第5話 これはあかんやつや

 次にドロップアイテムの回収にいく。

 降りてまず目についたのが一見、鋼をさらに輝かせたようなダガー。

 

【オリハルコンダガー】

アンデット特効、非損傷。


 オーバースキャンの影響なのだろうか、持つとアイテムの説明が見える。


 形状は大きめの尖ったダガー。そもそもオリハルコンダガーはゲーム時代に愛用していた武器だ。現実で見れたことで感動を覚える。


「これから頼むよ」


 応えるようにオリハルコンダガーがイーンと共鳴したように感じた。

 いや実際わずかに振動している。恐るべき切れ味を彷彿とさせた。


 最後に魔法書を二冊拾う。


【魔法書:ダークネス】

レア度:UC。

レベル4の闇属性・攻撃魔法。対象を暗闇にする。


 これは覚えられそうな気がする、念じてみる。


『〈ダークネス〉を覚えた』


 ――やっぱりか。


【魔法書:アースバレット/地弾】

レア度:UC。

レベル3の木属性魔法。対象に高速で石礫を飛ばす。


一応念じてみる。


『〈アースバレット/地弾〉を覚えた』


 ――ほう! レベル4の木魔法とレベル3の火魔法は覚えられなかったのに、レベル3の木魔法を覚えたということ は、適性が関係ある? 


 エターナルファンタジアでのダークエルフの属性の適性は、、


光:0

火:10

水:30

木:30

闇:90


 こんな感じの闇に特化したものだ。ヒューマンの全適性が30前後に比べたら極端になる。

 こういう適性が関係するのかもしれない。シャインはそう判断した。


 探索を再開する。川沿いをさらに下り探索すること一時間、南端に着いた。

 川の終着は湖になっていた。虫などの生物はいない、淡い光源に照らせれた幻想的な地底湖。

 わずかに水面が揺れたので覗き込むと、澄んだ水の中を全長2メートルを超える漆黒の騎士が闊歩していた。


【ブラックナイト】

闇の聖女の墓所に住むスケルトンソルジャーが700年の間、高濃度の魔素に浸かり続けることで変質した存在。


 装備はフルプレートアーマー〈全身鎧〉に黒いタワーシールド、右手に淡く光る大剣を持っている。

 

 オーバースキャンの影響か、頭上にHPバーみたいなものが表示されている。


 ――うん、こいつは触らないでおこう。


 ダメージを与えられる気がしない。

 地底湖周りに生えた茶色に白が混じった雑草を採取し、一旦マイホームに戻る。

 木の上で草を取り出す。じっとしているならともかく戦うなら栄養を摂取しないと弱ってしまう。草なら少しは栄養はあるだろうという魂胆だ。毒があるかもしれないが、一か八か食べる。


 ――う。


 苦い雑草の味が口の中いっぱいに広がる、不味くて涙が出てきた。それでも咀嚼し食べる。


 どちらかというとマイホームが南西寄りにあるので、次は西側と仮定した方角の突き当りまで探索することにした。しばらくしてスケルトンアサシンと奈落のグールを先に発見する。

 一匹ずつ釣って、毎度のやり方で退治。やはり先ほどの魔物の頭上に見えるゲージのようなものはHPバーだったらしく、数値こそ見えないものの、格闘ゲームのようにガンガン減っていく。0になったら死ぬようだ。かなり面白い。

 気づけば3レベル上がっていた。


【レベル:15】

HP:161/161

MP:148/148


力:21(new!+1)

体力:11

敏捷:25(new!+1)

魔力:27(new!+1)

精神:21

運:31


力、敏捷、魔力が上がっている。6~7レベル毎くらいに上がっているようだ。


『スキルを3つ獲得できます』


 色々気になるがここは【ダメージ軽減:50】を先に取ってしまうことにする。3連続で選択し獲得した。


 探索を再開。真西に進むと西端まできた。

 突き当りの壁際に人が3人くらいでも悠々通れるトンネル洞窟を発見した。

 中に入り慎重に進む。10メートルほど進んだあたり、広い部屋に出ようとしていた。シャインは入ることを躊躇する。室内は他と同じ岩肌で構成されているものの、壁や床に幾何学模様が描かれている。


 中を覗くと、ちょうど反対側に階段が見えた。


 ――あれは! 地上に繋がっているんじゃないの!?


