第2話 「チームワーク」

自己紹介の後、俺達は武器庫に連れてこられた。 周りには片手剣、両手剣、刀、弓矢、銃、斧、大鎌など、様々な武器が置いてある。


「早速だが、お前達に武器を与える。 何か希望はあるか?」


来た。 俺が封鬼兵になった理由の一つ、武器だ。

封鬼兵に与えられる武器は特殊で、バケガミにダメージを与えられるのだ。


そして、俺は既に貰う武器を決めている。


「刀が欲しい」


「うわ! コウ決めるのはえぇよ! …俺どうしよう…」


「私は大鎌を下さい」


「有栖も決まったのか!? えーと…えーと…」


天野が頭を抱えている中、もう1人のベテランのジュリエルが刀と大鎌を持って来た。


「はい、どうぞ」


「あぁ」


「ありがとうございます」


刀を受け取り、早速鞘から抜いてみる。

俺の刀は、鍔と鞘は真っ黒で、刀身は逆に真っ白だった。

切れ味もよさそうだ。


「…大きさの割に軽いんですね」


隣で日向が呟く。 確かに、日向の大鎌はかなりデカイ。 日向の身長よりもデカイ、だがその大鎌を軽々と持ち上げているところを見ると、やはり軽いのだろう。

大鎌の色は、真っ黒で、白の線が一本入っている。


「んー……よし! 決めた! 斧にする!」


「斧ですね。 はい、どうぞ」


「ありがとうございます!」


天野は斧を受け取った。 斧は俺の刀と同じくらいの大きさだが、破壊力は凄そうだ。

色は、濃い青色だ。


「ふむ…全員近接武器か。 これはカノンの仕事が増えるな」


「ふふ…ですね」


「さて! 武器が決まったところで、早速お前らがどれくらい戦えるかを見る」


そう言って、柊とジュリエルの右手に黒い塵が集まり、片手剣と弓の形になる。


「すっげぇ!! 本当に塵が武器になった! 初めて見たー!」


横で天野が煩いくらい騒いでいるが、俺と日向は驚かない。

俺は実際に見た事があるしな。


それにしても…柊は片手剣で、ジュリエルは弓か。

柊の片手剣は赤黒い色で、ジュリエルの弓は、真っ白だ。


「場所を変えるぞ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


武器庫から移動し、第1訓練室と呼ばれる場所に来た。

部屋の中なのに広く、地面は砂で、所々に大きな岩が置かれている。


「ここで、実際に俺達と戦ってもらう。 二対三だな」


そう言って、柊はニヤリと笑う。


「二対三だと? ふざけんな、一体一でやろうぜ」


3人なんて冗談じゃない。 俺は1人のほうが戦いやすいんだ。


だが…


「ダメでーす。 三対二でーす。 俺は忙しいので、1人ずつ戦ってる時間はありませーん」


柊は馬鹿にするように言う。


「ちっ…」


俺は仕方なく刀を構える。 要はあいつらに俺の力を見せつければいいんだ。 天野と日向に構わず、1人でやればいいだけだ。


「んじゃ、始め〜」


気の抜けるような合図と共に、俺は走り出した。

後ろで天野が「おいっ!?」と言っているが、気にしない。


「ほー、意外と速いな」


「はあぁ!!」


助走をつけて刀を振り下ろすが、柊は片手剣で受け止める。


「カノン〜」


「はいはい、お任せください」


ジュリエルがそう言った瞬間、俺は横に飛ばされた。

視線の先では、ジュリエルが弓を構えていた。


…なるほど、柊が俺を抑えているすきに横から弓矢を射ったのか。


「…なら、邪魔な奴から消す!」


俺は柊を無視し、ジュリエルの元へ走る。

ジュリエルは、俺を見ても笑顔を崩さない。


まるで面白いものを見ているみたいな笑顔だ。


「はぁっ!」


「よっ…と」


俺の全力の切り上げを、ジュリエルは右に飛んで回避する。


そして、ジュリエルは飛んだ姿勢のまま弓矢を射つ。


「ぐっ…!」


至近距離で避けられるはずもなく、モロにくらって地面を転がる。


「…どうやら、凄いのは速さだけみたいですね」


ジュリエルの挑発するような言い方に、俺はカッとなり、連続で刀を振り回す。

だが、ジュリエルは冷静に全て回避する。


「敵はカノンだけじゃねぇぞ〜」


突然横から柊に蹴られ、また地面を転がる。


「…くそっ!!」


全然攻撃か当たらない。 悔しいが、こいつらがベテランなのは認めるしかない。


……だが、俺の力はまだこんなもんじゃないはずだ…”あの時”は、もっと速かった。

