さて、
最終話 エピローグと裏話的後書き
あーあ、ぼく本当に何やっていたんだろう。やっちゃった……やっちゃった……。
反省する為に死体に寄生して、痛み、痒み、臭みを感じながら振り返ってみると何をやってたんだ、酷いアタマの悪さだと後悔しています。はい。本当に……はい……。
そうやってダラーっと女々しい反省をしていたら、ドアがミシミシガタンと開いて、男女が死体を、息を切らしながら運んでいくので、ぼくはビックリして壁に張り付く。
……あの娘だ。でも怖い顔はしていない、むしろ穏やかな顔で……知らない男の方は子供みたいに笑っている。無垢な笑いを浮かべながら二人は死体を外へ運んでいる。
ぼくはおっかなびっくりになってドアの向こうにソロリと出てみると、二人は死体に水をかけてサラサラした砂の中に埋めている。すると、さっきまで笑っていた男の人が急に泣き出してくずおれてしまった。そんな男の頭を、少女が撫でている……。
それを見ていたぼくは何だか肩の荷が下りたみたいに安心して、ぼくもそこに埋まりたいと大袈裟ではなく、思うより先に感じた。
少女は男の頭を撫でながらコッチを向く。ぼくは未だビクビクしていても、あの娘はぼくを見て、穏やかに笑って、手を差し伸べるので、手の平に身を置くと……ふかふかぼくを包み込むベッドみたいだ……と柄にもない事をぼくは思ってしまった。
「良く頑張ったね、もう大丈夫、頑張る必要はもうないよ」
「うん……うん……そみれみあ……」
なんだか眠たくなってきて、ぼくは砂の中に埋って、泥のように眠った。
ぼくが埋まった砂の上は、まるで人間の迷路の様な脳髄みたいにサラサラ渦巻いて、渦巻きはみるみる大きくなってゆく。砂漠がごうごう唸っているみたいだ。
沈んでゆく……ぼくも砂も……。下から込みあげてくるものは水で、しょっぱい。
砂と一緒に沈みきると、水没都市というのだろうか、砂漠の下には町が在った。人が沢山いて、八百屋の爺はタバコを咥えて手を叩きながら、さあさあと叫んでいるソレは僕の居た世界の在るべき姿だった。お使いに来た男の子と女の子が袋を持って来た。
「ぼくら二人で来たのかな? レディース・アンド・ジェントルメン! じゃあ特別にこれをプレゼント。……あ、これも持っていかないかい? 良いやつだよ!」
八百屋の爺は少年少女の頭を笑顔で撫でて、パンパンの袋に大根を詰めている。
子供たちはイヤな顔ひとつせず、むしろ笑みをこぼしながら二人で重たい袋をパパとママが居る温かそうな家の帰路の中、一生懸命に小さな身体で、よいしょ、よいしょと歩幅は狭いが掛け声を合わせながら、美味しい晩御飯の為に頑張って、額に汗して帰る二人の背中はまだ小さくても必ず大きくなるという確信を感じながら僕は溶けてゆく。
「『頑張れ、負けるな』という言葉は安っぽいかもしれないけどこれは大事な言葉で」
……正直にいえば良いのに、やっぱりぼくは生きても死んでも変わらないのであった。
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後書きから先に見る人もいらっしゃるでしょうが、それもひとつの小説の読み方だと思っております。特に当小説は途中まで読者が置いてけぼりに成り、後半からやっと今までの意味が解ってくる……という筆者が大好きな小説のパターンを好きなまま書いたものですので、後書きから読んだ方が飲み込みやすいのかもしれません。
当小説はムダに歴史があります。最初は闘病中、苦しみの中で書いた日記からです。書いている内に何を思ったのか、日記も恥ずかしくなり捨てたので全く憶えていませんが、日記からパソコンのメモ帳に変わって、恐らく苦しんでいる自分を主人公として書いていけば面白いんじゃないか? という軽はずみな感じで書き始め、当時はアダルトゲーム、それも泣けるノベルゲームが流行っていて筆者も面白いなと肖り、流行りに乗れば売れて、誰かに自分の奥底の闇を解ってくれるかな?……という幼稚な発想から、アダルトノベルゲームの製作の為に某有名巨大掲示板を通してスタッフを募集しながら書いて行こうとスレッドを立てると、全くといって良いほど受けずスタッフ志願者様は来てくれないもので、二年間くらい独りで定期的に書いたテキストデータを投稿してスレッドを保守していました所、やっと現れた!……と嬉しさも束の間、自分はシナリオテキストを書くだけ書いて、ノベルゲームをどうやって作るのか何も考えていない、その上何かと虚言を吐いて申し出てくれたスタッフ様に大変なご迷惑をお掛けしまして、丁度その頃、病院で発達障害と統合失調症、ましてや薬物依存を診断されました。
色々な悪い事が自分に余りに沢山でてくるので、自棄酒はもちろんの事、薬物大量摂取、やつ当たりの様なケンカ等をして荒れに荒れ、二度の精神病棟の強制入院を余儀無くされまして、ここで当小説の歴史の幕が下りたかの様に思いました。
それから一二年で落ち着きを若干ですが取り戻す事が出来まして、当小説のテキストデータはトラウマだと決め付け、実は違う小説を書いていました。当然ボツにしたので当小説が処女作なのですが、ボツにした理由はその書いていた小説は高校が舞台だからというのもあったのかもしれませんが、なんか違う……自分が書きたいのはこういうのじゃない……と、書いている内にそういった疑問が段々でてきて、あの頃(当小説)は
