第16話  プチオープンの失敗と対策

 暦の上ではもうとっくに秋のはず。しかし暦には関係なく、まだ夏真っ盛りだった。最高温度三十度を越える真夏日が、連日続いている。

 そんな中、ホットドッグ店『ドッグス』はオープンした。オープンしたとはいっても、グランドオープンでもなければプレオープンでもない。キャサリンが無理矢理トムに迫った、例のプチオープンである。

 残暑厳しい真夏日の下では、エアコンの効いたオープンしたての店内にいても、外の熱気が伝わってくる。外の熱気は伝わってくるのに、店内には熱気がない。

「キャサリンさん……暇ですね……まさかこんなに暇になるとは思いませんでした」

 ナンシーが事の重大さに初めて気付いたように、そう呟いた。

「そうね……私もここまでとは思いもしなかったわ」

 キャサリンもナンシーに同調しながら、茫然自失となっている。

 オープンの告知や宣伝を一切しなかったので、そこに新しいお店ができたことを知る人はほとんどいない。まして客のいない閑散としたお店に、敢えて寄りつこうという物好きな人もいないのである。

 もはや暑さのせいだけにして、片付くようなレベルのものではなかった。

 その時だった。放心状態の二人の前にトムが現れた。

「何だ。やっぱり閑古鳥が鳴いているじゃないか」

「何ですか? その何とか鳥って? カッコウのことですか?」

 トムの言っていることが分らず、ナンシーが頓珍漢なことを言いだした。雉も鳴かずば撃たれまいに。

「バカ野郎。客がいなくて暇で暇でしょうがないってことだよ。これじゃあ、オペレーションの練習にもならないじゃないか。ステルススポンサーだからって、何もオープンまでステルスにすることは無いんだよ。それとも何か? 客までステスルスになったっていうのか?」

 トムが、ヤケクソ気味に吠えた。半分は予測していたので、取敢えず二人に任せてみようと思っていたのだが、ここまで酷いとまでは思わなかったのである。少なくともオペレーションの練習位はできるだろうと踏んでいたのだ。

「よし。幸い……いや幸いじゃない……いやそれも違うな……取り敢えず客も居ないから、これからの対策会議をしようじゃないか」

 この事態に、トムも少し錯乱しているようだ。

 そしてオープンしたてのお店で、臨時対策会議が始まった。

「まず遅ればせながらも、グランドオープンの告知をしなければならない。そこでだ、一旦オープンしてしまっているので、このままグランドオープンするのではインパクトが無さ過ぎて、とても効果が望めない。グランドオープンに際しては、何か新しいことを始めることを謳い文句にする必要がある」

「謳い文句って?」

「例えば、目新しい新メニューとか店舗改装とか新システム導入とか……とにかく何か目新しいことを切っ掛けとしなければならない。しかし、今から改装とか新システムというのは難しいから、必然的に何か目新しい新メニューを考案するということになる。君達に何か良いアイデアはないかね?」

「それって、ホットドッグの新メニューを考案するってことですか?」

 キャサリンには、ホットドッグの新メニューではインパクトがあるとは思えなかった。

「いや、ホットドッグ以外がいいだろう。そうだなあ……ランチタイムを外せるような、何かお土産にもなるような、それでいてドッグス独自なものがいいな」

「じゃあ、スイーツみたいなものですね?」

 キャサリンが訊ねる。

「まあ、スイーツでもいいのだが、もっと斬新でドッグスらしいものっていうのはないかな?」

「鯛焼きはどうですか? 私、鯛焼き大好きなんです」

 ナンシーが自分の好みで提案した。前に三人で食べたことを思い出したのかも知れないが、他に思いつかなかったようである。

「鯛焼きか……確かに面白いが、ドッグスらしくはないからな」

 トムは今ひとつ、賛成しかねていた。

「でも、トムさん。トムさんがいつも言っている、発想の転換をすればいいんじゃないですか?」

 珍しくキャサリンが、トムの十八番(おはこ)を奪うような柔軟な思考を展開する。

「発想の転換って? どんな風に?」

「鯛焼きだと純和風で、ドッグスにはそぐわないかも知れないけれど、例えば鯛じゃなく犬……つまりドッグの形にすれば、ドッグスに合うメニューになるんじゃないかしら? それに犬の形の鯛焼きなんて、とってもユニークでインパクトがあると思うんですけど」

「う~ん……確かに面白いな……それに、鯛焼きなら俺も、昔とった杵柄だしな」

「えっ、トムさんは昔何か盗んだのですか?」

 ナンシーが、又々頓珍漢なことを言い出した。ナンシーという雉は後先を考えず、すぐに鳴き出したくなるようだ。

「バカ野郎。誰が盗みなんかするものか」

「トムさん。トムさんが、そんな死語を使うからですよ。私たち若者には、そんな死語は通じませんよ」

 キャサリンは、そう言ってナンシーを庇う。雛鳥を天敵から守る親鳥のような気持なのである。

 結局、キャサリンの案が採用され、『昔とった杵柄』ということでトムが担当することになった。

 但しトムもずっと焼いている訳にはいかないので、時間と日にちと数量を限定しての販売にするというのである。

「そんないい加減なやりかたでいいのですか?」

 キャサリンが心配して訊いた。

「それは俺も、できるなら毎日でもした方が良いとは思うけど、無理だからなあ。でも逆に、いつでも買えるんじゃなくたまにしか買えない方が、お客が集中するので効率も良いと思うし。まあ、最初から『気まぐれドッグス焼き』と銘打っておけば、納得してもらえるんじゃないか」

 結局、新メニューの『ドッグス焼き』は、トムのスケジュールが空いている日時のみ『気まぐれドッグス焼き』として販売されることになった。このいい加減さはトムらしいといえばトムらしいのだが。

 それから宣伝と告知関係について、トムから提案(指示?指令?)があった。

 まず、ポケットティッシュに宣伝と告知を入れて駅前で配布するという。

「俺の知っている会社に頼んで配布してもらう予定だが、今日(こんにち)の事態を招いた責任を君達にも取ってもらうことにする」

「えっ、責任を取るって?」

「そう。責任を取ってもらう。一万個のティッシュを用意して、その内八千個は学生アルバイトが配布してくれるが、残りの二千個については君達が、それぞれ一千個づつ責任を持って配布するということだ」

 二人はこの位のペナルティーなら仕方が無いと思い、甘んじて受ける覚悟をした。

「次にプレスリリースだが、これは美由紀さんの方でしてくれるそうだ。文面は俺の方で考えて美由紀さんに渡しておくよ」

「えっ、どんな文面にするのですか?」

「簡単に箇条書きでいうと、まず、秘密結社であるトムズキャットがドッグスという名のホットドッグ店をオープンすること。トムズキャットの最終目的は、世界平和を願う心を広く世界にPRすること。世界平和に貢献しながら、美味しいホットドッグを販売していくこと。新メニューとしてドッグスオリジナルのドッグス焼きを、販売日時は気まぐれで新発売すること……などかな?」

「何か、あんまりホットドッグ店の宣伝になっていないんじゃないですか? それにトムズキャットは秘密結社なのに、そんな前面に出てきてもいいのですか?」

「まあ、秘密というのはあくまでも建前で、世界平和をPRするためなら前面に出てきてもいいのだよ。それに文面については美由紀さんがいろいろと考えて、何とかアレンジしてくれるよ。何せプロだからな」

 しかし、『秘密結社』の『秘密』が建前とは、キャサリンも恐れ入ってしまった。いくらいい加減なトムであっても。曲がりながらもトムのいうことを、今までそれなりには信じていたのである。キャサリンは幾分の不満をかかえながらも、次に進むことにした。

