異世界3分間SAVING~世界を救うための制限時間は3分です~

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第1話 勝ち確です!

「マジかよ……死んだわコレ」

 夏休み前に受けた模試の結果を手に、僕は絶望していた。

 志望校欄に並ぶE判定の列。


 そびえ立つ過酷な現実の壁。

 机に突っ伏し、頭を抱える。

「うおお! 僕の生き方は間違いだった! 頼む! この世に神がいるなら、赤ちゃんから人生をやり直させてくれ!」

 そう心の中で叫んだ瞬間、僕の頭を支える机が、突如として青く光り輝きだした。


「まさか……これは異世界転生フラグ!?」

 心の中で再び叫んでみるも、僕の体が変化する様子はいっこうにない。


 代わりに、青い光の中から、人間の頭がずももっと浮かび上がってきた。

 出てきたのは、明らかに人間。

 しかも、見た目は十代半ばの少女だ。


「あー、そっちかー、美少女が降ってきちゃうやつかー」

 光がゆっくりと収まるにつれ、少女の姿がはっきりと見えてくる。

 銀色に輝く髪。

 まるで陶器のような白い肌。

 複雑な装飾の施された杖。

 消えた光のあと机に残った、複雑な模様の魔法陣。

 どこか現実離れしていて、おとぎ話の世界から来たと言われても、信じてしまえそうな雰囲気の少女だった。


 少女はゆっくりと目を開くと、ハッとしたように机から飛び降り、窓辺から外の風景を見回す。

「あのっ!」

 少女は僕のほうを振り向いて言う。

「つかぬことをうかがいますが、ここは日本ですよね? 今は西暦何年ですか?」


 それはまぎれもなく日本語だった。

「あ、ああ、そうだよ。ここは日本で、西暦は2017年」

 僕の答えを聞いた少女は、突然目を輝かせる。

「本当に!? 2017年!?」

「うん」

 僕に念押しの確認をすると、少女の傷つき疲れきったように見えた美しい瞳が、一転して怪しい光を帯び始めた。そして、彼女は驚くほど腹黒い顔で笑い出す。


「フ……フハハ! 勝った! 勝ちました! これはまさに勝ち確、完全勝利大確定です! ルクレツィアめ、今度こそ私の恐ろしさをとくと思い知らせてやりますよ!」


 盛大なガッツポーズをかましたのち、少女は僕のほうを向き直って言う。

「さて、そういうわけであなた、名前はなんというのですか?」

「え? 僕?」

「あー、そういう遠慮とかいらないですから! 時間が無いんで!」

 遠慮したわけではないのだけれど、ともかく僕は名乗ることにした。


「僕の名前は秋山あきやまりょう。きみは?」

 僕が聞くと、彼女は思い切り反り上がるほど胸を張ってこう言った。

「よくぞ聞いてくださいました! 私こそは多元世界を自在に飛び回る、次元渡りプレインズウォーカーの美少女魔術師エレオノール・カトリーヌ・ドニュエル・ド・ラ・プレニュ。エレナと呼んでいただいてかまいませんよ!」


 やたらとテンションが高い女の子だ。

 ひとまず用件を聞いてみることにしよう。

「えーと、それでエレナはどうして僕の部屋へ?」

「これは失礼いたしました。あえてこの部屋を選んだわけではないのです。次元跳躍は極めて不安定な魔法であり、加えて今回は発動までに十分な集中ができなかったため、狙った世界に飛べるかどうかすら怪しい状況だったのです。ところで早速ですが」

「あ、はい」


 突然丁寧な説明を受けたため、僕は少し面食らってしまったけれど、次に彼女が口にしたセリフは、それ以上に驚きだった。

「私といっしょに世界を救ってくださいませんか。制限時間は3分間です」

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