第6話 ペットと特殊魔法
翌朝――
部屋のドアを叩く音で目が覚めた。
どうやら朝食の用意が出来た様で、パーシさんが起こしに来てくれたみたいだ。
「う~ん」
伸びをして体を起こす。
昨日はエールを沢山飲んだ気がするが、体の調子はすこぶる良い。
階段を下りて食堂に行く。
「おはよぅ。よく寝れたかしら?」
パーシさんが、朝食を運んできてくれる。
「あぁ。パーシさんおはよう。久しぶりに何も気にしないで熟睡できたよ」
トーストしたパンとスープ、目玉焼きとベーコンのようなものが用意されている。
家庭的な朝食が嬉しい。それらをゆっくり食べて、渋みのあるお茶のようなものを飲むんで一息つく。
宿泊客は俺しか居ないようで、一人でぽつんと座っている。
さて、今日は魔法の練習するか。普段やっている身体強化や、槍を飛ばしたときのような力の伝導はもうなんとなく習得できてると思う。だが、俺がやりたい魔法はそんなんじゃない。もっと派手な魔法っぽい魔法がやりたいのだ。
「そうだ、パーシさん。魔法に詳しい? 魔法に付いて色々詳しく話を聞きたいんだよね」
パーシさんに聞いてみる。
「そうねぇ。私も昔は冒険者だったんだけど、戦士だったから魔法はあまり得意じゃないのよ。それに人に教えれるほど魔法を理解している人ってそんなに多くないしねぇ。」
「そうなのか。誰でもばんばん魔法を使えるもんだと思ってた」
「シルチーちゃんはどうなの? あの子、あんなだけど魔法に関しては結構優秀よ?」
「やっぱりあいつかぁ」
お腹の虫に出てけ~って言う人はちょっとなぁ。
暫くすると、外から何かがドタドタ走ってくる音がして、それは勢いよく扉をバーンっと開けた。
「おっはよーう! あははは。来たー!」
騒がしい奴がやってきた。
「あぁおはよう。ほんと元気だよなお前。あの後もずっと飲んでたけど二日酔いとかないのかよ」
「わたしはお酒に強いんだ! それより、今日はわたしのペットに会わしてあげるから来て来て!」
「ペット? ペットみたいなお前がペット? 今日は、魔法の練習とかしたいんだよなぁ。ペットよりちゃんと具体的に教えてくれよ」
「そんなのは後でいいー! 早くついてこーい!」
シルチーはそう言うと、外に出てどんどん先を行く。
俺はしぶしぶそれについていき、またシルチーのほったて小屋のある木を登る。
今日は、更にその上に登る。その木の頂点につきそうな所で、なにやら大きな鳥の巣があるのが見えた。
「ピュイー! ピュイー!」
シルチーが口笛で何かを呼んでいる。
…………。
なにも来ない。
「ピューイ! ピューイ!」
…………。
来ない。
「おい……何も来ないけど本当にペットなのか?」
俺は、一生懸命ピュイピュイやってるアホの子に聞く。
「おかしいなー。おーい! うおおおいいいい! ご飯よおおおお!」
今度はでかい声で叫びだした。
すると、突然
そいつは凄い勢いで舞い降りてくるとシルチーの頭を鷲掴みにして、再び上空に舞い上がっていった。
「え、おい? ちょ! え? えぇぇ!?」
それは一瞬の出来事であった。
馬鹿でかいカラスのような黒い鳥が、シルチーを捕獲して颯爽と飛び去っていった。
…………。
そして暫くして、それはまた巣のあるとこに戻ってきた。
「あははは、痛ーい! このー! 悪い子はキャリオンリザードあげないよー!」
シルチーは後頭部から少し血を流しながら、そのカラスをぽかぽか殴っている。
カラスは、くちばしでシルチーの頭をくわえてごりごりやっている。
「え? これは、スキンシップなの? 懐かれてるってことでいいの?」
シルチーが魔法カバンから六本足のトカゲを何匹か出してカラスにあげると、そいつはやっと大人しくなった。
「お、お前大丈夫なのか? 食われそうになってないか?」
俺は頭から血を流しているシルチーに聞いた。
「うははは。
魔法って便利だね。
「この子はね。小さい頃に、怪我をして落ちてたところを、わたしが助けて育てたんだ。あ! 目はあまり見ないほうが良いよ」
え? あれ? なんか。頭がぼーっと……。
「こら! やめるんだ! これは食べ物じゃないよ!」
シルチーがカラスの足をぽかっと殴ると、ぼーっとしていた頭がはっきりするようになった。
「お、おい……。なんだいまのは?」
「この子はソウルイーターと言う魔物で、獲物の目を見て催眠をかけて捕食するんだ!」
「おいおい! それだと今のは危なかったんじゃないか! 絶対、食おうとしたろ!」
「あはははは! 名前はソーリーって言うんだよ」
「なんかイラっとする名前だなおい!」
「レトロスの街に行く時に、ソーリーに連れてってもらえれば、1時間くらいで着くんだ」
