第9話  女子会

 トムが外出してしまったので、仕方なく会社設立サポート会社について改めて調べていると、心音が尋ねてきた。

「トム小父さん、居ますか?」

「あら、心音ちゃん。いらっしゃい。トムさんなら、さっき出かけたわよ。なんでも、スポンサー探しの営業活動だとか言っていたけど」

 ナンシーがかつての戦友を出迎える。

「そんなの、どこまで信用できるのか分かんないわよ」

 キャサリンは、トムの言った『スポンサー探しの営業活動』などということは全く信用せず、そう言ってナンシーの言葉を一蹴した。

「ところで心音ちゃん、どうしたの? 又無報酬の依頼?」

 トムへの苛立ちからだろうか、キャサリンは心音に対して八つ当たりをするかのように、少し刺のある言い方をしてしまった。

「えっ、報酬ならトム小父さんに、ちゃんと払ったわよ」

 いわれの無い言いがかりに、心音もムキになって言い返す。

「えっ、そうなんだ。やっぱりトムさんは、法螺吹きの嘘つきなんだ」

 キャサリンは少しがっかりとした。トムに楯突いたり反抗したりするのは、単にトムなら大きく受け止めてくれるだろうという安心感の裏返しでもあり、深層心理では信頼をしていたのだが、それが裏切られたような気分になった。

「で、その報酬っていくらだったの?」

 ナンシーが核心部分について訊く。

「それは……そのう……」

 何故かモジモジとしながら、心音は少し恥ずかしそうにしている。二人は、心音の様子をもどかしそうに注視しながら、その答えを待った。

 暫らくして心音は、もう後には引けないと思ったのか、はにかみながらも小さな声でボソボソと答える。

「私のファーストキッス……」

「えっ、ファーストキッス?」

 この答えはキャサリンもナンシーも全く予期していなかったので、驚いてそう叫んでしまった。青天の霹靂だった。この前の『肉体関係』の時と同様に、二人揃って絶句する。

「ホッペよ、ホッペ。本物のファーストキッスは、将来の旦那様に取っておくんだから」

 二人の反応に動揺した心音は、慌ててそんな言い訳をしていた。この小学生――もうすぐ中学生――は、本人はそんなつもりではないのだろうが、いつもお姉様達を驚かすのである。

「そうよね。心音ちゃんには、太一ちゃんがいるものね。本物のファーストキッスは、太一ちゃんとするんでしょ?」

 ナンシーが、訳知り顔で訊ねた。

「違うよ、ナンシーさん。太一君は単なるボーイフレンドよ。本物のファーストキッスは、将来の、もっと大事な人に取っておきたいの」

 ファーストキッスには本物と偽物があるのかと、ドライな心音の言い分にジェネレーションギャップを感じながら、二人とも妙に納得してしまうのである。今時の小学生は考え方も、お姉様達より遥かにエキセントリックだった。

 キャサリンは、心音の言い訳を聞いて少し『ホッ』としたものの、トムに対しては何故か沸々と怒りがわいてきた。

「あの法螺吹きエロ親父め。今度こそ許さないんだから」

 キャサリンのS性は、全開間近である。

「ナンシー、止めても無駄よ。今度という今度は、本当に許せないんだから」

 キャサリンは、ナンシーの制止を予め予測していた。しかし、今更この怒りの矛を収められるものではなかった。今まで沸沸と貯め込んできたエネルギーが、遂に爆発する時を迎えてしまったようだ。

「でも、キャサリンさん、落ち着いて。考えてみれば、無報酬には違いないじゃないですか?」

 ナンシーは、キャサリンが感情的になっているのを、何とか宥めようとしている。

「それは、そうかも知れないけど……いたいけない少女のファーストキッスを奪うなんて、例え偽物のファーストキッスでも、何か許せないと思わない?」

「ファーストキッスって言うから、そんな感じになってしまうけど、単に可愛いらしい女の子が、小父さんのホッペに『チュッ』としただけなら、逆に微笑ましいい光景になるんじゃないですか?」