「でも、それだけ宣伝したら、お客様が殺到するんじゃないですか?」

 やっぱり自分達だけのオペレーションに自信を持てないのである。

「分かっているよ。取り敢えず美由紀さんには応援に入ってもらう段取りはするし、後アルバイトを一名、入れることにしよう」

「えっ、アルバイトですか? 遂に、003の誕生ですか?」

「いやいや、まだ003はお預けさ。アルバイトをトムズキャットのメンバーにする訳にはいかないからね。取り敢えずトムズキャット候補生ということで、コードナンバー無しのコードネームだけで活動してもらうことにする」

「そうなんですか……」

 新メンバー登場かと期待した二人は、多少気落ちしてしまった。

 そんな二人を他所に、トムが更に付け加える。

「そこで今回は、ナンシーに指令だ。そのアルバイトの募集と面接をして、採用までしてくれたまえ。キャサリンはすでに経験済みだから、ナンシーにアドバイスをしても良いが、あくまでもナンシーが主体でするように」

「えっ、そんな……私が面接するなんて、とても無理です」

「大丈夫よ、ナンシー。私だって貴女を面接した時は、トムさんに言われて初めてしたのだから」

「そうとも、ナンシー。何事も経験だ」

 結局ナンシーは、二人に押し切られてしまった。

「トムさん。アルバイトの募集なら、さすがに今回は国家機関というわけにはいかないですよね」

 費用がかからないという理由だけで、国家機関を使うことに疑問を感じていたキャサリンが訊ねた。

「そうだなあ……民間でどこか良いところがあるか?」

「飲食専門のネット求人サイトはどうですか? 私たち飲食未経験だから、飲食の経験のあるアルバイトを採用したほうが良いと思うんです」

「わかった。じゃあ、その線でナンシー、がんばってくれたまえ。キャサリンも側面から手伝ってやってくれ」

 トムはそう言って二人に指令した後、少し思案しながら付け加える。

「ところで、アルバイトの募集やティッシュ配りやプレスリリースや新メニュー導入やらで、当面お店の営業は無理だと思うから、取敢えずグランドオープンまでは一旦休業することにする。だからグランドオープンに向けての準備を万端に整えてくれ」

 最後にそう言い残して出て行った。

 残った二人はオープンしたてのお店を閉めて、オフィスドッグスの事務所へ戻った。

「ナンシー。早速だけど、飲食専門のネット求人サイトを探してみて」

 キャサリンは次の目標ができて張り切っている。あくまでもナンシーが主体にならなくてはいけないのだが、どこまで理解できているのか怪しいものだ。

「キャサリンさん。まさに飲食専門という、ネーミングのサイトがありました。急ぎの募集にも対応できるとか、特集掲載でターゲットを絞った募集をかけられるとか、パソコンだけじゃなく携帯やスマートフォンにも対応しているとか。それに料金も結構安いみたいですよ」

「じゃあ、そこでいいわ。で、募集を掲載するには、どうすればいいの?」

「まず、会員登録をしなくちゃいけないみたいです」

「会員登録? 登録料って、どのくらいするの?」

「いえ、登録そのものは無料って書いてあります。求人広告の作成についても、管理画面を使用して自分で作成すれば無料みたいですね。有料で作成そのものを代行するサービスもあるようですが」

「そうなんだ。取敢えず作成してもらった方が無難かもね」

「それから掲載依頼をするのですが、その内容が適切かどうかの審査を運営会社がするみたいです。その後、電話で記載内容やサービス内容についての最終確認をしてから、初めて掲載されるようですね」

