕の身に不思議なことが起こった。
あの空から降ってきた石が、坂山愛佳の型になって、僕に坂山愛佳の気持ちを伝えてきた。
──貴方のことが好きです。と。
それは、とても嬉しかった。素直に嬉しかった。あの、僕には到底釣り合うことのない人だと思っていた。彼女が、坂山愛佳という人物が。僕のことを好きだって思ってくれていたなんて。それで、僕は、もう、この世に思い残すことはないと思った。正直もう、死んでもいいと思った。でもそうは、しなかった。それは、あの言葉の続きがあったからだ。
「それと、私がこんなに早く死んじゃったから。貴方は長生きしてね。これは、貴方のことが好きだった女の子からの最後のお願い」
と。だから、僕は、死を選ばずにすんだ。
僕は、最近こんな夢ばかり見てしまう。
僕が、彼女に告白して、彼女からは、いいよと言われ。僕と彼女は恋人になる。それから、毎日のように、一緒に帰り、一緒に弁当を食べたり、それは、周りからも羨ましいがられる程に。でも、最後は絶対になんの例外もなく、彼女は僕の前からいなくなってしまう。そこで、僕は、起きてしまう。
体感時間にして、一時間ぐらい。現実時間にして、三時間ぐらい。
その時間はとても充実していて今生きていることに嫌気が差してしまうほどに充実し過ぎていて、死んでしまいたくなる。でも、僕は、死なない。
──貴方は長生きしてね。これは、貴方のことが好きだった女の子からの最後のお願い。
この言葉があるから。
そして、今日もいつもと似たような、夢を見る。それは、たぶん、一つの可能性にして、僕自身の願いであると同時に幻想なのかもしれない。
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