第8話 ゴブリンと存在証明





開始の合図と共にまずはディスクが動く。訓練用の刃を潰したショートソードを手に素早く武術を展開。体内のエネルギーを力に変換しゴブリンさんの側面から強襲を仕掛けた。




「はぁぁぁぁ!!!」




「ゴブリンさんあぶない!!」




ゴブリンさんの後ろにいたミューの声に応える様にゴブリンさんはディスクの動きに合わせて振り下ろされようとしているショートソードのグリップに手を伸ばした。




「なっ!!」





あまりにも違和感なく滑らかに伸ばされた手にディスクは反応する事ができず、ゴブリンさんに手首を掴まれ、切り掛かったエネルギーを全く殺す事なくそのまま投げ飛ばされた。




「うぁぁぁぁ!!」




ディスクはゴブリンさんが気を解放してから

このゴブリンは只者では無いと感じ、

「こんな凄いやつと戦える」と興奮を抑えきれず、初めから全力の一撃を繰り出したはずだった。




攻撃を防がれるかも知れないとは思っていたがまさか、予想もしていなかった方法であしらわれた事で興奮も冷め、ほんの少し冷静さ取り戻せた。

そして冷静になったディスクとは違い周囲の生徒達は一様に混乱した。




「ディスクをなげとばしたぞ!」「なんだあれ!」

「本当に普通のゴブリンじゃないのか!?」

「俺も召喚獣手に入れたかった、、、」



反応は様々だったが、大半はゴブリンさんへの畏怖の念が込められていた。




『ふム、良い踏み込ミだな。闘志を全面に押し出してしまい狙いがミエやすいのは良く無いガ、戦士の一撃ダ』




「ご、ゴブリンさん心配しましたよ!!ディスクは本来武術と魔術を両方使ってきます!!まだこれからです!!」





『ソウか、油断はしなイ。戦士よ来イ!!』




ゴブリンさんはそういうと両手を胸の方に寄せ小さく構えをとった。ミューには後ろ姿しか見えないがゴブリンさんがまるで山の様に大きくみえた。




一呼吸いれたディスクは次の一点を考えていた。

ゴブリンさんは強いがミュー自体はなんの脅威でもない。無視をしても問題はなく、全身全霊でこのゴブリンを攻めに行くべきだ。今の攻防で力の差は感じたが、諦めるは自分らしく無いとディスクは心を奮い立たせ、魔術と武術を全開にしてゴブリンさんと戦う方針に決めた。




「いくぜ!!」





武術を展開し直線では無いランダムな軌道でゴブリンさんに接近するディスク。先程とは違い構えをとったゴブリンさんにはスキがなくディスクに出来るのは正面攻撃のみのはずだったが




「大地よその力を示せ!!」





『ム!?』




その詠唱と共に魔法陣が展開し、ゴブリンさんの足元の地面が崩れ鉄壁のような構えにほんの少し隙が出来た。その隙を見逃すディスクではない。




「炎よその力を示せ!!」




左手から繰り出された数個の炎の弾がゴブリンさんを襲った。ゴブリンさんは焦る事なくその魔術を両手で処理をしたが、炎の弾の真後ろまで身体を接近させていたディスクは少しだけ空いたガードの隙間にショートソードを叩き込んだ。




「そりゃぁぁぃ!!!」




『少し甘イ』





完全に決まるかと思った攻撃をゴブリンさんは身をよじり斬撃をかわしてみせた。しかしその瞬間




「避けるとおもってたぜ!!大地よその力を示せ!」




ディスクがまたも魔法陣を展開した。ゴブリンさんは先程と同じ声の詠唱に地面を気にしたが、地面に変化はなく代わりに飛んできた石の礫をその身に受ける事になった。




『ム!?』




「やったぞ!!当たった!!」




ディスクの攻撃の成功に周りでも歓喜の声が上がる。魔術と武術をうまく使いこなしたディスクの戦いぶりは誰がみても賞賛できるものだった。



意識外からの攻撃に反応できず攻撃を受けたゴブリンさんだがダメージはさほどなく、先ほどの現象の事を考えていた。




『ミューよ、今の時代の魔術はあれほど短い詠唱で使う事ができるのカ?』




「そ、そうですね。効果の強さは人それぞれですけど、1番短い詠唱はあのくらいの長さです。そ、それより大丈夫ですか!?」




『問題なイ。同じ詠唱デ違う魔術をカレは出したが、それも今の時代では出来るノカ?』




「あれは普通の人には難しい高等技術なんです。本来なら別の詠唱をする所を、同じ系統なら詠唱を一括りにして別の魔術を発動できたりします」





『なるほド。今は問題はナイがより強力な者と戦う時ニ厄介になるかもしれんナ』





ミューは考えていた。ゴブリンさんはきっと強いのだろうけど、今みたいに攻撃を許してしまう事もあるのだと。ならば自分にできる事を、自分が今やれる事をしなければいけない。ゴブリンさんだけに戦わせる訳にはいかない、自分も戦って皆んなに存在を認めさしてみせると。




(ディスクはその才能と努力で同じ詠唱で別の効果を発現した。言葉でゴブリンさんは判断しているみたいだから困るんだ。言葉は同じで効果は別、、、効果は別、、、言葉は、、そうだ!!)




