第88.5話 ダメ姉は、モミモミされる

 お昼休みにコマと口づけしているところを見られてしまい、親友のカナカナにその説明を求められた私。『あれは私の悪癖を治す為の罰ゲームだった』と説明したところ……どういうわけか、『その罰ゲーム、わたしも手伝うわ』とカナカナが言い出したではないか。


「―――わかったわ。一人二人はともかく、この人数を同時に相手しながらマコを守り切るのはわたしでも無理そうだし……罰ゲームとしてのキスは、今回は止めておきましょうか」

「そ、そうだね。今日はあの連中を少しでも刺激するのは良くないもんね……」

『『『タチバナ、コロス……ムゴタラシク、コロス……!』』』


 ……まあ、とはいえ今は視界に入る生徒の9割以上が私の命を本気で狙う暴徒と化しているという異常な事態。そんな中もしもカナカナまでもが皆の目の前で私にキスしようものなら……ちょっとの刺激で爆発しちゃうニトログリセリンのように私の周りの連中は爆発して怒り狂い、カナカナごと私を亡き者にしようと問答無用で襲ってくることになるだろう。

 てなわけで。私の生命は勿論の事、カナカナの身の安全の為にも『失言したら口づけする』という例の罰ゲームはカナカナにはちょっと遠慮してもらう事に。


「んー……でも困ったわね。キス以外でマコに効果的に罰を与える方法って、他にあるのかしら……?マコは何か良い案はない?」

「そうだねぇ。何が良いだろうね罰ゲーム…………ん?」

「え?」


 キス以外で、罰……?罰ゲーム……?


「何よマコ?そんな鳩が豆鉄砲を食ったようなかわいい顔しちゃって。わたし、何かおかしな事でも言ったかしら?」

「い、いやあのカナカナさん?これ、罰ゲーム自体はする流れなの……?」

「……え?マコは罰ゲームやらないの?」


 心底不思議そうに首を傾げる私の親友。え、ええっと……私はてっきり、この罰ゲームの話はここでお終いと思っていたんだけど……?


「わたし的にはやった方が良いと思うんだけど罰ゲーム。さっきも言ったけどマコがいつどんな時でもNGワードを言わないように心がける為には、やっぱり監視の目は多ければ多いほどいいと思うのよ。コマちゃんがマコの傍に居る時はコマちゃんが罰を与えてくれるだろうけど……コマちゃんの目が届かない場所―――例えばこのクラスに居る時にマコが余計な事を言ってしまっても、注意する人間が居ないならあんたはいつまで経っても悪いところを治せないでしょう?」

「ま、まあそれはそうかも……」

「だからこそ、わたしもマコの監視役になってあげるって言ってんのよ。コマちゃんが居ない時の代理として、マコが余計な発言をしないように常にマコの傍でマコをチェックしてあげる。そしてマコが自己卑下しちゃう発言をした場合に備えて……わたし用の罰ゲームとか設定すべきよ。罰ゲームがあるならマコだって気が引き締まるじゃない?」

「ぅ、うーん……」


 そうやってまるでちっちゃな子供に諭すように説明するカナカナ。私も夏休みからずっと自分の悪癖を治さねばと常々思っていたから……カナカナが罰ゲームを手伝ってくれるのはありがたいっちゃありがたいんだけど……


「でもさ……正直そこまでカナカナに迷惑はかけられないというか……あ、いや……今回だけじゃなくて私いつもカナカナに迷惑かけまくってるけど……だからこそこれ以上は迷惑かけたくないというかだね……」

「……ハァ?迷惑ですって……?」

「う、うん。だって罰ゲームに付き合うって事はさ、ある程度私のすぐ近くに居て……んでもって私の話を注意深く聞いとかなきゃいけないじゃないの。……貴重なカナカナの時間を私なんかの為に使って貰うのは申し訳ないし……いくら友達だからって流石にそこまでして貰うのは―――」

「…………やれやれ。ほんっと、バカよねマコは」

「あいたぁ!?」


 と、カナカナに気を遣って遠慮しようとした私なんだけれど。そのカナカナから呆れた顔でデコピンをお見舞いされる。いたい。何すんのさカナカナ……


「少しは察しなさいなおバカさん。、罰ゲームに付き合いたい理由の半分はただの口実だってのに……あんた全く鈍いにも程あるわよ」

「口実……?え、えと……一体何の口実なのさカナカナ……?」

「……もー、まだわからないのねマコは。罰ゲームとしてマコを監視するって口実があればさ―――四六時中マコの傍に居られるでしょう?」

「…………っ」

「迷惑なんてとんでもないわ。世界で一番好きなあんたの傍に居る事が、わたしにとって一番幸せな事だもの。寧ろその罰ゲームに参加させて欲しいって、わたしの方からお願いしたいくらいよ」


