第4話 レベル10、転職
近くに川のように地下水が流れている。
行ってみることにする。木から降り細心の注意を払いながら歩く。道中大きめの石を〈オープン・ザ・ボックス〉で拾うことも忘れない。川に辿り着く。
地下水は湧き水のように澄んでいた。
綺麗に見えても湧き水は危険だ、食中毒になったりする。
しかし干からびそうな身体が欲している。飲ませろと、喉に訴えてくる。
「こんなもん飲まずにいられるか」
結局は飲むしかないんだ。体力のあるうちに飲む。
仮に毒でもこの身体は耐性あるかもしれないという打算もある。
水に手を入れる。ひんやり冷たい。
両手で掬った水をまずは一口、次の瞬間には飲み干した。
「うっめえ」
身体中に染みわたる。今までの水の中で一番美味く感じる。
お陰で元気が出てきた。このまま出口探しの探索を開始する。
――川下を南と仮定して、まずは南から探索していこう。
地下水に沿って50メートル歩いた辺り、〈気配察知〉か〈魔力感知〉の影響かふと先ほどと同じ気配を感じたので見てみると少し離れたところにまた奈落のグール。
【奈落のグール】
闇の聖女の墓所にいるグールが数百年の間、高濃度の魔素に浸かり続けることで変質した存在。致死、即死系の攻撃を多数持つ。
――おっと、今までこんな説明はなかった。これが〈看破〉の能力か、思ったよりはちょっとショボい。
そして、やはりこのグールは危険だ。
《エナジーボルト》
遠目から当てるとグールが体を揺らしながら追いかけてきた。一目散に木に戻る。
また木の下まで誘い込みシューティング。
〈1時間後〉
途中拾っていた石の投石攻撃もあり、先ほどよりだいぶ早くに奈落のグールが倒れた。
ステータスを確認する。
【レベル:10】
HP:106/106
MP:13/97
HPとMP以外は変化なし。
先ほどよりも落ちたものの一気にレベルが3上がった。上がり幅が減ったのは単純にレベルが高くなって、必要経験値が増えたせいか、強くなることで獲得経験値が減ったせいだろうと判断する。
『スキルを3つ獲得できます』
『条件を満たしました。クラスを獲得可能です』
――えええっ!?
転職きちゃったよ!
これには驚いた。転職はエターナルファンタジアでは特殊なアイテムや転職クエストを経てなるものである。
――この世界ではこういうものだと思おう。
先にスキルを決めることにした。ざっと見ていくとスキル候補の一番下に新しいスキルが追加されていた。
【オーバースキャン】レア度:SSR+。
〈ネームスルー/名読み〉〈レアリティ判別〉〈看破〉を合成消費することで獲得可能。これらの能力を保有しつつ、対象の称号と体力が見える広域の鑑定スキル。
【アイテムボックス】SR。
〈オープン・ザ・ボックス〉〈ブラックボックス〉を合成消費することで獲得可能。容量50トンの収納空間。生物は入らない。
より上位版になるようだ。獲得することにした。
【オーバースキャン】を獲得!
【アイテムボックス】を獲得!
ダメージ軽減がずっと残ってる保証はないので【ダメージ軽減:50】を選択した。獲得までまで残り3回となった。
そして転職。候補を見る。
【レンジャー】レア度:C。
自然の恵みを受けし者。
【シーフ】レア度:C。
鍵開けのプロ。
【ローグ】レア度:UC。
トリックスター。
【トレジャーハンター】レア度:UC。
夢追い人。
【影使い】レア度:UC+。
影を操る者。
【アサシン】レア度:UC+。
暗殺者。
【ポイズンマスター】レア度:UC+。
毒の専門家。
【闇のシャーマン】レア度:R。
闇の精霊術師。
【ダークエルフメイジ】レア度:R+。
闇の魔術師。
【ニンジャ】レア度:LR(レジェンドレア)。
伝承を継ぎし者。永続的に敏捷+3、精神+3。
ざっと見ながらシャインの目はあるクラスで目が釘付けになる。
【ニンジャ】。
――なんで中世ファンタジーでニンジャなんだよ!
レジェンドレア、ステータスも上がる。もうこれでいい、これしかない。
迷うことなくニンジャで、決定!
さっそくステータスを確認してみる。
力:19
体力:9
敏捷:23(new+3)
魔力:25
精神:19(new+3)
運:24
――ちゃんと上がってる。
この+3は大きい。いや合計+6か。これだけでも破格だ。
次にドロップ品を拾う。魔法書〈ファイヤーボール/火球〉が落ちていた。
念じてみるも覚えることはできなかった。
――ふう、疲れた。一旦木に戻ろう。
その時、ふと背中が泡立つような胸騒ぎがして振り返る。
背丈ほどの黒い木があるだけだ。
――気のせいか。
視線を戻して歩き始める。悪寒が走った。
ばっと振り返る。
よくよく目を凝らして見ると、擬態した虫が何となく分かるように分かってしまった。
――ダルマさんが転んだかな?