「ゴブリンさん!私も一緒に戦います!!」





『なにか策ガあるようだナ、ミュー』




ミューの声にゴブリンさんはニヤリと笑みを浮かべた。戦えと言って本当に戦える者は少ない。まして自分に力の無いものほど逃げでしまうのしょうがない事なのだが、自分のパートナーの戦う覚悟のある声にゴブリンさんは久々に高揚を感じた。





「倒せるかわかんねーけど、どんどん攻めさせてもらうぜ!!」




ディスクが声をあげショートソードを振りかぶる。

ゴブリンさんは先程の構えををとるが、またも魔術で地面を崩され、炎の弾がゴブリンさんを襲う。全くさっきと同じパターンにゴブリンさんは『同じ手はきかんゾ』と冷静に処理をして行く、そして石の礫が飛んできたあの時と同じくディスクは魔術を展開した。




「大地よその力を示せ!」




ゴブリンさんは反射的に石の礫を警戒しガードを取ろうとした時ミューが叫んだ。




「足元が崩れます!!」




「何ぃ!!なんで読まれた!?」




ミューの声に素早く反応したゴブリンさんは、ガードするのではなく接近したディスクをその手に捉えた。初めから崩れる事がわかっている地面ならば問題はないとバランスを崩す事なくディスクを地面に叩きつけた。





「ぐわぁぁぁあ!!」





「それまでー」





並の衝撃ではないダメージがディスクの体を駆け巡り教員が終了の合図をあげた。周りの生徒は一瞬の工房の中に何が起こったのか分からずザワザワとしてした。




「良い戦いだったなー ディスクおきれるかー?」




「あぁ、、すげぇ痛いけど、回復魔術も飛んできたから立てるよ」




「さてー、今何が起きたかお前らわかったかー?」




教員の言葉に皆「パワーのゴリ押しだろ」「え、いやそんな、、」「わかんないね」など言葉を出していたが一人の生徒が恐る恐る手を挙げた。




「おー、よしナーコ答えろー」




「は、はい。多分ですけどディスクくんの展開した魔法陣を見てミューさんが発動される魔術をゴブリンに伝えました」





恐る恐る答えるナーコにみな一様に騒ついた。「魔法陣みて魔術ってわかる?」「一応特徴とかあるらしいけど」「あんなの人によるんじゃないの?」と様々な意見が出ていたが教員が話し出しその騒めきも終わった。




「正解だー ディスクの変則魔術もすごい技術でなー。一流のスタートラインみたいなもんだー。俺たちは詠唱や感覚で次に来る魔術を察知するのか基本だがーミューはどうやら見て解るみたいだなー」




「は、はい。私すごい勉強しましたから」





「勉強うんぬんでどうにかなるものでもない様な気もするがー、こいつは以前の訓練からそんな感じはあったなー。体が追っ付いたたいだけでよー。

そしてこの召喚獣ときたー、この布陣は凶悪だぜーみんな追い抜かされるかもなー」




その言葉に生徒たち、おもにミューを馬鹿にしていた生徒が反応した。


「見てわかるのは凄いけど、、、」「いや、ミュー自身が弱けりゃ意味ないじゃん」「その召喚獣が強いだけでただのズルだろ!!」




そういった所謂妬み嫉みに近いものだったが、確かにゴブリンさんに頼り切っているとミューは思ったしまった。




「まー、お前らが言いたいことはわかるけどなー

ズルってのは1番違うなー、才能だぜー召喚獣もなー才能なんだー。魔術や武術が上手いのと同じで

そこは履き違えんなよお前らー。だが、召喚獣頼りなのも確かだからなーミューは自分を守れるくらいには強くなれー努力しろー。じゃなきゃその召喚獣を泣かせちまうぞー」





「俺自身がミューは無視で大丈夫って油断したって事だな、、、。くそーーー!!悔しいぜ!!ミューにええっとゴブリンさんだっけな?また勝負してくれよな!!」





「う、うん!こっちこそ!!」





『いつでも相手ヲするゾ』





教員の言葉とディスクの言葉が締めくくりとなり、

次の生徒の訓練が始まった。

課題は多いがミューはほんの少し気持ちが前に向いていた。自分の存在を確かに証明できた。もう辞めても良いと思っていた学園だが、まだやれる事ややるべき事が沢山あるはずだ。これからもっと自分を鍛えよう。そう思えた授業だった。





『良イ教官だナ』




「そうですね、適当にみえてしっかり私たちの事を見てくれてます。ゴブリンさん、私もっと強くなります!ゴブリンさんと一緒に!!だから手伝ってもらっても良いですか?」




『勿論ダ。ミューお前ハ今日その存在を示し勝っタ。戦士にナッたミューを我は誇りに思ウ。共に進もウ』




「もう、、大袈裟ですよ。厳しくお願いします!」





ミューはゴブリンさんとの絆を確かに深める事ができた。そして始まるゴブリンさんとの訓練がかなりハードなものになって行くと知ったミューはこの日の事を何度も思い出し、もう少し優しく頼むと言えば良かったと思い返すのであった。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


いつも読んでくださりありがとうございます!!

長くなりました!!戦闘描写はどこで区切ったらいいのかわからなくて大変です!



お陰様で「伝説のゴブリンさん召喚獣として召喚されたようです」(以下「伝ゴブさん」)が、

お陰様でなんかの異世界ファンタジーランキングで

1200位くらいになりました!!やったー!!うひょー!!



いや、冷静になって1200位て、、、どうなん??

と思いましたが、これだけ山の様に作品がある中で1200番目って普通に奇跡じゃね?と思い!!

皆さまに感謝の言葉を伝えたーいと後書きを書いてます!本当にありがとうございます!!ブックマークやpvもこの作品だけやたら増えるのでなんとか頑張れてます!!


頑張って100位くらい行けたら嬉しいのでこれからも応援よろしくお願いします!!



またナルスンの別の作品


「踊るマーメイドフェスタ」

「たとえ世界が滅びても拾い者はやめない」


のほうも是非よんでいってくたさーい!!

目指せ3作品pv1万越え!!

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