 熱っぽい視線で私を見つめながらそんな事を言ってくれるカナカナ。……ここでようやく私も察する事が出来た。あ、ああなるほど……そういう事ね……


「……それにねマコ。わたしもコマちゃんと一緒でさ、マコの異常なまでの自己評価の低さは前々からムカついていたのよ。マコ自身が『治したい』って思っているなら願ったり叶ったり。わたしも親友として、そしてマコに惚れている身としては全力でマコに協力したいって思っている」

「カナカナ……」

「だから……お願いよマコ。その罰ゲーム、わたしも協力させてちょうだい」


 そう言ってカナカナは、私の前まで歩みを進めそして私の手をキュッと握る。

 ……ぁう……い、今のは少し効いたかも……ちょっぴりドキッとしちゃったじゃないか……


「え、えっと……そ、そう……だね。そ、そこまで言われたら……うん。カナカナさえ良ければ……罰ゲームに付き合って貰おう……かなー……なんて……」

「ええ、勿論良いわよ。……ありがとねマコ。わたしの我が儘に付き合って貰っちゃって」

「い、いやいやいや!?お礼を言うのは私の方だからね!?」


 ここまで言われちゃ断れない。そんなわけでカナカナの熱意に負けた私は、カナカナにコマが見ていない場所での私の監視役になって貰う事となった。


「さて。ちょっと脱線したけど話を元に戻しましょうか。キス以外で出来るマコに相応しいわたし用の罰ゲームをどんなものにすべきかって話だったわよね?」

「そうだったね。……ちなみにさ、カナカナはどんな罰ゲームが私にとって一番良いと思うかな?」

「ん?マコにとって一番良い罰は何かって?…………そうね。やっぱ罰なんだし出来ればコマちゃんがマコに設定しているみたいな『皆の前でキスをする』ことに匹敵するような恥ずかしい罰とか、『もう次からは絶対にやらない!』って猛省しちゃう辛くて厳しい罰とかが良いと思うわ」