どんなの書いてたっけな……と思い、その頃は僕編がメイン、私編がサブシナリオとしていて、僕編を書いていた時に散々な事をしてしまった記憶があり怖くて、私編を見たのが良かったんです。なんせ僕編のテキスト容量は八百キロバイトを超すほど駄文を書いていました一方、私編は八十位と、十分の一の量でしかも少し面白さを感じたので、元々プロットさえ無かったのですが、これを下書きとして書いて行こうとやっているとこれだ、こういうのが書きたかった! と頭の中で爆発し夜も興奮から眠れずに私編の下書きを基に「私」を書き終わっても未だ爆発は止まらず、プロットを作りました。
私、俺、僕……と目次に書かれていたら、ああ、同一人物の話なんだろうなと恐らく多くの方が思ったでしょうが、初めは本当にそう書くつもりでした。プロットもそうでした。俺編で狂人学という造語を無意識に書いた時だったでしょうか、急に発想力が豊かになった様で、プロットが窮屈に成り捨てて、Α、Β、Γと全く考えもしなかったオチを思い付き、こりゃ良いなとまた爆発的に頭の中に新しいプロットが出て来たのは、統合失調症が良い意味で働いたからだと思います。私編もまた書き直しました。
次の爆発は僕編の第三章コーヒーブレイクでノゾミとの会話を書いている時でした。ゲーム時代の僕編を思い出したんだったか何だったかで、ノゾミは重要人物にしようとネコですが、作中でもノゾミに魔力があると書きましたが本当にあったみたいに……。
余談を挟んで申し訳ありませんが、この小説を書いていると場面場面が本当に現実に表れるんですよ。それは作中で自分の、揺れ動きながら病気が良くなってゆく心情とか季節だったり見聴きして感動したものだったりを書いたからだと思われますが、僕編とおわり はじめ編を書いている時は本当にハジメ/Αと同じ様な苦悩に陥りましたし、
俺編の時はブランデーが大好きで良く飲んでいたのでブランデーと書いたのに、僕編で不味い不味い書いていたら本当に不味くなって、ウイスキーが好きになったり等、偶然だよな……と思っていたら無意識に必然の様な偶然が~と書いていて不思議でした。
……まあそれ位にまで熱を入れていたという事にして、ノゾミを重要人物にする事でチキとゲイン、ーーーに親の存在を、アヌとヘルにもっと活躍を、ΑΒΓΔそれぞれに
意味や理由を……等が書ける様になって更に深いものにする事が出来ました。登場人物のーーー、チキ、ゲイン、アヌ、ヘルという変な名前を付けたのは他と被らない様にする為でしたが、ーーーはモールス信号でOと、知己外院と、アヌとヘルは神話に登場する神だったというのも偶然の幸いでした。実はゲーム版のテキストにはもうひとりヌトという萌え萌え~で王の娘だと妄想しているヤク中の幼女が居ましたが、そういうのは要らないマジメな小説として書きたかった為、設定をヒカルコとチキに引き継がせて、ノゾミも鬼太郎で有名な猫娘みたいに人間に耳と尻尾を生やした姿でしたが性格はそのままに、黒猫としました。ノゾミという名前は自分が実家時代くるしんでいる時に夢で見た猫娘みたいに耳と尻尾を生やして自分に本物の笑顔を見せてくれた人の名前です。
実際に雉猫を飼っていたのですが部屋に隠れて死ぬ間際、隣の部屋は僕の部屋でしてそれも大音量で音楽を鳴らしていたので当時は自分がトドメをさしてしまったのでは!と、自分も苦しい時代でしたから罪悪感で胸一杯になり使命感と成って自分も苦しまねばならない思いがあったのでしょうか、その時が荒れに荒れた時代でした。その罪悪感は今も尚あるというのも、ノゾミの夢もあり、ネコの身体としたのを憶えております。
ヒカルコとヒカリとフミアという名前は小説での登場です。それも後付けで、私編で互いに名乗らなかったのもその所為でして、その三人の名は立場を明確に表す為だけのものですので月極光子、聖母ライト様も、ただ何となく似合うからという理由で付けた名ですので深い意味はありませんが尾張一(おわりはじめ)という名前は既に同姓同名の方がいらっしゃいまして、尾張ハジメというのも某人気マンガのキャラに居まして、でも他に丁度良い名前が無いよと妥協して一番苦労した名が「尾張はじめ」でした。
最後に。自分はかなりの遅筆でして、実は小説は二〇一五年に爆発を繰り返しながら一年かけて完成していました。そして、どこか誰かに評価して貰いたいとプリンターで刷って最初から読んでみると……あれ、ここをこうすればもっと面白くなる……ここもここも、ああ、こんなんじゃダメだ……。という自己不信に陥った時ちょうど友人から小説投稿サイトの存在を知ったので、推敲校閲しながら小出し小出しして、更に半年を入念にかけて完成が出来たという約七年の歴史が当小説「Hello, myself!」に詰まってい
ます。このタイトルでプログラムが関係していると勘付いたお方はもう、大好きです。
追記:異世界なのに、普通や常識が全く異なってもおかしくないのに何ら苦労せず、最強だ流石だ愛だ書かれたクソッタレで甘ったれな小説がランキングを争っている小説投稿サイトの現状のアンチテーゼに、「Hello, myself!」は成ってくれたでしょうか?
わたくし松田道人はそういう人間ですので、そういう風に見られている方が楽であり生き甲斐を感じ、それこそが本望です。
Hello, Myself! ~狂人道は阿修羅道~ TamoreS @tamore
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