「何か掲載されるまでに、何日も期間がかかりそうね?」

「でも、急げば即日掲載も可能って書いてありますよ」

「じゃあ早速『飲食経験者アルバイト急募』ってことで、依頼をかけておいて頂戴」

 やはりキャサリンは、ナンシー主体ということを忘れているようだ。

 ネット求人サイトに掲載された翌日、早速二名の応募があった。

「トムさんには悪いけど、国家機関より民間の方が、多少費用がかかっても効果があるみたいね」

 キャサリンは、自分が提案したネット求人での効果に満足している。

「で、キャサリンさん。面接なんですけど、どうします?」

「折角だから、明日二人まとめて面接してしまいましょう」

 翌日二人は、二名の応募者を前に面接を開始した。

 応募者は二人とも女子の大学生で、一人は四回生、もう一人は三回生とのことで、両者共になかなかの美人だった。

 不思議なことにトムの周りには、美人ばかりが集まってくるようだ。自然と美人を引き寄せてしまう、何か得体の知れない不可思議な力が働いているのかもしれない。

 しかし、今回のトムの指令は『アルバイト一名の採用』だった。キャサリンとナンシーはそんな美人二人の、いずれか一方を選ばなければならないのである。

 面接はナンシーが何か口火を切らなければ始まらないのだが、なかなか思うように言葉がでてこない。

「あのう……あのう……」

「しっかりしなさい。ナンシー」

 キャサリンが、ナンシーの耳元で励ますように囁く。

「あのう……ご、ご応募いただき……ありがとうございます」

 何とか口火を切ったので、キャサリンが後を引き継ぐことにした。

「私はキャサリンで、こちらがナンシーです。当社ではオーナーの遊び心で、スタッフは本名ではなくコードネームを使用することになっているの。よろしくね」

 キャサリンが話している間に少し落ち着きを取り戻したナンシーが、ようやく応募者に質問をする。

「あのう……飲食の経験があるとのことですが、どのようなご経験ですか?」

「私は約一年間、ハンバーガーチェーン店でアルバイトをしていました」

 四回生が先に答えた。打てば響くような返答である。

「私は半年と期間は短いですが、カフェでアルバイトをしていました」

 三回生も後からではあるが、しっかりとした声で答える。

 飲食の経験については二人とも問題なさそうだ。

「ところで、あなた達は四回生と三回生とのことですが、大学の講義とか就職活動とかでアルバイトの時間はとれますか?」

 一応、大卒のキャサリンには、その辺の事情が分かるので確認することにした。

「既に必要な単位はほぼ取っていますし、在阪放送局のアナウンサーで内定をいただいています」

 四回生は余裕で答える。さすがアナウンサーに内定するだけあって、言葉の切れも良く内容も的確だった。それに小柄ながら、顔もスタイルもスッキリとしていて見栄えが良い。ストレートボブディの髪型も清潔感があり、アナウンサー志望として相応しく、とても似合っている。

 続いて三回生も返答した。

「私も、一・二回生の時に取れる単位は全て取り、先日、商社の事務職で内々定を頂だきましたので、三回生の必須科目の時間以外は、暫らくアルバイトに専念できます」

「内々定って?」

「まだ少し時期がはやいので正式な内定ではありませんが、内定の内定って聞いています」

 こちらは、事務職というわりには少し派手な印象のあるフェミニン系のロングヘアーで、身長も四回生に比べると少し高く、一六〇センチ台半ばと推測される。

 二人共、美人でスタイルも良く、そしてとても優秀な学生のようだ。どうしてこんな優秀な学生が、ドッグスのアルバイトに応募してきたのか不思議でならない。

 その後キャサリンとナンシーが交互に二人に質問し、二人はそれぞれハキハキと返答する。どちらも甲乙つけがたく、仕方なく採用については後日連絡することにして面接を終えた。