 その時、中にいる巨大な影に気づく。

 ブラックナイトを二回り大きくした輝く白銀のフルプレートアーマー〈全身鎧〉を身に着けたマント騎士。


【デスナイトアビス】

デスナイトが1000年の間、濃い魔素に浸り続け変質した存在。飛び抜けた戦闘力を持ち、凶悪な即死魔法も扱う。


 右手にはオレンジ色に輝く剣を持ち、部屋を闊歩している。

 一見、神々しくもある外見ではあるが、開いた顔の部分からは干からびた人のものに、目だけが煌々と赤く灯り邪悪で禍々しい相貌を覗かせていた。


 ――無理っ!


 咄嗟に後退し身を隠す。

 エターナルファンタジアにおいてデスナイトは複数のパーティで倒すようなボス格モンスター。それが強くなっているとか、一人で勝てるわけがない。


 その場から退散した。


 「あんなの無理だ」


 マイホームの木の上に戻り考える。


 階層ボス部屋の対岸に見えた上り階段が地上へ繋がっている可能性は高い。ダンジョンを逆走していることをイメージすれば辻褄が合うからだ。しかし簡単に抜けさせてくれるとは思えない。あの部屋には怪しい文様が描かれていた。何かしらのトラップがあってもおかしくない。


 行くなら倒すつもりで臨む必要がある。

 ならばレベルをもっと上げなくては。このドーム内の限られた経験値で、もっと強くならないと無理だろう。なっても無理かもしれないが。

 次からはデスナイト戦に特化していこう。

 シャインはそう決断する。

 


 少しの休息を終え、南西方面の探索にでる。

 奈落のグールとスケルトンアサシンを見つけ、いつものやり方で倒す。レベルが上がった。

 

【レベル:16】

HP:171/171

MP:159/159


 ここは成長性を考えて力と敏捷が上がる【仁王】を獲得した。

 シャインは狩りを続ける。


【レベル:17】になる。


 ――デスナイト戦で役立ちそうなスキル。

 硬い装甲に効くかもしれない〈鎧通し〉を取ろう。

【鎧通し】を獲得!



 レベルが上がりにくくなる中、怒濤の勢いで奈落のグールとスケルトンアサシンを倒しまくる。

 ただ、どんなに急いでいても奈落のグールと正面から殴り合うことはしない。効果のほどやあとどれぐらい取れそうかを考えて、シャインはここまで状態異常耐性を捨てた取り方で成長させている。奈落のグールと殴り合えば結構な確率で死ぬと考えているからだ。

 18……19……、順調に討伐を進めついにレベル20に到達した。


【レベル:20】

HP:216/216

MP:204/204


力:25(new!+1)+(+3(仁王分))

体力:11

敏捷:29(new!+1)+(+3(仁王分))

魔力:28(new!+1)

精神:21

運:31


『条件を満たしました。クラスを獲得可能です』


 先にスキルを獲得する。動体視力なども上がるかもしれないので【五感強化】を獲得した。


 また新しいスキルが候補に増えた。


【アクティブ・サークル】レア度:SSR。

〈五感強化〉〈気配察知〉〈魔力感知〉を合成消費することで獲得可能。

半径10メートルまでの伸縮可能な円形の知覚領域を作る。MPを消費することで円を10メートル以上に拡張可能。


 ――ふーむ。

 

 気配察知と魔力感知の範囲は常時30メートルあるので、それと比べると範囲が狭くなり使い勝手が悪そう。せっかく手に入れた五感強化や気配察知が消えるのも痛い。


 ――これは保留。


【瞑想】を獲得した。もう一つは【分身】が通用するかもしれないので獲得した。


 さっそく分身を試す。


《分身》


 ぬっと自分の中から自分が現れた。

 心臓が飛び出るかと思った。


 ――リアルすぎ。

 ドッペルゲンガーだ。


 しかしイメージ通りの動きをしてくれるのでかなり面白い。分身出現時間5秒、クールタイムは10分。

 ただ分身に意識している間は、本体が極端に疎かになる。


「これは慣れが必要だな」

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