第3話 ゴブリンさん召喚
虚空から召喚されたゴブリンとミューはしばらくの間見つめ合っていた。お互いがお互いをどういう存在なのかたしかめるために。
「おいよい、ゴブリンって、、、やっぱりミューは
召喚の儀でもミューだな!」
「ダンジョンでもその辺の森でもどこにでもいる雑魚が出てくるとか面白すぎる」
「いやー さすが落ちこぼれちゃんは違うね!!
尊敬しちゃう!!私ならもう学校来れないわ」
「ゴブリンって何欲しがるんだ??森で暮らさせてくれとか??」
「戦闘能力も皆無でほぼ無害の魔獣だからねぇ」
現在この世界のゴブリンは森やダンジョンに住まう人畜無害の魔獣に分類されている。ひっそりと生き、増えすぎると困るので定期的に人により間引きされる。その時も全く労力のかからない雑魚。それがこの世界におけるゴブリンという存在である。
昔話のファンタジー小説にはゴブリンは時代によって淘汰された亜人族の一種。強いゴブリンも居たとされているが、あまり信じられては居ないのが現状である。周りの学生が好き勝手に言い回る中でミューは全く別の事を考えていた。
(来てくれました!!もしかしたら召喚さえ出来ないかも知れないと思っていましたが、来てくれました!!)
ある種の達成感。未だ召喚の儀は始まったばかりだが、ミューの中ではこの状態で成功であった。召喚の儀で確かに魔獣最弱とも名高いゴブリンが出てきたが、似たような位置のホーンラビットとのパスに失敗した生徒も複数人居たのだ。パスに失敗しても仕方ない。逆に戦闘を仕掛けてこない魔獣とのパスを繋ぐのは難しいとされている。そうここまでくれば失敗しても良い。
そんな雑念に囚われきっていたミューを一気に現実に引き戻したのは目の前のゴブリンであった。
『ふム!、我をここへ連れてきたのはお前カ?』
それは確かに脳内に直接響いた。少し低めでどっしりとした言い回し。その言葉一つ一つに何かが乗っているようなそんな声。
「しゃっ、喋った!!」
稀に召喚獣が喋ることがある。それはかつての亜人族のとしての残滓が残っており、召喚によって刺激され知性が表に出てくるとされている。しかしながら喋るといってもカタコトであり。意思疎通といった簡単なコミュニケーションが取れるほどでおさまっていた。
「おいミュー、、、ゴブリンがショックなのはわかるけどよ、、、流石に喋るってのは、、、誰でもわかる嘘はやめとけよ」
「えっ!皆んなには聴こえてないのですか!?確かに今私に喋りかけてきたのですが!」
同級生に半ば哀れな視線を向けられてしまったが
それが逆にミューを落ち着かせた。
(周りには聴こえてない。けれど確かに喋っべりました。恥ずかしいけど、元々私は落ちこぼれ!これでダメなら学園もやめようと思ってましたし恥をかいても別にもう良いです!!)
「貴方の問いに答えます!私が貴方をここへ呼んだミューです!!召喚獣のゴブリン!!貴方の願いはなんですか!?」
ミューはゆっくりと解りやすくそれでいてはっきり大きな声でゴブリンに話しかけた。周りの同級生は「ミューはもうダメだ。気を病みすぎて頭おかしくなってしまった」などと思われしまったが、この状況でもはや開き直っているので笑いたければ笑えとドンとかまえた。
『ミューと言ったカ。我はゴブリン。誇り高き亜人族のヒトリ。 願いはないが一つ聴かせてくクレ 同胞達は今ドウナッテいる??』
「かっ、かつて亜人族と呼ばれた種族は今は知性を失い魔獣として生きています。大昔は知性を持ちこの大地に文明を持っていたとされてますが、これに懐疑的な意見の方が今は多いです!」
『そうか、皆ケモノになったカ。人族はどうなった?他の種族ハ?』
「人族や魔族、他の種族は時代共に共生の道を見つけて種が混じって行きました。今は族ではなく、人類と呼ばれています」
『そうカ。これも時代のナガレだナ。人類のミューよ、願いは無いト言ったが、やりたい事がアル。この世界を見て回ることダ。今のこの世界の在り方を確かめたイ』
「はっ ハイ! 大丈夫です! 私、ひとりぼっちで両親も兄弟も居ませんから!!世界、見て回れます!!」
『そうでアレば契約だ。ミュー、よろしく頼む』
「ハイ!」
側から見ればひたすらミューが独り言をゴブリンに向かって話しているように見えたがさいごにゴブリンと握手したことによって、もしかするとこのゴブリンは知性がよみがえっているのでは?と思う生徒もちらほらいた。ゴブリンと思い侮っていたが、色眼鏡を外しよく見れば服を着ているし、普通のゴブリンより少し背が高く150センチほどで身体つきもやけにがっしりしていた。
ともあれミューは無事にゴブリンとパスを繋げられホッと息をついた。初めての納得できる成功体験にじわじわ溢れる嬉しさに頬をゆるめ小さくガッツポーズをしていると、教員から声がかかる。
「ミュー そいつの名前どうすんだー?」
そう言われて全く考えて無かったミューは咄嗟に答えてしまう。
「うぇ、えーと、、ゴブリンさんで!!」
「お前ー そのままじゃねーかー まぁーそれで良いならいいけどよー」
そうしてミューの召喚の儀はおわった。あとはゴブリンさんを一旦虚空に帰すだけだったのが、どうにゴブリンさんが虚空に帰らない。ウンともスンともならない。まさか自分には虚空をコントロールする技術すらないのかと目に涙を浮かべていると
「ミュー そいつ知性あるなら、虚空に帰らないタイプかもしれないなー だからしばらく様子見ておけー」
そう教員が何でもないように告げそれに驚いたミューは今日一番の大声をあげるのであった。
@@@@@@@@@@@@
pvがつくたびこんな嬉しい気持ちになるんだと
思いました。沢山見られてる訳じゃないけど、誰かが見てくれてハートみたいなやつを送ってくれるのがこんなに嬉しいとは!!! よければ今後も応援よろしくお願いします!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます