第4話 ゴブリンさんとあれこれ



虚空に消えないゴブリンをミューはしかたなく家に連れて帰った。家族はもう居ない。流行り病でなくなってしまったが、それのお陰でなんの説明もなくゴブリンを家に連れて帰ることができた。



学園での周りからの視線の酷さは言うまでもなく道中も好機の目にさらされてひどく疲労した帰り道だった。そんな視線の中でもゴブリンは気にした様子もなく『私の居た頃より混血が異常に多イな』とぼやいていた。ゴブリンというと腰巻一丁というのが魔獣のスタンダードなのだが、流石は知性のあるゴブリンなのか上半身は麻の生地に上からレザーメイルを着込みズボンに革のブーツまだ履いてた。身長は150センチでミューよりも小さく緑色の肌をと顔の造形を見なければ兄弟の様にも見えたかもしれない。




「あのぅ〜 ゴブリンさんは虚空に帰らないんですか?」



『帰りカタがわからない。そもそも歩いてイテいたらココにきたのだ。召喚されたこと、召喚とはどういう事か?パスを繋げるかイナカ?そんなアイまいな情報が脳に直接流れ込んだ以外わからナイ』



「な、ナルホドー!!えっと私歴史には詳しいので!!伊達に勉強だけのミューなんて呼ばれてませんからわからないことあればなんでも聴いてください!!ゴブリンさんそれだけ喋れるって事はずっーと昔の人ですよね?」



『今がナンネンか知らんシ、私がいたジダイが何年だったかもわからん。しかし私のいた所は常に争いがあった。シンデ人族の餌になるか殺し返して餌にするかダ。そう思えば人族の召喚獣など屈辱かもシレンな』




「知性の消えてない亜人。人族との殺し合い。

戦争、、、??もしかして亜人決戦?!ご、ゴブリンさんのいた時代って亜人決戦時代じゃないですか!?もう数千年前もむかしですよ!!」




ミューは興奮を隠しきれず嬉しそうな声を上げた。

数千年前とはいえ、人類の愚かしいまで行いによって消滅した亜人族の生き証人がココにいるのだ。



亜人決戦は伝承などは残っているが数千年の間に風化しその真偽は不確かな物になってる。どの通説にも出てくるゴブリンの英雄。しかし、あの貧弱極まりない魔獣のゴブリンしか知らない現代人からすれば、ゴブリンが乱世の中で生き残りさらに各種族の英雄達を撃破していったのか??きっと、時代に足掻いたゴブリンはいたのだろう。それに色々なことに尾鰭おひれがつき英雄にまで祭り上げられた。それが今の主流の考え方だった。




「えっ、えっと昔ってどんなだったんですか?本当に亜人族っていたんですか!? 魔獣と亜人族比べてどこに変化があるとかわかりますか!?」




『ミュー、あまりその頃のことは話したくはナイ

。憎しみの歴史ナノだ。そして同胞、友だった物達が心のない獣になったとしたらお前はそれを楽しくはなせるか?』




「あっ、、すいません私、、、ごめんなさい」




『いや、いいノダ。ただ相手のことをおもんばかる者と居たいというワガママだ。魔獣と亜人族の違いはそれほどないかもしれないな。召喚の儀と言ったか?それを見ていた限り、当時亜人族ダッた者と比べたらそれほど見た目の変化は見られない。しかし魔獣の全ての亜人族ではないぞ。我々の時代にも魔獣はイタからな』




「私、自分の興味が引くことがあるとついやっちゃうんです。ゴブリンさんの相棒になれる様気を付けますね。見た目の変化はない、、、本当に知性がないだけなのかもしれませんね。悲しい事ですけど、、、なんの償いにもならないですけど、人族が本当にすいませんでした」




『良いノダ。我も旅の中でたくさんの種族と話しアッタ。時代が悪かったのだ。人族同士の戦争が激しくナッタ。それが全ての始まりだ。神の残滓が世界を狂わせた』



「神の残滓、、、。ギフトやスキルに関係してるとは聞いたことあります。昔はそのように言ってたんですね」




『今日はこのくらいで良いだろう。日はまた登ル死ぬも生きるモまた明日のことだ』




「そうですね!明日も学校で早いですから!!

それではゴブリンさんおやすみなさい!!」




そうしてゴブリンとミューは眠りにつく。まだ見ぬ明日に思いを馳せて。ミューにとっては久々の1人ではない、孤独ではない夜であった。




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