「恥ずかしい罰とか辛くて厳しい罰……か」


 カナカナに言われて考えてみる。ふむふむなるほど。それなら―――


「なら皆の前でコマへの愛を語る、とかはどうかなカナカナ?」

「却下よマコ。あんたの場合、それは毎日欠かさず嬉々として自発的にやってる事じゃないの。罰ゲームにならないわよ」

「じゃあ地獄のグラウンド100周マラソンとかは?」

「それも却下。あんたよく先生に教室で暴れた罰として走らされてるでしょうが。こっちも罰ゲームとしてはイマイチだわ」

「う、うーん……なら校内放送使って10曲歌いきるまでカラオケの刑とか……」

「悪くは無いけど下手したら停学・退学コースもあるからダメ。…………あ、それはそうと今度またカラオケ行きましょ♡一緒にデュエットするわよマコ」

「あ、うん。機会があったら是非とも行きたいね。…………って、そうじゃなくて。え、ええっと他に私に効きそうな罰といえば…………一週間くらいコマ断ちしてみる―――」

「そんな罰ゲームを設定してしまった場合、あんた3日以内に死ぬから断固反対。守れるわけがない罰ゲームを設定しても無駄じゃないの」


 あれやこれやと提案する私だけど、悉くカナカナから却下されてしまう。ぬぅ……意外とさじ加減難しいぞこれ……


「てかさ。これカナカナが私に対して行う罰ゲームだよね?だったらカナカナが罰を決めて良いんじゃないの?」

「え?わたし?……いいの?わたしがマコの罰の内容を決めちゃっても」

「うん、勿論。とりあえずちょっと試しに言ってみてよ」

「……ふむ。そうねぇ……」


 私にそう促されたカナカナは、腕を組んでブツブツ呟きながら考え始める。


「……出来ればキスみたいな恥ずかしいやつ……それでいてなるべく皆を怒らせないような罰…………罰ゲーム…………あっ、そうだ。良い事考えた」


 考えがまとまるまで待つこと数分。唐突にいいアイデアを思い付いた様子のカナカナ。


「ねぇマコ?これって罰ゲームなんだし、要はマコが恥ずかしい思いをすればいいって事よね?」

「え?あ、ああうん。そうなるね」

「ならわたしに良い考えがあるわ。……マコ。わたしもあんたに罰ゲームを設定してあげる。もしマコがわたしの前で自分を卑下するような言葉を発した場合は……」

「は、発した場合は……?」


 何だろう?一体どんな凄い罰ゲームを受ける事になるのだろうか。ドキマギしながら次の言葉を待つ私に、カナカナは少し恥ずかしそうにこんな事を言い出した。


「―――わたしが……マコの胸を揉ませて貰うから♪」


 …………は?


「……あの、ゴメンカナカナ。私急に耳がおかしくなったみたい。今キミは何と言ったのかね?」

「だからね。あんたが言っちゃいけない事を言った場合は……わたしがマコの胸を揉みしだくと言ったのよ」


 ……どうやら聞き間違いじゃなかったらしい。胸を揉む?揉みしだく……?わ、わからん。カナカナが何を考えているのか全然わからん……


「……ねぇ。その罰ゲームってさ、ちゃんと罰ゲームになるのかな?」

「なるわよ。あんたは恥ずかしい思いをする。そしてわたしは楽しい思いが出来る。……ね?罰ゲームになるでしょう?」


 言いたい事はわからんでもない。胸って揉むと大きくなるとよく聞くし、胸が大きいことがコンプレックスな私としては……これ以上大きくなって欲しくないからあんまり他の人から胸を揉まれたくない。それに何より皆の前で胸を揉まれるってかなり恥ずかしい行為だから、カナカナの言う通りそれは十分罰ゲームにはなると思う。

 …………思うんだけど、でも……


「…………で、でもさ。カナカナって……ホラ。随分前からその……私の胸を敵視してたよね……?い、いいの?そんな自分を苦しめるような罰ゲームを作っちゃって?」


 そう、問題はそこだ。いつもは私の胸を親の仇を見るように憎々し気に睨んでいたカナカナ。そんな罰ゲームを設定すれば……揉んでいるカナカナの方がダメージを受けるのではないだろうか……?い、良いのかそんな罰ゲームにしちゃって……?

 そんな私の問いかけに、カナカナは少し気恥しそうに頬を掻きつつこんな事を言い出す。


「……あー……いや、うん……まあ……確かに巨乳を見るとね、乳房もぎ取ってやりたくなるくらい腹が立つけどさ……」

「けど?」

「……昨日カミングアウトし忘れてたんだけどね。……マコの胸は……嫌いじゃ無かったりするのよね……わたし」

「ふーん。…………うん?」


 ……あれ?何かキミ、今凄い事言わなかったかい親友?


「実言うと……前からマコの胸を……さ、触ってみたり……揉んでみたいなー……なんて思ってたり……」

「…………は、はぁ……」

「だ、だってさ!なんたって好きな人の胸だし…………そ、それにほら!ひ、人は無いものに惹かれるって言うでしょう?だからその……あ、あはは……」


 ……親友の意外な一面を垣間見た気がする。変態ダメ姉な私が言うのもなんだけど、カナカナって実は結構ムッツリか……?


「…………あ、あの……マコ?もしかして引いた?」

「へ?あっ……ああいや違う!ひ、引いたわけじゃなくてだね。ちょっと意外だったからビックリしただけだからね……」

「そ、そうよね……ビックリするわよね……は、ははは……」

「…………」

「…………」


 私とカナカナの間に気まずい沈黙が流れる。カナカナからは『しまった、調子に乗って余計な事まで言わなきゃよかった』って後悔の念が容易に感じ取られるし、私も私でどう返答すべきか迷ってしまい言葉に詰まる。

 神様、こんな時私は親友に何とフォローすれば良いのでしょうか?


