第9話 私、アイス大好きっ!
私、アイス大好きっ!☆
「ぐへぇ~……」
俺、涼平、17歳。
いつも通りシャブを打っていたら、ついついこんな間抜けな声を出してしまった。
「ああ、あひゃ、あひゅ……ふえぇぇぇーーーいぃぃ!!!」
キタキタキターーー!!!!
これだから薬はやめられねぇぇぇ!!!!
よっしゃ、もっと打つぞ打つぞ!!!!
そう思って、注射器を手にしたときだった。
「大変! 大変よ!」
母親がそう叫んで部屋に入ってきた。
な、何事だ?
せっかくいいとこだったのに、一気に現実世界に引き戻されちまった……。
「あ、アンタ!またドラッグやってたのね!……まったく、やってもいいけど量を少し控えなさい……。あっ、そんな事より大変なの!」
「なんだよ、言えよ」
「千代子ちゃんが……東尋坊から飛び降りたらしいの……」
「…………」
マジかよ。
あのシャブ仲間のちょこが……。
信じらんねぇ……。
涼平は絶望感に襲われた。
さっきまで感じていた幸福感というものが、この世に存在しない物であると感じる程度には。
しかし、直後、涼平は更なる絶望に苛まれた。
「これから俺は……どこでシャブを買えばいいんだ……」
貧乏ティーンエイジャーの俺が今までシャブを困らない程度に買えていたのは、ちょこのお陰であった。
というのも、ちょこの親はギャングスタなので、そこのギャングから友達価格でシャブを譲ってもらっていたのであった。
困った俺は、頭の中を整理する為に、とりあえず外に出て見ることにした。
「ヘイ、リョウ!ワッツアッ?」
外に出ると、同じくシャブ仲間のトニーがいきなり喋りかけてきた。
「聞いたぜ聞いたぜ、チョコの事!」
「ああ、お前も聞いたのか、その事……」
「俺達これから何処でドラッグ買えばいいんだろうな……。困ったもんだぜ!」
「だな……」
「そういえば、お前、ちょこの所に行かなくて良いのか?お前達仲良かったし」
「ああ、そうだな……」
俺もちょこも、2年前に日本から、ここ、ロサンゼルスに引越して来たもの同士だから、仲が良いのも当然といえば当然であった。
もっとも、ちょこは、頭が格段に良く、成績も、本来GPAの数字は4迄しか存在しないのに、特別に5を貰っていた位であったから、話したりするたびに、釣り合いが取れないなぁと思ったものであったから、本当に仲が良かったのかどうかは分からないが……。
「しかし、東尋坊かぁ、遠いなぁ……。そもそもアイツ、なんでわざわざ東尋坊から……?」
「そういえばアイツ、前、『死ぬなら日本で死にたい』って言ってたなぁ。しかし東尋坊から飛ぶとは思わなかったぜ……。シャブで飛びまくってたアイツらしいがな!」
「HAHAHA!」
トニーのちょっとしたアメリカンジョークに、俺はつい笑ってしまった。
「そうだ、お前も東尋坊行くか?」
「ソーリー、ちょっと用事があるんだ」
「しょうがないな……」
仕方が無いので、一人で行くことにした。
東尋坊に着くと、俺は懐から、ヤクの入った袋を取り出した。
「どうにかロスから日本へ持って来ることが出来たな……」
密輸というリスクを犯してまでコイツを持ってきたのは、ちょこの為に、東尋坊から撒いてやろうと思ったからであった。
「待ってろよ、今撒くからな……」
そういうと、俺は崖のギリギリ迄身を乗り出し、そして、勢い良く袋を開けた。
ばふっ。
しまった。
勢い良くばら撒かれたヤクの一部分が、顔面目掛けて飛んできた。
「あ、やべっ、ヤクが……。あ、あ、あ、あへ。あへへへ。……あうっ」
崖先で、ヤクによって体の自制が利かなくなってしまった俺が辿る運命はただ一つ。
ぴょーぉぉぉぉぉぉんんんんんん……。
ゴスッ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます