第4日 些細な事

 人が喜ぶことの種類には枚挙に暇がない。彼氏彼女からの突然に渡されたプレゼントであったり、元旦に親戚からもらえるお年玉であったり、はたまた、雨上がりに虹を見ることができた、ということで喜べる人がいる。大事で喜べる人は大多数おり、恐らくその瞬間人間として一種悟りを開いたがごとく、優しくなる。心が寛大になるのだ。日常で滅多に起きることではない嬉しいことで喜ばない人は、ポーカーフェイスも含めて恐らく存在しないのではないだろうか。実に平和的なことだと私は思う。負の感情をまき散らさなければこの世はいつまでも平和のはずだ。

 大事で喜べる人の中には極稀に些細な事でも喜べる人がいる。目覚ましが鳴る前に起きることができた、だったり、iPod内の曲をシャッフルで聴いていた時、一曲目が一番聴きたかった曲だった、とか、果てには、今日の自分の文字は調子がいい、ということで喜べる人がいる。これらのように一見何でもないことを素直に喜ぶことができるというのはとても素敵なことだ。私は宗教を信仰しているというわけではないが、人間が知恵を得たという代償に好きなものだけを見ていくという純粋さが失われてしまったことに対してはつくづく皮肉なものだと思う。好きなものだけを見て、それだけで気分を晴れやかにできる人間はこのご時世完全な絶滅危惧種だ。好きなものを好きと言わない人間に共通の好きなものを持つ人間は寄ってこないし、嫌いなものを嫌いと言い続けなければ、嫌いなものはいつまでもその人の周りを右往左往する。純粋さで些細な事でも負を感じさせない。知恵を得た人間より余程に豊かであると私は思う。

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