まだ、速くなれるはずだ。


足に力を入れ、地面を蹴る。


「…ほぉ…?」


一瞬で柊の近くに行き、右から斬りつける。 片手剣で防がれたが、今度は左足で柊の腹を蹴り、距離をとる。


「おーおー、蹴られちまったかー」


次は狙いをジュリエルに定め、走り出す。 ジュリエルは真面目な顔になり、矢を3本射ってくる。


…この距離なら、落とせる。


走りながら刀で矢を全て落とし、飛び上がる。


「くっ…! 月光鬼げっこうき!!」


ジュリエルが光を纏った矢を放ってくる。 俺はその矢を刀で落とそうとするが、全然落ちない。

落ちるどころか、逆に俺が負けそうだ。


「なんっ…だこれ…!!」


光を纏った矢に負けないように力を入れる。


「おおおぉぉおっ!!!」


両手で刀を持ち、全力で刀を振り下ろす。 光を纏った矢は、真っ直ぐ地面に落ち、大量の砂埃が舞う。


俺は居合斬りの構えで空中からジュリエルの元へ向かう。


「くらえぇっ!!」


もう少しでジュリエルに刀が当たるという距離で、刀とジュリエルの間に柊が入り、片手剣で防がれる。


「……火憐斬かれんざん


柊の片手剣が赤く光り、片手剣を振り抜くと、赤い斬撃が飛んできた。 俺はその斬撃により、上に飛ばされる。


そのまま地面に落ちる。 思ったよりダメージが凄く、すぐに立ち上がる事が出来ない。


「…おーい新人2人〜。 見てるだけで何もしねぇのか〜?」


柊がそう言ったので、天野と日向を見ると、2人とも目を見開いていた。


…この反応だけで分かる。 あの2人は弱い。 足手纏いにしかならないな。


「や、やってやるぜ! おらああ!」


天野が斧を振りかぶったまま柊に向かって走る。


…馬鹿かあいつは、そんなバレバレの動きが通用するか。

案の定、柊は簡単に天野の斧を受け止めた。


「おー、力はあるみたいだな」


「あったりまえだ! …今だぜ、日向さん!」


「ん…? うおっ!?」


天野の後ろから日向が大鎌の長さを生かして攻撃する。


柊は一瞬驚いたが、すぐに後ろに飛んで回避する。


「馬鹿ですかあなたは? 「今だぜ」なんて言ったら、バレてしまうでしょう?」


「あっ…そうだった…ごめん」


「まったく…では、行きますよ!」


天野と日向は同時に走り出し、交互に柊を攻撃する。


天野が斧で攻撃し、斧を片手剣で防いだら日向が大鎌で攻撃する。


こんな単純な攻撃だが、さっきから柊は防戦一方だ。

…そして…


「いてっ! あ、やべ…」


後ろに逃げていたため、柊はとうとう端の壁に激突する。

どうやら天野達はこれを狙っていたらしい。


右から天野が、左から日向が同時に斧と大鎌で攻撃する。


「左右が無理なら…上に逃げる!」


柊は思い切り上に飛び、2人の攻撃を回避する。


「カノン!」


「はい! 月光鬼!」


ジュリエルが光を纏った矢を射つ。 矢は物凄いスピードで2人に向かっていく。


「俺に任せてくれ日向さん! おらあああっ!!」


天野が前に出て斧を振り下ろす。 斧と矢が当たるが、天野はそのまま斧を振り下ろした。


矢は地面に落ち、また砂埃が舞った。


天野は笑顔で


「へへっ! 筋力には自信があるんだ!」


「ならこれはどうだ? 火憐斬!」


柊が赤い斬撃を飛ばす。


「私がやるわ」


次は日向が天野の前に出て、大鎌を構える。


「……こんな感じかしら」


日向が軽く大鎌を振り下ろすと…


「…は…?」


俺は、思わず声が出てしまった。


日向が大鎌を振り下ろすと、白い斬撃が飛んでいったのだ。


日向の白い斬撃と、柊の赤い斬撃が当たり、同時に消滅する。


「す…すげぇよ日向さん! 今のどうやったの!?」


「え? えぇと…こう…ギュッ、バッ、ドーンッ! って感じかしら…?」


「……え? なにそれ?」


「だから、ギュッ、バッ、ドーンッ! よ」


日向が身振り手振りで説明してるが、天野は首を傾げている。


それを見て、柊は大きな声で笑った。


「ははははははっ!! 面白いよお前ら! よーし、もう終わりだ!」


柊のその一言で、この戦闘は終わった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺達は、あの後封鬼兵専用の食堂に連れてこられた。