「え。それは凄い便利だな。で、でも、ちゃんと飛ぶのか? そいつは信用できるのか?」
「大丈夫だよ。ソーリーは荒っぽいけどわたしには逆らわない。サトシも気に入られたみたいだから問題ない!」
そのお前の言葉が一番信用できないんだよなぁ。
「まぁいい。1日歩くところを1時間で行けるってのは何ものにも代え難いしな」
「ちなみに、催眠とかは魔力を目に集中させてガードするようにすればかからないよ」
「シルチーさん、そういうことは先に言おうか」
そうして、ソーリーとの顔合わせが終わった俺達は、魔法の練習をしにシルチーの家まで戻ってきた。
「じゃあ魔法を教えてやるかー。サトシの属性が良く分からないから、とりあえず基本となる火・水・風・土の四元素の初級魔法をやってみよう」
「四元素か。それぞれの
「そうだね。イメージのほうは大丈夫そうだから、呪文を教えるね。
「ふむふむ」
「あとは、手に魔力を集中させて、放ちたい方へ向けて、呪文を唱える!」
「よし。やってみるか! どきどきするな」
まずは火だな。火球が飛んでいくイメージをして、魔力を集中させる。
「
…………。
「あれ? なんも出ない」
「あぁ~。火の属性は無いっぽいね。属性持ちならイメージがちょっとおざなりでも呪文があってれば何かしらの変化は出るはずなんだよ」
「くそ~。火魔法とか一番かっこよさそうなのに無いのかよ」
次は水だな。水球を飛ばす感じか。
「
…………。
ないね。はい次。
「
…………。
「先生。なにも起きないんですけど?」
俺は、がっくりと肩を落としてシルチーに聞いた。
「おかしいな~。強力な魔力があるのは間違いないんだけどなぁ」
はぁ。俺の魔法は身体強化だけか。
「……もしかして。サトシ、最初にわたしと会った時を覚えてる?」
「ん? お前が木から落ちてきた時のことか?」
「そう。あのとき、わたしが魔法を使ったら驚いてなんか言ってたよね? めどけーちょんを持ってるのかとかなんとか」
「あぁ。あれは俺が居た世界の治療器具のことでな、あっという間に傷が治ったから、それを持ってるのかと思ったんだよ」
「……なるほどね。ちょっとそれをイメージしながら、オリジナルの呪文で唱えてみよう。ソーリーに噛まれた頭がまだちょっと痛いんだ。丁度良いからわたしにかけてみて」
「オリジナルの呪文というと
まぁこれならいつも使ってたし、仕組みもわかるからイメージは簡単だ。シルチーの頭に手を伸ばして魔力を集中させる。
「
呪文を唱えた途端、手から魔力が放たれたのを感じた。
治癒装置のナノレーザーが出現し、シルチーの頭を目まぐるしく照らす。
「おぉ!! なんか出来たぞ!! ど、どうだ? 治ったか?」
シルチーは自分の頭をぐりぐりやっている。
「おー! 全然痛くないー! わたしの
「おぉ! 凄い! 確かに
「でも、どういうことだ。俺には四元素の属性はなくて光の属性があるってことか?」
「多分、サトシは、特殊魔法の使い手なのかもしれない。ちょっと他にもイメージしてなにかやってみて」
「特殊魔法の属性があるってことか? よく分からんが、それならハイテク兵器とかも再現できるのか?」
俺は手を近くの木に向けて魔力を集中させた。
「
かざした手からかなりの量の魔力が放たれた。
そしてそれは光線となり、手を向けていた木に穴を開け、その次の木にも穴を開け、その次も開け、その次も開け、見えるところは全部貫通していった。
「あがががが! なんて威力! まるで神の光だ!!」
シルチーがわなわなと震えている。
「す、す、凄いな……。」
俺もびっくりしてぷるぷる震えている。
「ってか神の光ってなに?」
「なんとなく言ってみただけ」
そのあと色々試してみて、オリジナルの特殊魔法を多数習得したところで魔力切れをおこし、意識がなくなり俺は倒れた。
***
■
・初級魔法。小さい火の玉を飛ばす。
■
・初級魔法。小さい水の玉を飛ばす。
■
・初級魔法。小さいかまいたちを発生させる。
■
・初級魔法。小さい土の壁を作る。
■
・未来の高度な治癒装置を再現した魔法。ほとんどの外傷は治すことができるが、呪いや病気といったものは治せない。
■
・未来の対戦艦用のレーザー兵器を再現した魔法。本来のものは直径1メートルくらいのレーザーを射出するが、サトシが再現した魔法は、手のひらサイズのレーザーを射出する。貫通力が高く、魔力を溜めることにより射出時間を延ばして破壊力を上げることも出来る。
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