 そう言われるとキャサリンも『そういう考え方もありかな』と思ってしまった。何故かキャサリンのS性は、いつも不完全燃焼になってしまう。

 ナンシーのお蔭で一旦引き抜かれた信管が元に戻され、危機一髪で大爆発は免れた。ナンシーは、キャサリンの感情制御装置の働きをしているのである。

 キャサリンが感情をコントロール出来ないで固まっている間に、ナンシーは心音に訊ねた。

「心音ちゃん。トムさんに、何か用があったんじゃないの?」

「そのことなんだけど……ママが、『トムズキャット創設のお祝いと、ミィーちゃん救出のお礼をしなくちゃ』っていうことで、トム小父さんとお姉さん達を、夕食に招待したいっていうことなの」

「えっ、私達もいいの?」

 ナンシーは素直に喜んだ。

「でも……私達……心音ちゃんのママに、会ったことも無いのに……」

 キャサリンは何故か少し気後れをしている。心音のママなら、とてつもない美人だろうと予測され、トムともどんな関係があったのかと、やきもきするのだ。やはり、ナンシーの指摘どおりトムのことをすごく意識して、まだ見ぬ心音のママにライバル心を燃やしていたのである。

「ママなら大丈夫よ。キャサリンさんとナンシーさんなら、会っていなくても、前から良く知っているから」

「えっ、良く知っているって? トムさんが何か話していたのかな?」

 トムが自分達のことをどういう風に話していたのか、二人共とても気になった。

「何て話していたかは私も知らないけど、ママは『トムさんの夢をかなえてくれる天使達に、早くお目に掛りたいわ』て、言っていたよ。それに、うちのキャサリンやナンシーと見比べたいんじゃないかな?」

 二人は、事情は良く分からないものの、心音とは『子猫救出大作戦』を共に闘った戦友のような親近感もあり、又、心音のママにも興味があって招待を受けることにする。

 心音が用を済ませて帰っていくのを見届けるとキャサリンは、早速トムに訊いた携帯メールアドレス宛てに、メールで連絡を取ることにした。

『トムさんへ。心音ちゃんと心音ちゃんのママから、トムズキャット創設のお祝いに、今日、夕食の招待を受けています。このメールを見たら、すぐに連絡を下さい。お願いします』

「こう打っておけば、何か返事がくるでしょう」

 キャサリンは先程トムに、『無視とかシカトはしないでね』と言ったばかりなので安心している。

「でも……トムさん、スポンサー探しの営業活動とか言っていたけど、どこまで行ったのでしょうね?」

 ナンシーは、不安な様子でキャサリンに訊ねた。

「ナンシーはお人よしね。営業活動なんて、嘘に決まっているでしょ。どうせ、何処かの喫茶店か何かでサボっているのよ」

 キャサリンは、そう言って決めつける。トムのことが気になりながらも、何故か反発してしまうのだった。素直な良い子に比べると、結構捻くれ者の、面倒くさい性格なのかもしれない。

 暫らくして、トムから返信があった。やはり、キャサリンが刺した釘が功を奏したようだ。

『今、東京に向かっている。明日、スポンサーの可能性のある企業を片っ端からアプローチする予定だ。だから、今夜は帰れそうもない。折角だから二人で行って、心音のママには事情を話して、よろしく伝えておいてくれ』