「え、えっと……ええっと…………その。か、カナカナ?」

「は、はいっ!ななな、なにかしらマコ……!?」

「あのさ……ホントに私の胸、揉みたいの……?」

「…………ごめんマコ、今のは無し。罰ゲームは別のやつを考えてあげるから、わたしの今言った事はお願いだから忘れてくれると嬉し―――」

「なら……ちょっと罰ゲームの練習を兼ねて、試しに私の胸を揉んでみる?」

「―――いいの!?」


 気まずい空気をほぐすように、咄嗟に冗談のつもりで『揉んでみる?』とカナカナに聞いてみた私。すると想像以上に乗り気な様子のカナカナは目を輝かせながら私に迫る。


「い、今マコ『揉んでみる?』って言ったわよね!?マコが良いって言ってくれるなら、遠慮なく揉ませて貰うわよ!?……まさか『実は今のは場を和ませるための冗談でーす♡』なんて言わないわよね!?」

「…………う、うん。お、女に二言はない……よ?」


 …………ヤバい、こちらが『冗談だった』と弁明する前に速攻で言質取られた……


「ね、念を押して聞くけど……本当に良いのねマコ!?も、揉むわよ!?揉ませて貰うわよ!?」

「う、うん……カナカナになら……い、良いよ……?」


 カナカナの勢いに気圧されてしまい、流されるように思わずOKしてしまう私。ま、まあ別に減るもんじゃないし女の子同士だし問題はない……よね?


「じゃ、じゃあ行くわよマコ……!覚悟は良いわね!?」

「うん……ど、どうぞ……?」


 何の覚悟が必要なのかよくわからないけれど、とりあえず震えるカナカナの手を自分の胸に導いてあげる私。


「……んっ」

「…………おぉ……!」


 カナカナの両手が私の胸に到達する。手のひらを押し当てただけなのに、カナカナが小さく感嘆の声をあげたのが私の耳に届いてきた。


「…………凄い……」

「へ?」

「…………すっごく柔らかいのね……マコの胸……」

「そ、そう?」

「…………うん。凄い……どう表現したらいいかわからないけど……とにかくすごいわ……すごい」


 ふにふにと少しずつ力を入れつつカナカナは私の胸を揉んでいく。どうやら感動しているご様子のカナカナは、感動し過ぎて語彙が消失してしまっているようだ。さっきから凄いとしか言ってないぞ親友よ……


「あの……っは…………か、カナカナ?随分と熱心に揉んでるみたいだけど……んくっ……そ、そんなに凄いものなの……?」

「(モミモミ)凄いわ……ホントすごい……マコの胸、こんなに柔らかいものなのね……それにわたしの手の平におさまらない……溢れてくる……ホントおっきいわよね……羨ましい……」

「……ぁ、ン…………お、大きくて良い事なんて……っぅ……あんましないよ……?」

「(モミモミモミ)小さくて良い事もそんなにないわよ…………あぁ……この感触、たまらないわね……」


 目をギラギラさせて一心不乱に私の胸を揉みまくるカナカナ。……マズいな。別に減るものじゃないし、何より仲の良い女の子同士だから問題ないと軽い気持ちでOKしちゃった私。だけれど……いざ揉まれると正直かなりくすぐったいし……おまけに…………カナカナの触り方が……ちょ、ちょっとやらしくて…………揉まれる度に変な声が漏れ出しているのが自分でもわかる。

 周りには私とカナカナの一連の行為を親の仇のような目で睨みつけている連中が大勢いる中で、そんな声をあげるのは滅茶苦茶恥ずかしい。……な、なるほどね。これは確かに罰ゲームとしては最適かもしれない……


「あ、あのさカナカナ……?こ、これちなみにいつまで揉むのかな……?」


 流石にこれ以上続くと良くない事が起きそうだと私の身体が警告を鳴らす。一旦呼吸を整えるためにも揉むのを中断して貰おうとカナカナにそう問いかけてみる私。


「(モミモミモミモミ)すごい…………すごい…………すごい―――」

「カナカナさん?私の話、聞こえてますかい?」


 けれど胸を揉むのに全神経を集中させているカナカナは、残念ながら止まらない。目の前の相手の声が届かなくなるくらい同級生の胸を揉むのに熱中する女子中学生ってどうなの……?


「(モミモミモミモミ)え?あ、ゴメン。ちょっと聞いてなかった。何か言ったかしらマコ?」

「うん、とりあえずその手は一度止めようか。……ちゃんと私の話を聞いてちょうだいな」


 胸を揉む手は休めずに聞き返すカナカナ。親しき中にも礼儀ありって言うんだしさ、人と会話する時くらいは人の胸を揉むのはやめて欲しいんですけど……!?


