森の賢者
「よし、こんな感じでいいだろう」
フレアは岩壁に剣を使って直径2メートルほどの円形の魔法陣を書き上げた
「うわ、こんな複雑な魔法陣見たことないよ私」
「わ、私もだ・・・」
2人は目の前に描かれたかなり複雑な模様に目を見張る
魔法陣は元々、難しい魔法を確実に行うために書くいわば計算の途中式のようなものだ
その魔法で行うことが困難であればあるほど魔法陣も複雑になっていく
「これは
行く場所細かく設定してたら、魔法陣こんなんになっちった」
飄々と言ってのけるが、その難易度の高さはナノとアリアの反応から見て取れるようにかなり高いのだ
「よし、じゃあ行きますかね
[
フレアが書いた魔法陣に向けて手をかざし、呪文を詠唱した瞬間、魔法陣は光り輝く円となった
「心当たりのやつがいるとこまでのゲートを作った
先に行くぜ」
そう言うとフレアはすっとその円の中に入ってしまった
「・・・どうする?アリア」
「行くしかあるまいよ
彼は私たちを助けてくれたし、その強さも示した
恐らく、本当に敵ではないのだろうが・・・
アンデッドだしな、本当に千年前の勇者なのかは疑問が残る
我々も急ごう」
アリアはせかせかと魔法陣の中へ消えた
「あ、待ってよ!」
ナノも後を追うように走り出した
「痛っ!!?」
突如として臀部を激痛が襲う
激しく尻餅をついたのだ
しかもそこには運悪く地面から露出した木の根が生えており、そこに強打したらしい
「大丈夫か?ナノ」
顔を上げると、アリアが手を差し伸べていた
「いたた・・・なんでこんなことに?」
上を向くとその答えはすぐにわかった
壁に書いた円に飛び込んだはずが、出口は空中に浮いていて、地面に向かって落とされる形になっていたのだ
「騎士団様なのに、意外とトロいなぁ」
アリアの後ろでフレアがニヤニヤしながら腕組みをして立っていた
「悪かったわね!」
ばっと立ち上がり辺りを見渡す
「また、森?」
そう、そこは森だった
しかし、先ほどまでの鬱蒼とした森とは違い清潔感のようなものを感じる
木々の隙間から入る日差しが辺りを照らし、木々は一本一本が大きく育ち、川の落ち着いたせせらぎが聞こえる
「ここはな人が近寄ることはほとんどない未開の地
昔、冒険してる時に寄ったんだ
魔王を倒すためのアドバイスをもらうためにな」
フレアはナノ達に背を向けテクテクと歩き出す
2人はその後を追う
「アドバイスを?こんな場所で?
どういうことだ」
「彼に聞いたんだ」
フレアは、ひときわ巨大な木の前に立った
「この木すごい大きいね
樹齢なん年くらいなんだろ?」
「さあな、でも俺なんかよりははるかに長いこと生きてるこの森の主だ
森の賢者と呼ばれている」
そう言うと木の幹をコンコンとノックし始めた
「賢者だと?
これは木だぞ?木が我々に語りかけると言うのか?」
フレアはアリアの方を振りまき、ニヤッと笑った
「あぁ、そうさ」
木はバサバサと葉を揺らしながらひとりでに動き出した
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