「えっ、トムさん来られないんだ……」

 キャサリンは、トム不在で心音のママに会うのが、急に不安になってきた。

「でも、トムさん。ちゃんと営業活動を、してくれていたのですね」

 キャサリンとは逆に、ナンシーは安心したように頷く。

「どうしよう? ナンシー」

 トムが来られないと知ってキャサリンは、招待を受けてしまったことを後悔していた。

「でも、キャサリンさん。招待を受けてしまった以上、行かないのは失礼になるんじゃないですか? 事情を説明するだけでも、取り敢えず行った方が良くないですか?」

 ナンシーの常識的な意見に対して、キャサリンも反対する術を持たない。

「そうね、夕食は辞退しても、事情の説明だけはした方がいいわね」

「それに、ミィーちゃんにも会いたいし」

 猫好きのナンシーは、キャサリンの複雑な心境を他所に、やはりノーテンキである。

 結局、二人は時間まで調べ物の続きをしてから、心音の家に行くことにした。

 心音の家は、JR六甲道駅から歩いて十分位の住宅街の中にある。

 キャサリンとナンシーは、三月の天候不順をようやく脱して、今度は逆に急に暖かくなり、桜の開花宣言がでたばかりという、夕方の神戸を歩いている。季節が一カ月先に進んでしまったようだ。

「ナンシー、もうこの辺だと思うんだけど……何か豪邸ばっかりね」

 キャサリンは、その街の雰囲気に少し気後れしている。

「キャサリンさん。番地から考えると、たぶんここだと思うんですけど」

 ナンシーが立ち止ったところは、この一角では、ややこじんまりとした家の前であった。キャサリンは少し安心したものの、それでも一般的には豪邸である。

「心音ちゃん家(ち)って、お金持ちなんだ……」

 何となく落ち着かず、キャサリンは深く溜息をついてしまう。

 二人は、トムが東京に行っていて、今日は来られないという事情を説明して、招待された夕食は辞退するつもりで来ていたのだが、予想外の高級住宅街の雰囲気に呑まれてしまっていた。

『ピーンポーン』

 心音の家のインターフォンが鳴る。

「あっ、トム小父さんとお姉さん達だ」

 待ちわびていた心音が、玄関へと走って行った。

 一見大人びて見えるところもある心音だが、やはりこういうところは小学生そのものだった。いや、もうすぐ中学生なのだが。

「こんばんは。お邪魔します」

 キャサリンとナンシーが、遠慮しながら入ってきた。

「いらっしゃい。お姉さん達」

 心音が、満面の笑みで出迎える。そこに真っ白な子猫のミィーちゃんが、足元から飛び出してきた。

「キャアー、ミィーちゃん。元気だった?」

 すかさず、猫好きのナンシーが抱き上げる。

「すご~い、ナンシーさん。ミィーちゃんが、すっかり懐いちゃってる」

 心音が、驚きの声を上げた。

 実は、ミィーちゃんはようやく心音と心音のママ美里には慣れたところだが、他の人には一切近づくことさえなかったのに、ナンシーにだけはすでに懐いてしまっていたのである。

「だって私、猫大好き人間だから、猫ちゃんの方もそれが分かるんですよ」

 ナンシーは嬉しそうにそう言って照れていた。

「ミィーちゃん……こっちにもおいで」

 キャサリンは、『たぶん私は好かれてないのよね』と思いながらも、やはり可愛い子猫に触りたくて、恐る恐る両手を差し出してみる。

 すると不思議なことにミィーちゃんは、もぞもぞと動き出しキャサリンの手の方に行こうとした。勝手にそう思っただけなのかも知れないが。

「ミィーちゃん、来てくれるの?」

 キャサリンはそう言うと、すごく嬉しくなって思わずミィーちゃんを抱き締めてしまった。まさか、ミィーちゃんが自分に懐いてくれるとは、思いもしなかったのだ。

「猫ちゃんも、相手が自分のことをどう思っているのか、分かるんですよ」

 猫大好き人間のナンシーは、まるで猫の気持ちの代弁者のように解説する。

「あれ、トム小父さんは?」

 心音はトムの姿が見えないのを不思議に思い、二人の後ろを覗き込むようにして訊いた。

「そのことなんだけど……実はトムさん、今、東京に居るらしくて今日は来られないみたいなの……それで私たち、その連絡だけして、今日はお暇しようと思って……」

 ミィーちゃんを抱いて頬ずりしながら、キャサリンが申し訳なさそうに説明する。

「トム小父さん、来られないの? でもお姉さん達だけでも上がっていって。絶対に帰っちゃダメだよ。折角ママが用意して待っているんだから」

 そこに心音のママ美里が、奥から現れた。

「そうなの……トムさん、来られないの?」

 先程のやりとりを、奥でも聞こえていたらしい。

「残念だけど東京じゃ、しょうがないよね。じゃあ、今日は四人で女子会にしましょう。さあ二人共、上がってちょうだい」

 美里は、半ば強引に二人を促した。

 キャサリンもナンシーもやはり少し遠慮もあって、どうしようかと迷っていたが、可愛いミィーちゃんともっと接触していたかったのと、心音の意外と子供らしい一面を見たのと、心音のママ美里の極自然な強引さに施されてしまうのである。

「じゃあ、少しだけ……」

 二人は迷ったあげく、結局そう言いながら、家に上がることにした。

「今日はね、たこ焼きパーティーなんだよ」

 心音は、とても嬉しそうである。一人っ子の心音にとって、キャサリンとナンシーが、初めて自分にお姉さんができたかのように思ったのだろう。

 キャサリンは、これまでは心音のことを、『顔は可愛いいけど何処か大人びていて、性格は可愛げない子』と思っていた。しかし今は、子供らしい一面を見て心底可愛いく、まるで妹のようにさえ思えるのであった。

「あのね、たこ焼きは自分の好きな具材を選んで、自分で焼くんだよ。タコにエビにイカにホタテに牛肉の大和煮に豚の角煮にソーセージにチーズに……とにかく、一杯あるから」

 心音はそう言って、すごくはしゃいでいる。

「私、たこ焼きって自分で焼いたことがないんだけど、ちゃんと焼けるかしら?」

 キャサリンは、地方出身なので経験が無く不安げに訊いた。

 関西以外の人が自分でたこ焼きを焼くことは、まずほとんどないだろう。関西人はそれより機会は多いと思われるが、それでもしょっちゅう焼いているわけではない。焼き方が分かる程度には経験しているということで、結局家で焼くより買って食べることの方が多いのだ。

 関西では、ほとんどの人がたこ焼きをプロのように焼けるというのは、一種の都市伝説といえる。因みに関西では、ほとんどの家にたこ焼き器があるという都市伝説の方は、当たっているらしい。

「大丈夫よ。焼き方はママが教えてくれるし、それに私だって一人で焼けるんだから」

 心音は得意そうに言った。関西でも小学生が一人で焼けるのは珍しいのだ。

 キャサリンとナンシーが導かれるまま玄関から奥へ行くと、そこは約十二畳はあると思われるリビング兼ダイニングキッチンであった。

 ダイニングテーブルの上には、すでにたこ焼き器がセットされている。その周囲には心音の言ったとおり、色とりどりな沢山の具材が、見た目にも華やかで豪華にテーブル一面に並べられていた。

「トムさんは残念だったけど、トムさんが居ないおかげで今流行りの女子会ができて、ちょうど良かったじゃない」

 この場合、今流行りかどうかはどうでもよく、トム不在のトムズキャットメンバーの二人に、美里は気を使って敢えてそう言ったのである。

 美里はとても美人で、それでいて優しく思いやりがあり、それに前に心音が言っていたように、とても初めて会ったとは思えない気さくな人だった。

 年齢も、小学六年生でもうすぐ中学一年生になる心音の母親なので、普通なら三十代半ば以上(アラフォー)のはずなのだが、どう見ても少し落ち着いた二十代後半としか見えなかった。今風の内巻きストレートミディアムヘアーも清潔感があり、若々しい見た目とよく合っている。

 キャサリンは、会う前までのような対抗意識は全くといって良い程わきあがらず、逆に好感を持ってしまった。

 美里は、キャサリンやナンシーにとってお姉さん的ポジションだし、逆にキャサリンとナンシーは、心音にとってお姉さん的ポジションなので、まるで四姉妹のように感じたのだ。