「だ、だからさ……これっていつまで揉む気なの……?」

「(モミモミモミモミ)いつまで……?あ、しまった……そういえば罰ゲームの時間設定をしてなかったわね」

「いや、だから一度手を止めてくれんかね……」

「(モミモミモミモミ)そうねぇ。どれくらいやりましょうか。……ちなみにマコはコマちゃんと『失言したらキス』する例の罰ゲームって、どれくらいの時間をかけてやってるの?」


 私の再三に渡る要求を華麗に無視しつつ胸を揉みながらそんな事を尋ねてくるカナカナ。むむむ?コマと罰ゲームする時に要する時間ですと……?

 え、ええっと……時間設定は特に決めてないし、いつもはコマが許してくれるまで口づけして貰っているんだけど……


「だ、大体10分くらい……かな?時間きっちりとは計ってないからよくわかんないけど、多分それくらいの時間だと思うよ」

「(ピタッ)…………ふーん。10分か。……毎回10分もマコとキスしてるのね、コマちゃんって…………(ボソッ)いいなぁ……」


 正直に答えると、あれだけ私の胸を揉みしだいていた手を止めてポツリと何か呟くカナカナ。あれ?急にどうしたのカナカナ?


「…………ま、いいや。それよりも時間設定だけど……折角だしわたしの罰ゲームもコマちゃんと同じように10分くらいを目安にしましょうか」

「じゅ……!?10分もやるのコレ!?」

「……あら?もしかして短かった?ならもうちょっと長めにしましょうね。わたしはもっと長い時間やっても全然オーケーだから安心しなさいマコ。マコの胸、いつまで揉んでも飽きないからね」

「逆、逆ゥ!?10分はいくら何でも長すぎだよ!?」


 流石に10分も揉まれ続けるのは色んな意味で耐えられそうにない。つーかまさか私の胸を揉むためだけに休み時間全部を使う気かのかいカナカナ!?


「何でよー?別にいいでしょ?減るもんじゃないんだし。それにそれくらいやらなきゃ罰ゲームにならないじゃないの」

「ぅぐ……そ、それは……そのぅ……」


 カナカナの一言に尻すぼみになる私。ついさっき私も『減るもんじゃないし良いか』と思ったばかりだし、それにちゃんとやらないと罰ゲームにならないと言われたら反論できない。


「そういうわけだから10分間―――つまりチャイムが鳴るまではいっぱい胸を揉ませて貰うわねマコ。第二ラウンド開始よ」

「ま、待ってカナカナ!?胸揉むより大事な事がある!つ、次の授業の準備!そろそろ次の授業の準備を始めよっか!休み時間は何よりも次の授業の準備をしなきゃね!ねっ!」

「そんなものどうでも良いわ。後でも出来るもの。それよりも何よりも、今はマコの胸を揉む方が大事でしょうが……!ほら、抵抗しないのマコ……!」

「いや、授業の準備の方が大事じゃないかな普通!?」


 優等生で模範生らしからぬカナカナの暴論。カナカナさん!?キミ、なんかキャラ代わってませんかね!?

 慌てて胸を隠すように自分の手でガードしようとした私だけれど、力強いカナカナは容易く私のガードを崩す。そして再びカナカナが私の胸を揉む体制に。


「さあマコ……気を楽にして。……大丈夫、絶対に痛いようにはしないから。…………寧ろ、マコが気持ちいいように頑張るからねわたし♡」

「頑張らなくていい!そんなところで頑張らなくて良いから!?」

「ほら、遠慮しないで。その手をどけなさいマコ……!」

「だ、ダメだってカナカナ……!や、やめ―――」

『(カーンッ!)立花の奴、また叶井さんとイチャつきやがって……腹が立つ……!』

『(カーンッ!)あ、アタシだって……アタシだって先輩に胸を揉んでもらいたいのに……!』

『(カーンッ!)なぁ立花さんよォ……罰ゲームとして俺にもその胸揉ませてくれませんかねェ?…………テメェのその心臓ごと胸を揉みちぎってやるからよォ……!』


 私とカナカナの周りでは、呪いの藁人形に五寸釘を打ち付けて私を呪おうとするカナカナファンたち。そのカーンッ!と高らかに鳴る音が、第二ラウンド開始のゴングとなった。


「(モミモミモミモミ)ああ……ホント柔らかい……一日中揉んでも多分飽きないだろうなぁ……マコの胸……」

「ッ、……ゃ、ぁん―――~~~~~!!???」


 抵抗虚しくカナカナに情け容赦なく胸を揉みしだかれる。

 ……結局チャイムが鳴るまでの10分間、恥ずかしい声を出さぬように自分の手で口を押えて声を我慢する事しか出来なかった私であった……

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