「どっちの娘も良い娘だったわね。どちらかになんて決められそうにないわ」

「キャサリンさん、私もです。二人とも私よりも、ずっとしっかりしていて」

「二人とも採用って、トムさんにお願いしてみましょうか?」

「えっ、そんなことができるのですか?」

「ナンシーが、泣きまねしてくれれば大丈夫よ。後は私がフォローするから」

 キャサリンは、すっかり『泣き落とし大作戦』に味をしめてしまっていた。梅雨の時期はとっくに過ぎ去っているのだが。まあ、台風の季節ではあるのだけれど。

 翌日、ナンシーがトムに報告をする。

「トムさん……昨日、アルバイト二人の面接をしたんですけど」

「おっ、そうか。で、決まったのか?」

「それが……二人とも私なんかとは、比べ物にならない位しっかりしていて……選べないんです」

「選べないって?」

「グスッ……二人とも、とっても良い娘なんです……グスッ……どちらかになんて決められなくて……グスッ……二人とも採用というわけにはいきませんか……グスッ」

 ナンシーの演技は多少ぎこちなくはあっても、前回よりは随分と上達していた。

「そうですよ、トムさん。グランドオープンで、お客様が殺到したら、彼女たちのように飲食の経験のあるしっかりとしたアルバイトは、何人いても足りないぐらいですよ。人員不足で不祥事を起こすよりは、この際二人とも採用しましょう」

 すかさずキャサリンが追い打ちをかける。前回の経験を元に、更にパワーアップさせていた。全く隙の無いフォローだった。

「全くしょうがないやつらだな、君たちは……」

 そう言いながらトムは、キャサリンの方をジロリと見る。トムも泣き落とし作戦にうすうす気付いている様子だが、まだ効果があるようだ。

「ところでトムさん。二人のコードネームはどうします?」

 キャサリンは、すでに二人とも採用と決めてしまっている。

「コードネームについては、この『西欧女性名一覧表』の中から本人に選んでもらってくれ」

「えっ、コードネームはトムさんが決めるんじゃなかったのですか?」

「ああ、俺の方はもう、ネタ切れになってしまったよ」

 キャサリンはトムの返答に、何か怪しいものを敏感に感じるのだった。しかし、それが何なのかは判然としないのである。

 結局二人のコードネームは、四回生がジェニファー、三回生がアリスに決まった。

 二人ともアルバイトの時間は十分に取れるとのことで、早速美由紀のところへ送込み、オペレーションを含めた研修を受けてもらうことにする。

「後、私たちはティッシュ配りをしなきゃならないのね」

「でも、大学生のアルバイトさんと一緒に配るんでしょ? カッコイイ男子だったらいいのに」

「どうかしら? 不男かもしれないし、女子かもしれないし」

 二人はそんな取り留めないことを言い合いながら、翌週のティッシュ配りに不安と期待の入り混じった気持ちで備えていた。

 月曜の朝、二人は三ノ宮駅南側の丸井前に集合する。

「今日はよろしくお願いします」

 二人は元気に挨拶をして、それぞれ千個づつのティッシュを受け取った。

 ティッシュ配布会社からは、リーダー一名に配布実行者が三名来ている。リーダーは社員で、三十歳前後と思われる女性だった。後の三名は学生アルバイトで、男子一名に女子二名。三人とも、それぞれ神戸の有名どころの大学生である。

 男子は可もなく不可もなく、多少期待はずれではあったが気さくでしゃべりやすいので良しとすることにした。女子二名も明るく元気があった。

 九月も半ば近くになり季節はとっくに秋のはずである。それなのに気温だけは、どう考えても夏真っ盛りとしか表現できないような暑さだった。いわゆる厳しい残暑とでもいうのであろうか?

 それでもキャサリンとナンシーは、アルバイトの学生とお揃いの白い半そでのポロシャツを着こんで、頑張ってポケットティッシュの配布を始めた。

 配布をしながらもキャサリンは、時々学生アルバイトに話しかけ、少しづつ打ち解けるように心がける。キャサリンには、ある作戦があったのだ。

 全ての配布が終了して解散する前に、キャサリンは三人のアルバイトを集めてこう言った。

「いい、貴方達。大学にはたくさん友達がいるでしょ。今日私たちと知り会ったのも何かの縁だから、必ず友達に『ドッグス』のことを宣伝するのよ」

 いつのまにか、ここまでのことが言える仲になっていた。

 そんなキャサリンをナンシーは頼もしそうに見つめている。

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