美味しいは正義! ~グルメ系作品流行の理由と今後の流行についての考察~

冬野氷空

グルメ系作品についての考察

 前回の異世界転生についての考察に続いて、今回はグルメ系作品についてつらつらと考えたことを記していこうと思う。




私はグルメ漫画が好きだ。

 食事は良い。美味しいものを食べれば心はいつでもハッピーだ。

 というわけで、今回はグルメ作品について取り上げようと思う。


 異世界転生ほどの勢いがあるわけではないが、近年になってまたグルメをテーマにした作品が増えていきているように感じる。そこで私はグルメ系作品流行の歴史と、今後どうなっていくのかを考察してみることにした。


 まず初めに、どうしてグルメ系作品が流行するのか、結論を述べよう。


 それは、社会が激動しているからである。


 社会が揺れ動くと、当然のことながら人々は不安を感じる。そういった人々が小説や漫画、あるいはドラマに何を求めるのかと言うと、それはズバリ「普遍的な価値」だ。


 人々は大昔から食事に娯楽を見出してきた。変わらない価値が、確かにそこには存在するのだ。


 ここでその裏付けとも言えようグルメ系作品(主に漫画)の流行の推移を見てこうと思う。


『包丁人味平』の誕生

 元祖グルメ漫画である。

 1973年から1977年まで週間少年ジャンプで連載されていた作品だ。

 高度経済成長を経て日本人にとって食事が娯楽になった時代、当然その食事を扱った作品がブームになるわけだ。

(ちなみに1971年に日本で初のマクドナルドが開店、日清のカップヌードルが発売されている)

 余談だが、当時の編集社はこの作品を“料理漫画”ではなく“職業漫画”と認識したらしい。そういうわけで、次のブーム(『美味しんぼ』の登場)までグルメ漫画は鳴りを潜めてしまう。

 話を本題に戻して社会の動きに着目すると、有名なところだと赤軍の活動や暴走族の出現が挙げられよう。日本国内が華やかになっていく一方で、こういった事件が発生し、国民はどことなく不安を感じていたであろうということは言うまでもない。


『美味しんぼ』『クッキングパパ』の流行

 言わずも知れたグルメ漫画の金字塔である。

 流行したのは1980年代。

 バブル経済の影響で外食文化が盛んになったのに対して、この1980年代というのはある意味、前述の1970年代より激動していた時代である。

例えば、日本海中部地震という災害や、政治面で言えば男女雇用機会均等法の施行やリクルート事件、全国で校内暴力が発生……等が挙げられるだろう。

つまり何が言いたいのかというと、外食文化の浸透という土台と、激動の時代に対する不安といった精神状態という二つの要素がグルメ漫画の人気を上げたのだ、ということだ。


 では、その後のグルメ漫画はどうなったのか?


『美味しんぼ』や『クッキングパパ』の流行でグルメ漫画自体の数は増えたのだが、上記の作品を超える作品は現れなかったと言えよう。

 と、言うのも、理由があって、数自体が増えたということに加えて、例えば1980年代の後半になるとテレビなどの他の娯楽が発展し、人気が散在してしまったからだ。故に総合的な数こそ増えたが人気が集中しなくなった。


現代のグルメ漫画について


 人気の集中こそしていないとはいえ、『グルメ漫画』というジャンルは健在である。それどころか一時期より人気が上がっていると言っても過言ではない。そしてその理由は二つあると、私は考えている。


 一つ目の理由として考えられるのは、これまで述べてきた通り、社会が大変不安定な状況にあるということだ。

 政権がコロコロと変わる、諸外国との外交問題、あるいは東日本大震災もか。こういったご時世では人々はやはり「普遍的な価値」を求めるのだろう。そしてそれはこれからも続いていくだろう(個人的には次の日本で行われるオリンピックが分岐点になるのではないかと考えている)。


 二つ目の理由として、私は創作の土台が大きくなった、ということを挙げたい。

 つまり素人でも簡単に自分の作品を公開できるようになった、ということだ。それは「小説家になろう」や「カクヨム」もそうであるし、私が最も強く主張したいのは「pixiv」の発展である。

 Pixivで誰でも漫画を簡単に公開できるようになった。そんな中でグルメ漫画は現実世界を舞台にしていることで描きやすいのか、かなり数が多いのだ。そして現在書籍として刊行されているグルメ漫画でも、その多くはこのような創作サイト出身のものだろう。



 最後に、グルメ系作品の今後について考えていこうと思う。


 まず既にある傾向として、グルメ作品+α(仕事など)の作品が増えるということだ。

 これはもう出てきているし、他の流行ジャンル(例えば異世界転生など)をみても明らかだろう。


 加えて、私個人の考えではあるが、『睡眠』を題材にした作品が流行するのではないかと思う。


 と言うのも、グルメ系作品が流行する最大の理由は、“食”が普遍的な価値を持っているからである。

 なぜ普遍的なのかというと明瞭で、人間の三大欲求だからだ。

 で、あるならば、その内の一つである“睡眠”を題材にした作品が流行するのは、不思議ではないはずだ。

(この場合の“性欲”について扱った作品はまた別の問題が発生し、話が長くなるため割愛させていただく)


 例えばこういうのはどうだろう。

 主人公はサラリーマンで夜遅くまで働いている。

 そして疲れて帰ってきた主人公は、就寝前の入浴や寝酒、こだわり抜いた枕や、ありとあらゆる睡眠グッズを用いて、究極の“睡眠”を追求する――


 どうだろう。自分で言うのもなんだが、それなりの人気が出そうではないだろうか。



 まとめ。

 今後のグルメ作品はどうなっていくのか?


一、異世界転生のように、職業を上手く利用したものに細分化されていく。


二、「普遍的な価値」に着目した他ジャンルの作品が台頭してくる。


 以上である。

 グルメ系作品の人気の推移は社会の動きと密接に関係してくるので、今後も注目していこうと思う。

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