変色

 降り頻る雨の、

 ポタポタと連続的に耳を打つメロディーはまるで潮騒のようで、

 私は薄れゆく現実感に身を任せながら、

 窓際に頬杖をつき、

 終日ハーバリウムの紫陽花を眺めている。


 既に時間の感覚は潰え、

 部屋はずっと薄暗いまま、

 日が暮れることもない。

 

 つけっぱなしのアイポッドは、

 歌詞の聞こえない歌を延々とループさせている。


 太陽が昇る速度と、

 記憶が色褪せてゆく速度は、

 等しいと気付いたあの日、

 私は永遠性の檻に閉じ込められた。


 この先に道が無いわけでもないのに、

 変わろうとする人を、

 街を、

 引き留めているのはいつも私の方だ。


 それでも、

 今だけは許してほしいと、

 祈るように、

 イヤホンのコードを握っている。

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