天野、俺、日向の順で座り、テーブルを挟んで柊とジュリエルが座っている。 武器は戦闘が終わったら自動で消滅してしまった。


「さて、早速、お前達にたいする感想を言うぞ〜。 まずカノンからだ」


「はい。 まずは、上手く戦えていた人は1位が有栖さんで、2位が天野さんです。 では、次に感想ですが」


「ちょっと待て」


俺がジュリエルを遮ると、ジュリエルは首を傾げた。


「コウさん、どうかしましたか?」


「俺が3位ってどういう事だ? 納得出来ない」


「え? コウさんが3位? 私、コウさんは3位なんて言いました?」


「は? 1位と2位が決まってるんだから、そうだろ」


俺がそう言うと、ジュリエルはフッと鼻で笑い。


「どうやら勘違いをしたみたいですね。 コウさん、あなたは圏外です。 正確には、評価に値しない。 ですかね」


「……なんだと?」


「一方的に仲間を見下し、協力しない弱い人なんて評価出来ないと言ったんです」


「…てめぇ!」


俺は思わず立ち上がり、ジュリエルの襟を掴む。 だがジュリエルは表情を崩さない。


「…俺が弱いだと…? この2人よりもか?」


「えぇ。 ぶっちゃけ、足手纏いにしかなりません」


「足手纏い…だと…?」


右手の拳を握り、ジュリエルを殴ろうとすると、右手を天野に掴まれた。


「女の子を殴るのはダメだろ」


「黙れ、この手を離せ」


「なら、まずはカノンさんを離せよ」


天野が俺の右手を掴む力を強めてきたので、仕方なくジュリエルから手を離す。


すると、天野も手を離す。


「では、続きですね。 感想です。 まずは天野さんから」


「はい!」


「まず、動きがバレバレです。 武器を振りかぶって走ってくるなんて、そんなの的と変わりません」


「うっ…」


「ですが、一撃は重いみたいですね。 あと、よく周りを見て動けていました。 有栖さんがちょっとミスしたらすぐにカバーに入れていました」


「へへへ…」


「次は有栖さんです」


「はい」


「有栖さんは、武器の扱いが上手いですね。 ちゃんと大鎌の間合いを把握し、大鎌に最適の間合いで戦えていました。 それと、いきなり鬼神技きじんぎを使えたのは驚きました」


「…なんとなく、出来る気がしたので」


「ですが、細かいミスが多い。 攻撃のタイミングがズレたり、咄嗟の事に対応が遅れたり。 勿体無いです」


「はい…気をつけます」


「私からは以上です」


……本当に俺には何もないみたいだな。 訳が分からない。 間違いなく新人の中で一番強いのは俺だ。 なのに何故評価されない…?


「んじゃ次は俺な。 …って言っても、言いたい事は全部カノンに言われたしな。 俺は足手纏い君にアドバイスしてやるかねぇ」


またイラっとするが、我慢する。


「格上と互角に戦う方法を教えてやる。 数で勝負すればいい。 相手が自分よりも人数が少ないなら尚更な」


「……」


「格上2人に1人で挑んでも勝てる訳がない。 格上2人に2人で挑んでも勝てる訳がない。 だが、3人なら? 相手よりも人数が多ければ、勝てる可能性があるんだ」


「……」


「俺とカノンは、数の強さを教えるためにコウに2人で挑んだ。 逆に、最初から2人で協力してきたタクヤ達には1人で挑んだ」


「…弱い奴と協力しても、勝てる訳がない」


そう言うと、柊はおでこを抑えて溜息をつく。


「はぁ…コウ。 この柊班に、弱い奴なんて1人もいない。 皆、同じ封鬼兵だ。 強い奴はいても、弱い奴なんていないんだよ」


「…意味が分からねぇよ。 弱ければ死ぬ。 それは封鬼兵も同じだろ」


「弱ければ死ぬ? それは違うな。 ”負ければ死ぬ”んだ。 仲間と協力すれば、負ける事はない。 いいか? バケガミと戦いたいなら、チームワークは必須だ」


チームワーク、協力、仲間。 俺も昔はそれが大事だと思っていた。

だが、皆死んだ。 昔俺は事あるごとにチームワークだの協力だの言ってきた。 だが、昔一緒に戦った友は皆死んだ。


5人いた仲間は、1人、また1人と減り、最後には俺だけが残った。 皆にチームワークが大事だと散々言ってきた俺が、生き残ってしまったんだ。


最後に死んだ仲間は、俺を庇って死んだ。

そいつは「仲間を守るのは…当たり前…でしょ…?」と言って死んだ。


俺は、今でもそいつの最後の言葉を思い出す。


だから、俺はもう仲間を作らない。 仲間が居なければ、失った時に悲しまなくてすむから。

もう、泣き喚いて自分を責めなくていいから。


「…はっ、くだらねぇ」


5年前から、1人でこの世界を生きてきた。 1人でバケガミと戦ってきた。

誰にも頼らずに、自分だけの力でだ。


「俺は封鬼兵になれればそれでいいんだ。 仲間なんていらねぇ。 お前らは4人で仲良くしてろよ」


くそっ…どうしてもこいつらと昔の仲間を重ねてしまう。


男が3人、女が2人。 全く同じだ。 ……嫌でも思い出しちまう。


「俺はもう行くからな」


そう言って、俺は封鬼兵に与えられる専用の個室へと向かった。


俺は気づかなかったが、後ろにいた柊班の4人は、悲しそうに俺を見ていた。

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