第12話 ゴブリンさんとミューの初めて




馬車の旅の1日目を終えたミュー達は現在2日目の馬車の旅を満喫していた。共に旅をしているナーコとは今まで関わりが少なく、ぎこちなさが残っていたが、昨日ゴブリンさんへの質問大会でグッと打ち解けた。そして相変わらずミューは馬車の揺れと上手い付き合いができていなかった。



「ご、ゴブリンさんって結構明るい人でびっくりした」



「うぅー そうですね、、、。冗談とかも言ったりするんですよ、、、この感じで」



「じょっ!冗談!?凄い意外、、、気さくなんだねゴブリンさんって」



2人の話を聞いているのどうかわからないがゴブリンさんは胡座を描いて目を瞑っていた。馬車の大きな揺れにも動じない姿はまるでゴブリンの彫刻の置物の様にもみえた。ミューは「ゴブリンさん寝てるのかな?」とトンチンカンなことを考えながらナーコとの会話を楽しんでいた。



『ム!!来る。ミュー馬車をトメさせロ』



置物と化していたゴブリンさんはムクっと起き上がりミューに指示を飛ばしながら馬車から飛び降りた。



「すいません!馬車を止めてください!!」



「はぇ?!ど、どうしたんだ急に??」



「ミューさん急にどうしたの??」



この時ばかりはゴブリンさんの声が自分にしか聞こえていない事をミューは煩わしく思ってしまった。



(き、緊急事態の時だと不便ですね、、、急ぎの時は喋ってもらったほうが良いでしょうか?)



そう思いながらも、ナーコや馬の御者に自分達にとってあまり良くない知らせをアナウンスした。



「魔獣か盗賊か、、、悪意のある存在が接近しているのをゴブリンさんが察知しました!ここで仕留めるので御者さんは馬を止めて馬車の中へ!!ナーコは御者さんの護衛をお願いします!!」



「う、うん!わかった!ミューさんはどうするの!?」



「私はゴブリンさんと一緒に戦います!!」



そういうとミューもゴブリンさんを追って馬車の外に飛び出だしていった。魔獣や盗賊という言葉に少なからず怯えている自分とは違い迷いなく戦いを選択できるミューがネーコは眩しく思えた。



「あ、あのお嬢ちゃん凄いね、、、魔獣と聞いて1番に戦いに行くんだ。きっと強いんだろうね」



「そうですね。本当に心の強い子です」



「え?」



若干噛み合わない会話をしながらナーコもミューに任された護衛という仕事を全うする事に心血を注いだのであった。




『ミュー 来たカ』



「はい!少しナーコと御者さんにお願いをしていたので遅れてしまいました!!」



『遅れてなどいなイ。良く勇気ヲ持って馬車から出てきたゾ これから命のやりとりダ、恐ろしくないカ?』



体が勝手に動いてしまっていたミューはゴブリンさんの言葉でこれから行われる実戦、命のやりとりに思わず息を呑む。本当に大丈夫だろうか?自分に魔獣は倒せるだろうか?もし盗賊なら人を殺めることは私に出来るだろうか? 



少しの間考えるミューをゴブリンさんは黙ったまま、ただ真っ直ぐに見つめていた。ほんの数秒の間のあとミューもまた真っ直ぐとゴブリンさんを見つめた。



「怖いです!でも大丈夫です!!私は私を戦って勝ちとりたい。だから戦います!!」



一瞬恐怖に心を撫でられて、臆してしまいそうになったが、それでもゴブリンさんと戦い、訓練を重ねていた時からミューの心は進むべき道は決まっていた。



『わかっタ。勝ちとるゾ、ミュー』



「ハイ!!」



そして倒すべき相手が草原から姿を現した。



「グォォォォォオ!!」



姿を現したのは狼型の魔獣。魔獣の中では最も有名であり、多くの冒険者が1番初めに戦闘をする魔獣。狼型は決して強い訳ではなく、駆け出し冒険者でも慎重に対処すれば撃破可能な魔獣である。



しかし、侮る事なかれ。駆け出し冒険者、世界に生きる人々を最も多く殺してみせているのも、またこの狼型の魔獣なのだ。狼型が真意を発揮するのは自分達の仲間がいる時。その連携を駆使して、敵をじわりじわりと追い詰め確実に仕留めにかかる。



ギルドでは「初めに狼型の数に常に気を配れ」と

耳にタコが出来るほど言われている。もちろん学園の授業でも教えている事だ。



『狼が4匹か、、、ミューやれるカ?』



「出来ます!!」



ミューは腰に手をやりナイフを取り出した。

魔獣から目を逸らさず慎重に武術を展開し、戦闘準備を完了した。魔獣は未だ警戒しているのか距離を詰めて来ていなかった。



(狼型は連携が非常に厄介と聞きます、、、ここはまず数を減らしておきたいですね)



ミューは力強く地面を右足で踏み込み魔獣との距離を一気に詰めた。虚をつかれた魔獣達は反応する事が出来ず先ず1匹がミューの刃の餌食となった。



(慎重に確実に喉元に鋭い突きを出す!!先ずは1匹目です!!)



「ハァァァァ!!」



「ギャワァン」



ゴブリンさんとの"型"の訓練と、組み手で学んだ接近戦の心得を淡々と実行した結果、魔獣の断末魔が草原に響き渡った。魔獣がこと切れたのを素早く確認しミューはまた魔獣達と距離をとる。



(焦らず常に状況を見極めロ。ゴブリンさんにも、学園の授業でも言われた事ですけど、戦いながら落ち着くのって難しいです。どうにか落ち着かないと、、、)



命のやりとり。その緊張感と敵を葬った安心感、そして存在の力が自信に流れ込んでくる高揚感でミューの感情はぐちゃぐちゃになっていたが、それを理性を総動員して無理矢理落ち着かせた。



(授業や本には狼型は仲間が倒れたら警戒して逃げていくってあったけど本当ですかね?)



お互いにジリジリと距離を詰められないまま、暫く睨み合いがつづいたが、先に動いたのは魔獣の方だった。狼型の魔獣は諦めたのか鼻を鳴らして草原に駆け出して行き、ミューの初めての実戦が終了した。



「や、やりました、、、。あ、あれ?」



極度の緊張から解放されたせいかミューは思わず尻餅をついてしまい、起きあがろうとしたが上手く起き上がる事が出来なかった。どうやら腰を抜かしてしまったらしい。「大事な所で締まらないんですから」と自分を責める様な誉める様な口調でミューは呟やいた。









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ここまでお読みいただきありがとうございます!

タイトルをみて ん!? はじめて!! これ、エチチなやつやろ!と思って読んでしまったあなた!

引っかかりましたね、、、。残念それは罠だ!!



なんて茶番は置いといて、伝ゴブが異世界週間ランキング的なやつで760位とかになりました!!

めでたい!この前1400とかだったのに!?

これも皆様の応援のおかげですので、これからも応援よろしくお願いします!!


モチベになりますのでよければハートやら星やら押してレビューなんかも書いたりしていってください!! 

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