蘇生
「大丈夫か、あんた?」
男は何事もないかのように尋ねる
「ひっ!?」
「そんな怖がんなよ凹むだろ?
なにもしねえよ」
男は近くまで寄って来て、地面に座り込む少女の顔を覗き込んだ
男は長い黒髪で、顔を半分以上隠してしまっているが、時折見えるその顔立ちはとても整ったものだった
「俺は、フレア
フレア=アイテール」
「フレア・・・!
その名前ってまさか!?」
「あぁ、きったねえなあ
俺の剣が血まみれになっちまったよおい
あんた名前は?」
フレアは顔がほぼ無くなってしまったオークの肩から美しい剣を引き抜き、腰に差していた鞘におさめた
「わ、私はナノ=アシュタルト
助けてくれて、ありがとう」
ナノはその場で立ち上がり、頭を下げる
美しい背中の真ん中ほどまで伸びた金髪が揺れる
ナノは、まさに美少女という言葉がふさわしい整った顔立ちとスタイルをしていた
「ナノちゃんね、はいはい
んで、こんな可愛らしい少女がこんな場所で何をしてるんだ?
こんな・・・森で・・・」
フレアは辺りをぐるぐると見渡した
「森だな、なんで森だ?
ここには城の跡地があったはずだぞ」
「それってもしかして、千年前にあったっていう魔王の城?」
「なに!?千年前!?
そんなに時間が経ってんのかっ!
うわーびっくりー」
フレアは頭をかき、ため息をつく
「もしかして、あなたって勇者様?
千年前に魔王と戦ったっていう」
「ん?なに?俺のこと知ってんの?
千年経ってんのに?」
「ええ、あなたの話は長く語り継がれる伝説よ
私も、何度も子供の時から聞いて来たわ
自らの命を燃やし、太陽のように輝いた勇者は、その光によって魔王を焼き尽くし、その余りある光で世界を覆う混沌の闇を晴らしたと
そう聞いているわ」
「んー、まぁそんな感じかな
まさか、こんなことになるとは思ってなかったけどな」
んーっと伸びをする
鍛え込まれた筋肉が動くのがわかる
その美しい立ち姿にナノはつい見とれてしまう
「あ、あの!」
「あなたはなぜここに?
千年前の偉人がアンデッドのようになって復活したのはどうして?」
「なんでアンデッドになったのか、それは俺にもよくわからん
気づいたらなっていたんだ
蘇生したのはこれのおかげかな、たぶん」
フレアはすっとナノの短剣を取り出した
「それ、私の短剣!」
「電気を帯びたこの短剣が埋まってた俺に刺さった状態で、バリバリ漏電するもんだからさ
たまらず起きちまったよ」
「私の剣が・・・?」
思わず苦笑いをしてしまう
悪いことをしたような、してないような複雑な気分になる
「あ、俺からもっかいさっきの質問だ
あんたはここで何をしてたんだ?」
ナノは少し、顔を伏せて考える
そして意を決したように、青い瞳をフレアに向けた
「調査をしていたの
千年前あなたが殺した魔王が復活したのかもしれないという疑いが今上がっているの」
「・・・あらら」
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