 美里には今日初めて会ったばかりなのに、とても打ち解けた女子会になり、キャサリンはトムが不在なのを感謝したい位である。

 そんな楽しい時を過ごしていると、突然ナンシーが台所の奥のガラス窓を指差して叫んだ。

「キャサリンさん。あれ何ですか?」

 キャサリンがそちらに目を向けると、そこにはガラス窓に張り付いた白い物体があった。

「ギャアー」

 思わずキャサリンは飛び上がり、ナンシーの腕にしがみついてしまった。

「キャサリンさん、大丈夫よ。そのガラス窓は開かないので、中には入ってこないから」

 心音はキャサリンの大げさな驚きように、半分可笑しさをかみ殺したような表情で説明する。

「何? 何? 何なのよ、それ」

 それでもキャサリンの怯えは収まらない。

「大丈夫よ。ヤモリのお腹よ。それ、トムさんのお気に入りだから」

 美里も可笑しそうに微笑みながら、そう説明した。

「他に、もう少し小さいのもいるのだけれど、その二匹がトム小父さんのお気に入りで、いつも『可愛い、可愛い』って、言っているよ」

 何故か心音は得意げである。

「昔から『家守』という漢字から、ヤモリがいる家には『家を守る』という意味で、悪いことが起こらないって言い伝えもあるしね」(『屋守』『守宮』とも書く)

 美里も優しく補足した。

「そうだったのですか……突然見たので、びっくりしちゃって……大騒ぎしてすみません」

 ヘビやトカゲ類が大の苦手なキャサリンは、ヤモリが中には入ってこないと聞いて、ようやく安心する。

 一方、この騒ぎのきっかけを作った張本人は、只、可愛くニコニコとしているだけだった。

 ナンシーの何気ない一言が、意図していないにもかかわらず、キャサリンの意外な一面を引き出してしまったのである。ナンシー恐るべし。

 この事件の後、四人は更に会話が弾むようになった。最終的には、ここにいないトムへの、他愛もない悪口や愚痴が中心となっていた。

 その悪口や愚痴は四人の会話と言いながらも、結局そのほとんどがキャサリンから発せられていた。

 一時、「ヤモリ」の出現で騒然となったものの、逆に四人が心底打ち解け合う、良いきっかけとなったようだ。

 キャサリンにとって、最初は不安一杯だった女子会も、終わってみれば何故か同窓会のような雰囲気になり、とても楽しく過ごすことができた。

 楽しいひと時は、過ぎるのも早いものである。ここに来てからすでに二時間以上が過ぎていた。キャサリンとナンシーは御礼を言って、お暇することにする。

 帰り際、美里は少し改まった様子で、二人にお願いをした。

「ちょっと変わったところのあるトムさんだけど、どうかトムさんの夢を叶えるお手伝いをしてあげてね」

「トムさんの夢って、何なのですか? 私たち、まだトムさんのこと、そこまで分からないんです」

 キャサリンは、トムのことをまだ何も知らないことに気付いたのである。

「そうね。トムさんは、自分のことはあまり話したがらないのよね。私は長い付き合いだから何となく分かるのだけれど、トムさんは世界平和について、自分なりに考えた方法で何か貢献できないかって事を何時も考えているの。だけれど以前に収入面を考えずに突っ走って失敗したので、今は両方を満足させる方法は無いかと試行錯誤をしていて、それがトムズキャット創設に繋がったと思うのよね。だから、表面には出さないけれど、貴女達への期待がすごく大きいと思うの」

「そうなんですか……私達何も知らなくて」

 美里の話を聞いて何故かナンシーはしんみりとしてしまった。

「トムさんは、いつも『夢や希望は大きければ大きい程いいからね』って、言っていたけど、本当にそんな大きな夢があったのですね。私達、できるだけ頑張ってみます」

 いつもの法螺話と思っていたことが、実は、もっと真面目なトムの夢だと知って、キャサリンはとても嬉しい気持ちになった。そしてトムの夢を叶えるべく、世界平和のPRというミッションを、頑張って果たさなければと思ったのである。

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