ダメ姉は、もしもを想像する(中編)
「「―――もしもの話をしていた?」」
「うん」
「……その通り」
途中乱入してきた妹兼恋人&大親友の二人に、とりあえず状況説明する私とヒメっち。
「……暇だったから『もしもマコとコマが姉妹じゃなかったら』とか適当に設定して、マコと二人で想像してた」
「ああ、なるほど。そこからさっきのマコの『コマが妹じゃないなら、カナカナと付き合ってたかも』って話に繋がるわけか。……ふむふむ、へぇ……それ、結構面白そうね!」
「…………いえ、どこがですか?私と姉さまが姉妹じゃなかったらとか……全然面白く無いんですけど……?姉さま、ヒメさま……?何故にそのようなおぞましい想像していたんですか……?そんな想像して何が楽しいんですか……?」
私たちの説明に、カナカナは興味深そうな顔をして―――そしてコマは絶望顔になりながら私とヒメっちを責めるような目でジトっと見つつそう問いかける。
……いや、うん。お姉ちゃんもコマと同じ気持ちだから安心して欲しい。姉妹じゃない私たちとかあんまし想像したくないよね……
「……まあまあ。これはあくまでゲームみたいなものだから気軽に想像すれば良い」
「嫌ですよヒメさま……何が悲しくてそんな死にたくなるような想像をしなきゃならないんですか……」
「……別に嫌な想像を無理にしなくて良いよ。例えば―――マコも想像してたけど『もしもマコとコマが姉妹逆転していたら』って設定で、試しにコマも想像してみたら?」
「…………え。私と姉さまが、姉妹逆転……?それってつまり……姉さまが、私の妹……?」
~コマ
「コマおねーちゃん!」
私、立花コマには妹がいます。それはもう、目に入れても痛くない程可愛い双子の妹が。
「きゃっ!?も、もう……また急に抱きついたりして。どうかしたのマコ?」
「んーん、なんでもなーい♪ただお姉ちゃんとくっつきたかっただけー」
「…………ぐっ」
そう言って無邪気に笑いながら私にギュっと抱きついてくる最愛の妹。何なのですか?私の妹ったら『かわいい』の権化なのですか?ああ、マズい……気を抜くと手を出しちゃいそう……
幼少の頃より、私とマコはずっと仲良しな双子です。双子の姉妹ゆえに距離感が近く……マコはこうやって昔から私にベッタリ甘えてくれます。…………私の気も知らないで。一人の女として、マコの事を愛しているという事を知らないで。
「……?お姉ちゃん、なんか顔赤くない?大丈夫?」
「……だ、大丈夫よマコ……気にしないで」
昔はギリギリ耐えられましたが……ここ最近になって(色んな意味で)急成長している妹に抱きつかれるのは……天国であり地獄です。
むっちりとした体つき、ぷにぷにお肌、高い体温―――まだまだ成長期だというのにすでに凶悪な武器を持ち。そしてその武器を無自覚に使って私にスキンシップを図ってくるマコを前に、毎日私の中で理性と本能がバトルを繰り広げています。
「あ、そーだ。コマお姉ちゃん。お姉ちゃんに頼みたい事があるんだけど……今良いかな?」
「え?頼みたい事……?も、勿論良いわ!カワイイ妹の頼みなら、何だって聞いちゃうから!」
「やった♪お姉ちゃん大好き!」
自分の中の本能を何とか抑え込み、頼れるお姉ちゃんモードでマコの頼みを聞く私。
「それで?マコの頼みって一体何なのかしら?」
「えーっとね。ちょっと待ってねー……よいしょっと」
「…………ぇ」
そんな私にマコはというと―――何故か服を脱ぎながらこんな事を頼んできました。
「なんかねー。最近また胸が大きくなったっぽいんだ。そのせいで服のサイズが合わなくなってきて困ってるの。だから……お姉ちゃんに服を作り直して貰いたいなーって思って」
「~~~~~ッッ!!」
そう言ってメジャーを私に渡しながら……無防備に裸になって私に上目遣いでお願いをするマコ。
…………その瞬間。私の中の本能が。いえ、煩悩が理性に勝ってしまい……
「…………わかったわ。とりあえずマコ。私の部屋にいらっしゃい。……身体の隅々まで測定してあげるから……」
「やった♪お姉ちゃん大好きっ!」
私は静かに流れ出る鼻血を隠しながら、最愛の妹の手を引いて自分の部屋へと連れ込み―――そして。
~コマ
「ふ、ふふ……ふふふふふ……」
「こ、コマ……?ねぇ、大丈夫……?」
「……コマ。鼻血凄いよ鼻血。ホイ、ティッシュあげるから止血しなー」
一体何を想像したのだろうか。つい数分前まで嫌な顔をしていたコマは……頬を上気させうっとりした表情を見せる。鼻からはツーっと鼻血が一筋流れ出てきて……
「……マコ姉さま」
「ふぇ?なぁにコマ?」