【スケルトンアサシン】
闇の聖女の墓所に住むスケルトンレンジャーが数百年間、高濃度の魔素に浸かり続けることで変質した存在。非常に俊敏で攻撃力が高い。
視認することが出来たからだろう、名前が浮かんできた。
枯れ木に擬態する黒い骨。漆黒のスケルトンだ。
これは狙われている。
後退りで距離をとった後、すぐ反転し木に向かって全力疾走する。
すぐに後ろから黒い疾風が迫るのを感じた。
木に飛びつく、後ろから風切り音――
鈍い衝撃とともにお尻に激痛が走るが、押し殺す。
20メートル登った後で見るとダガー状の黒い骨が刺さっていた。すぐに抜く。
ミスリルショートソード取り出し、スケルトンを探す。
スケルトンは器用とは言い難い、歪な動きで登ってきていた。
男が弱いと判断したからなのか、姿がバレて開き直ったのか、もはや隠れる素振りはなく、アサシンというよりはターミネイトするやつだ。
「落ちろ、《エナジーボルト》!」
直撃し衝撃で落下した。
しかし何事もなかったかのように起き上がり再び登ってくる。
――早く、早く。
リキャストタイムが途方もなく長く感じる。
奈落のグールにぶつけるために拾っておいた直径40センチほどの大きな石を出して投下した。
スケルトンアサシンに直撃し、落下する。
すぐに黒い骨は起き上がった。
焦りで思考が白く染まりつつも、今まで培ったゲームの経験で直感的に行動を修正する。
スケルトンアサシンが登ってくるのを待つ、枝に手をかけた瞬間、
剣で思いっきり振り払う。
――ガキィン、まるで鋼鉄を叩いたような衝撃が返ってきた。
《エナジーボルト》
ガシャガシャンッとスケルトンアサシンが地面に落ちた。
手はじーんと痺れている。
起き上がってすぐに登ってきた。
投石を交えつつ引きつけてから攻撃し打撃と落下ダメージも狙う。
ここが正念場。
城壁を登らせまいする攻城戦が30分続く。
何十度目かのスケルトンアサシンの落下時。地面に当たった瞬間、スケルトンアサシンが砕け散る。
「ぜえ……ぜえ、よっしゃあ!」
肩で息をしながらもガッツポーズが出た。
剣はすぐに刃こぼれでボロボロ。同じく身体もズタボロである。
10分ほど掛けて息を整える。
ステータスを確認。
【レベル:12】
HP:57/128
MP:13/118
力:19
体力:10(new!+1)
敏捷:23
魔力:25
精神:20(new!+1)
運:30
『スキルを2つ獲得できます』
――2レベルアップしている。ついに体力と精神が上がった!
スキルは……おお。
なんと今までの候補はそのままで、新たな上位スキルが追加されていた。
このような〈ニンジャ〉の固有スキルがあった。
【火遁】UC+。一定時間、攻撃に火属性を加える。
【水遁】UC+。一定時間、攻撃に水属性を加える。
【木遁】UC+。一定時間、攻撃に木属性を加える。
使えそうなレアスキルをピックアップしてみる。
ピックアップした一般スキル
【即死耐性(中)アップ】R。
【ダメージ軽減:50】SSR.あと3回。
ピックアップしたニンジャ固有スキル
【サイレントムーヴ】R。無音で動ける。
【分身】SSR。幻影シリーズ。数秒間、分身を作る。幻影シリーズは同時発動できない。
【装飾】R+。幻影シリーズ。肌や外装を装飾できる幻術。幻影シリーズは同時発動できない。
【偽装】R。幻影シリーズ。ステータスに偽りの情報を貼り付ける。幻影シリーズは同時発動できない。
【五感強化】R。
【無味無臭】R+。気配遮断でカバーしきれない臭いや存在感も断てる。
【開眼】SR。永続的に経験値獲得量を3倍にする、このスキルはステータス欄には表示されない。
【瞑想】SR。永続的に精神が4上がる、このスキルはステータス欄には表示されない。
【スキルキャンセラー】SR。対象のパッシブ以外のスキルを一つ打ち消す。
【鎧通し】SR。防御不問でダメージの2%が貫通する。
【覚醒】SR+。永続的に全ステータスが1上がる、このスキルはステータス欄には表示されない。
【仁王】SR+。永続的に力+3、敏捷+3、このスキルはステータス欄には表示されない。
驚くべきことにベースステータスを直接上げるスキルがいくつかあった。
幻影シリーズが気になるがアンデッド相手に通用するか分からない。吟味した結果、効率を考えて『開眼』と、HPに影響するかもしれないので先に体力が上がる【覚醒】を獲得した。
ステータスを確認する。
力:20(new!+1)
体力:11(new!+1)
敏捷:24(new!+1)
魔力:26(new!+1)
精神:21(new!+1)
運:31(new!+1)
思わず笑みが溢れる。ゲームではなくリアルだから喜びもひとしおだ。
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