「……姉さま……私の事……今度から『お姉ちゃん』って呼んでも良いですよ……?」
「ねえコマ、なんか発言が矛盾してないかい?」
その場合、私とコマのどっちが妹でどっちがお姉ちゃんなんだろうか……
「ふむ……マコが妹、ねぇ……」
「……おぉ?もしやカナーも『もしもマコが妹だったら』って想像してみるの?」
「いいえ。コマちゃんの二番煎じは個人的に嫌だからパス。その代わり別の想像しようかなって思ってるわ」
と、コマの様子を面白そうに眺めていたカナカナがそんな事を言い出した。
「別の想像?一体何を想像する気なのカナカナ?」
「そうね。わたしは―――『もしもマコがわたしの後輩だったら』って想像してみようかしら」
「「……後輩だったら?」」
~カナカナ
「―――かなえ先輩っ!お疲れ様でーすっ!」
「ああ、マコ。いらっしゃい」
放課後。一人帰宅する準備をしていると……人懐っこい可愛い女の子が突然私の前に現れた。この子の名前は立花マコ―――私の後輩で、そして私の……一番大切な人だ。
「先輩、今から帰るんですか?だったら一緒に帰りませんか?」
「ん?マコと?……そうねぇ。一緒に帰るのは構わないけど……今日は奢らないわよ。期待してたのなら残念だったわね」
冗談交じりにそう言うと、マコはぷくーっと頬を膨らませてから反論する。
「ち、違いますーぅ!奢って貰う為にわざわざ先輩に会いには来ませんー!……もう、先輩は私を何だと思っているんですか!」
「あらごめんなさい。じゃあマコは……どうしてわざわざ私に会いに来たのかしら?」
「……ッ!」
わたしがそんな意地の悪い質問をマコにすると、マコは顔を赤らめてごにょごにょと何やら呟き出した。
「…………先輩の、イジワル。分かってて言ってますよね?」
「ハテ?何の事やらさっぱりよ。鈍い先輩でごめんなさいね」
「嘘だ!その先輩のにやけ顔は、絶対分かってるって顔だ!」
その通り。分かっているわよマコの気持ち。でも……
「わたしと一緒に帰りたい理由、マコの口から是非とも聞かせて欲しいなぁ」
「…………ぐぅ」
こういうことは好きな人に言わせたいものだもの。わたしが期待を込めた目で見つめると……マコは観念した様子でポツリとわたしが求めていた答えを口に出してくれる。
「……そんなの…………大好きな、先輩と……一秒でも一緒に居たいからに決まっているじゃないですか……」
「…………マコ」
「も、もう!何恥ずかしい事言わせるんですか先輩!もう満足したでしょ!?ホラ!さっさと帰りますよ!」
気恥しさを隠すように。わたしの腕に自分の腕を絡ませてそのままわたしを連れて行くマコ。……腕組みするとその豊満な胸が当たって……そこからとても熱くて強い胸の鼓動を感じ取れる。
……ああ、ホントにこの子は。マコは……
「ねえ、マコ」
「……なんですか。また恥ずかしい事言わせる気ですか?」
「んーん、そうじゃなくてね。…………ありがとう。わたしを好きになってくれて。わたしもマコが好きよ。大好きよ」
「んな……っ!?」
イジワルをしたお詫びってわけじゃないけれど。好意をストレートに示された分、わたしもお返しにマコへの好きって気持ちを言葉に出す。
「は、恥ずかしい事言わせるのも!言うのも禁止です先輩!心臓に悪いじゃないですか!?」
「えー、良いじゃないのこれくらい。わたしたち付き合っているんだしさ」
「限度在りますよ!限度が!……あー、もう!やっぱ前言撤回!私に恥ずかしい思いさせた罰です!今日も奢って貰いますからね先輩!」
またもやぷくーっと頬を膨らませながら、それでも腕組みは決して解こうとしないマコ。……そんな愛おしい後輩に連れられて、わたしは先ほど以上ににやけ顔を抑えられないまま校舎を後にした。
~カナカナ
「あはっ……あはは……アハハハハハ!」
「か、カナカナ?大丈夫?ど、どうしたの急に……?」
「……カナー。よだれ出てるよよだれ。ホイ、タオルで拭きなー」
『もしも私がカナカナの後輩だったら』―――そんな想像をすると言い出してから数分程黙りこくっていたカナカナ。
しばらくすると突然笑い出し……何ともだらしない表情―――もとい恍惚な表情を浮かべ、そして口からタラリとよだれが流れ出る。
「……ねえマコ」
「う、うん?なにかな?」
「今度からわたしの事……『かなえ先輩』って呼んでみない?」
「何故に……?」
カナカナといい、コマといい。二人とも……一体どんな想像をしたんだろうか……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます