第17話 呼称は「御館様」
稲生の戦いで勝利し、尾張国内を統一した織田信長。
これより尾張国内を固め、織田家をさらに栄えさせていくのが信長とその妻である帰蝶の役目となる。
尾張統一を成し遂げているためその作業にすんなり入れるのが普通なのだが、時は戦国乱世。
そう簡単に尾張一国の統一とはならないのであった。
「・・・して、勝家に秀貞
此度はいかなる用件だ?」
清洲城の一室に集う織田家の家臣団。
そこには弟の信勝側について敵対して臣従を誓った者もいる。
今回の集まりは末席にいる信勝側についていた者達、その筆頭格の柴田勝家と林秀貞の願い出によって行われていた。
「はっ、実は我らのもとにこのような書状が届きまして・・・」
柴田勝家は懐から一通の書状を取り出し、信長へと差し出す。
送り主は尾張国内で岩倉城を居城に持つ信長の親戚にあたる織田信賢からであった。
「内容は殿を討つため内応せよ、とのことにございます」
清洲城に集った織田家の家臣団からざわめきが起こる。
つい最近、稲生の戦いにおいて兄弟で争ったばかりなのにもかかわらず、間髪入れることなく尾張国内の親戚筋との争いが勃発しようとしていたのだ。
「あの・・・
事情が良く見えないのですが・・・
尾張は統一できたのではないのですか?」
信長の傍らに何故かいる濃。
この時代の政務や軍事に係わる会議の席に女性がいることは常識ではない。
だが彼女は信長の同席したい旨を伝えた際に許可されたため、ごく普通に信長の傍らに座っているのだった。
「事情が少々複雑でございまして・・・」
柴田勝家はやや曇った表情を見せる。
その事情を話すためか、林秀貞が状況を解説するための言葉を考えながら話を始める。
「尾張は確かに統一されました
しかしそれは表面上のことにございます」
「表面上?」
「はい
尾張が統一されたというのは、尾張の派閥が兄弟の二手に分かれており、その勝敗が決したことにより表面上は勝った側が統一したという状況になっております
ですが我々のような元信勝様派の者から見れば、内情が定まっていないことがわかります」
「それはつまり・・・
先の戦いで信勝殿が統一した際、親戚筋とはどのように尾張を治めていくかと言う話が成立していたということですか?」
考え至った濃の言葉に林秀貞は大きく頷いた。
「その通りにございます
岩倉城の織田信賢殿は尾張織田家の本流
稲生の戦いで争った信長様と信勝様はいわば分家の血筋に当たります
分家の血筋ですが尾張国内で大きな力を持っているのは先代の信秀様の手腕によるものが大きく、美濃攻め(加納口の戦い)の際にも多くの兵を引き出せたのは尾張国内の織田家の方々の中で最も軍才や商才に長けていたからにございます
その後継者となれば織田家の全てを任せるに足る人物に等しいこととなり、織田信賢殿を始めとした親戚筋は家中の中でも才覚を見せていた信勝様を支持することで、信秀様の時と同じように尾張を治める考えがあってのこと
信勝様はそれに応える形で助力を得て、尾張統一後のこともほとんど話がついている状態でございました」
尾張を弟の信勝が統一し、その信勝を支えるという形で織田家の親戚筋は一つにまとまっていた。
信勝が統治する尾張国内でどれだけの裁量と領地が与えられるかも話がついていたところに、思いもよらぬ兄信長の勝利という驚愕の事実が起こってしまった。
さらに信勝は一度許されたものの謀反を企て死罪。
そうなればもう信勝との間でまとまった話が現実のものとなることはない。
しかも信勝を支持していただけに、信長が勝手しまった今は信長の下につく形になってしまった。
もともと織田家の本流の血筋である織田信賢にはそれを受け入れることができなかったのだろう。
そこで尾張国内で織田信長を討つという行動に出るために一人でも多くの仲間を集めようと方々に書状を送っており、その書状の行き先には旧信勝家臣である者達も含まれていたようだ。
「確かに今、我々が殿を裏切れば容易に織田信賢殿が尾張の主となれましょう
しかし信賢殿にはその先がございませぬ
信勝様の家臣であった我らから見れば、実力は信勝様に劣っております
その信勝様に勝った殿を裏切ってまで味方するだけの方ではございませぬ
故に此度はこの書状を殿と、それを支える方々へお見せすることと相成りました」
柴田勝家と林秀貞をはじめとする信勝側の家臣団はもう信長を裏切る気はない。
そんな旧信勝家臣の者達に書状を送ったことが織田信賢の失態であり、彼の先見の明の無さや実力不足を露呈することとなる。
故により一層旧信勝家臣の者達は信長の意に応えようと忠節を誓うという逆効果も生まれてしまうこととなり、結果的にこの書状が信長の家臣団が信長を中心とした一枚岩になるきっかけとなってしまった。
そしてその可能性すら考えられなかったのか、それとも知っていながらも切羽詰まってやってしまったのかはわからないが、結果的に織田信賢は自らの株を自らの手で落として敵を強固にしてしまったのだ。
場合によっては信長に従うべきかどうかと悩み心が揺れ動いていた者達まで手放してしまう結果にもつながっているかもしれない。
「ならば信賢殿が兵を動かすのはまず間違いないでしょう
ならば受けて立つしかないのでないでしょうか?」
相手が信長に従う気がないということは、必ず諍いが起こるということ。
こうして一人でも多くの仲間を集めようとしているところを見れば、それほど時間をかけることなく動き出す可能性は否定できない。
ならば受けて立つほかないのだが、今の信長にはそれをするだけの力がある。
旧信勝家臣団を仲間に引き入れ、信勝を支持していた武家の多くが信長に忠誠を誓っていた。
尾張国内で信長に戦いを挑むとしても、もう信長以上の力を持っている者は尾張国内にいない。
「それはそうなのですが・・・
いかんせん、相手が少々厄介でございまして・・・」
「厄介?」
戦えばまず間違いなく勝てる。
そんな相手に旧信勝派の家臣団だけでなく、信長派であった家臣団も表情が優れない。
「織田信賢殿は将軍家より尾張守護に任じられておりまして・・・」
尾張の統治者としての地位であることに将軍家のお墨付きをもらっている。
例え実力がなくても、影響力がなくても、将軍家という存在の威光が味方にある織田信賢はそれだけで盲信する者達も少なくない。
実際の実力差に反して多くの人を集めることができる可能性が極めて高いのだ。
「尾張一の実力者と、尾張一の地位を持つ者が対立するということですか」
信長は今や尾張では敵なしの実力者。
兵力に家臣団、指示する武家などは尾張の中では随一。
しかし唯一、将軍家より任じられる正統な地位だけがない。
その正当な地位を持つ者が敵として立ちふさがる以上戦わなければならないのだが、戦うにあたってどうしても正当な地位というものが邪魔になるのであった。
「これは良い機会かもしれませんね」
織田信賢を相手にすることにやや難色を示す者達が多い中、濃は逆に笑顔を見せてこれぞ好機であると告げる。
「実力のある者が尾張を治めることが良いでしょう
現に民衆の多くは殿を支持しており、先の戦いでも助力してくださいました
ならばこれを気に信賢殿を打ち破り、尾張の正統な統治者としての地位を手に入れてしまえばよいのではないでしょうか」
戦えば勝てる相手。
その相手と戦って勝ち、尾張国内を完全に一つにまとめるのに必要な実力と正当な地位を両方手に入れてしまう。
争いが避けられぬというのであれば争うことは前提とし、最上の結果を求めるしかない。
相手が尾張守護を任じられていようと、尾張を切り盛りしていく実力がなければならないのだが、柴田勝家や林秀貞の目にはそれができる人間ではないようだ。
ならばそれができる人間がその全てを手中に収めた方が尾張に住む民衆にとっても良いこと尽くめ。
濃の主張により、集まった家臣の意見は大きく方向転換していく。
「確かに、今や我らの殿は尾張随一の実力者
押しも押されもせぬ尾張の国主たる地位を確固たるものにするためには、尾張守護という地位は避けては通れぬ道ですな」
森可成が濃の意見に賛同する。
それに従い、今まで表情がすぐれなかった者達にもどんどん賛同する意が広がっていく。
「殿、織田信賢殿を破って尾張守護の地位を手に入れましょう」
家臣団の視線が信長に集中する。
この会議の場で口数が少なかった信長だが、彼の言葉にこの集まりと今後の方針が委ねられる。
「ワシが尾張守護に相応しい
皆はそう思うか?」
信長のその問いに反論をする者は誰もいない。
織田信秀と平手政秀という、先代とその重臣を失ってから精力的に政務に励む信長。
その信長が行っている政務の内容は確かに尾張国内を豊かにしている。
それは彼の政務が理に適っていることを証明し、それが信長と言う人間の実力を証明することになっている。
政務の度に濃と相談しているという事実は誰も知らないため、この場に集まっている信長の家臣団は信長こそが尾張の国主に相応しいと信じて疑わない。
「ならば、そうしよう」
信長の言葉に家臣団は無言で頭を下げる。
しかし内心は喜びに満ち溢れていた。
仕える相手が偉大であれば偉大であるほど、従う側は意義や意味を見い出せる。
主人の出世は家臣団にとって自らの支えによって起こった目に見える結果となるため、何にも代えがたい一番嬉しいことなのだ。
こうして信長は自らに敵意を向ける織田家本流の血筋である織田信賢と戦うことを決意した。
会議が終わって自室へと戻った信長。
その傍らには相変わらず濃がいて、部屋に二人きりと言う状況になる。
そこで信長は項垂れながら大きくため息をついた。
「尾張守護・・・か」
織田家当主となることさえ拒んでいた信長。
そんな彼がこのまま何事もなく織田信賢との戦いに勝てば尾張の正統な国主となる。
一武家の当主という地位から逃げていた彼にはそうやら一国の主という地位は思った以上に重荷のようだ。
「そんなに嫌そうな表情をしないでください」
「織田家の当主から尾張の領主、そしてこのままいけば尾張の国主となってしまう
父の後を継ぐこととなったあの時にはこんなことになるとは夢にも思わなかった」
信長にとって尾張を統一することさえ想像以上のことであり、そもそも目指すべきだとすら思っていなかった。
予定外に予想外が重なり、気がつけばどんどん高みに登って行ってしまっている。
その重圧に苦しむのは当然のことであった。
「このようなところでその体たらくでは先が思いやられます
殿にはこれからもっと大きなことを成し遂げていただかなければ困りますから」
濃がこの時代にやってきたのは歴史を変えるため。
その最大にして最高の壁が今川義元の上洛作戦だ。
尾張をあっけなく一飲みにしてしまい、美濃をそれほど苦労することなく飲み込んでしまった今川義元はそのまま上洛を果たして天下人となる。
そんな歴史上の偉人を討ち果たしてもらわなければ困るのだ。
濃にとって織田信長という存在は大きくなればなるほど心強いもの。
そのために彼女は常に信長を補佐する。
「大きなこと、か
ワシにできることなど知れていよう」
「弱気にならずとも良いと思いますよ
尾張の国主が目の前と言う現状も十分大きなことです
それにとてつもなく大きなことを始めからするのは無理でしょう
段階を踏み、今見えている大きなことようやく成し遂げた後、またその時に見える大きなことを成し遂げる
それを繰り返し続けた最後に、よくよく考え振り返ってみればとてつもなく大きなことを成し遂げていた
その結果が歴史に名を残すか残さないかと言うものだと思います」
「そういうものか?」
「そういうものですよ」
尾張国主にさえなっていない現状の信長に天下統一などできるはずがない。
しかし尾張の国主となり、敵の攻撃を退けて領土を拡大すれば上洛を果たすことも可能となり、その先には天下統一という大偉業が見えてくる。
段階を踏んで一歩一歩進んでいく。
その背中を押す役目を濃は自らに課しており、信長には背中を押すことで前に進んでいける人間であってほしい。
その第一歩が織田家の当主という地位に始まり、尾張一の実力者と言う領主に繋がり、尾張を治める国主となるところにまで至る。
その先はさらに続いていくのだろうが、今はまだそこまでは見えていない。
故に見えている場所、尾張国主を今は目指すのが最上の目標である。
「それに尾張の国主となってもすべきことは大して変わりません
政務をする幅が広がり、使う絵図が変わるだけですから」
「お前はいつも簡単に言ってくれるな」
そう言いながらも信長の表情は少しだけ硬さと暗さが取れている。
濃の言葉を聞いて肩の荷が下りたわけではないが、肩の荷が少し軽く感じるようになったのだ。
「では、まず尾張守護だな」
「はい」
信長と濃、二人はまず目の前の目標を確認し合い、お互いに頷き合うのだった。
それから間もなくして、清洲城に織田信賢挙兵の知らせが届いた。
あらかじめ旧信勝派の柴田勝家や林秀貞などから事情を聴いていたため対応は早く、清洲城からやや離れた浮野という地に陣を張り、織田信賢を迎え討つ形となった。
「申し上げます!
織田信賢勢、総数約三千!
清州へと向かっております!」
早馬の知らせを聞いて浮野に陣を張る信長とその家臣団は一つ息をついた。
「思ったより兵を集めましたな」
「我らは二千
南の三河との国境の守りも考えればこれ以上を動員するのは少々厳しいですな」
「そうなれば三千も率いてくるとなれば総勢か
北側に位置している奴らは美濃との国境の守りをどうしておるのだ?」
想定以上の兵力が動員されたことにより少なからず信長の家臣団は動揺していた。
「考えられるとするなら、織田信清殿か」
織田信賢と同く、信長の親戚にあたる織田信清。
彼もまた信長と信勝の兄弟での家督争いの時は信勝側に立っていた。
そして信勝敗北後はこれと言った動きはないものの、関係の修復も行われていないことから立場上は敵対関係にある。
その織田信清の居城である犬山城は織田信賢が居城にしている岩倉城よりもさらに北に位置している。
つまり織田信清が美濃との国境の守りを一手に引き受けていると、織田信賢は総力を持って信長のいる清洲城に攻め込むことができるのだ。
「しかしそうなれば信清殿がこちらに兵を回す余裕はないはず
目の前の三千を打ち破れば戦いは終わりになります」
敵方は投入できる全ての兵力を投じてきた。
その全力を賭した一戦に全てを懸けるというのは、実力が劣っている者の選択としては間違っていない。
「ならば三千の兵をいかにして打ち破るかでございますな」
「それならばこの勝家に先陣をお任せくだされ
温情により助けられたこの命の御礼にこの一戦、我が力を賭して必ずや勝って御覧に入れましょう!」
柴田勝家が自軍よりも数の多い敵と戦う戦場で生き生きとした表情を見せている。
彼にとって戦いこそが最も自分の力を発揮できる場所であり、その機会を活かすことで助けられた命に対するお礼ができ、さらに自らの主君の出世にも多大な貢献ができる。
柴田勝家にとってこの一戦の勝利とはとてつもない意味を持っており、勝利を実現させることに対して並々ならぬ思いがあるのだった。
「うむ、ならば・・・」
信長が先陣を柴田勝家に命じようとしたのかはわからないが、彼が何かを言おうとしたその瞬間、本陣に再び早馬が駆け込んできた。
「申し上げます!
織田信清殿より書状が届きました!」
「なに?」
敵である織田信賢の背後を固めている織田信清からの書状。
何が書かれているかによって状況は二転三転する可能性もある。
信長は素早く早馬から書状を受け取り、書かれている内容に目を通す。
「殿、信清殿は何と?」
届いた書状の中身が気になる家臣団の者達は、信長が手紙を読み終わるのを待てずに質問してしまうなど、そわそわしているのがよくわかる。
「・・・信清が、信賢軍の背後を突くそうだ」
「なんと!」
届いた書状には信長に味方するという旨が書かれていた。
そして作戦としては信長軍が信賢軍を引き付け、援軍としてやってきた信清軍が信賢軍の背後から襲い掛かるというものだった。
「皆はどう思う?」
信長は家臣団に意見を問う。
「これは怪しいかと
我らの動きを封じ、合流して一気に力攻めを仕掛けて来るやもしれませぬ」
「しかしこれが事実だとすれば我々は少しの間耐えれば簡単に勝つことができる
信清殿の書状に反する動きを見せれば、味方となり得た信清殿をみすみす逃してしまうかもしれぬ」
織田信清の真意はわからない。
事実であれば渡りに船であり、偽りであれば一気に危機に陥る可能性も否定できない。
真偽に加え伸るか反るかで状況が大きく変わってしまう。
信長は難しい選択を迫られることとなった。
「殿、伸るか反るかも重要でございますが、我らは我らで戦えばよろしいかと」
林秀貞が自らの意見を述べ始める。
「信清殿が我々を欺くためにこのような書状を送ったとするならば、安易に信じるのは危険すぎまする
しかし事実であった場合、信清殿の軍と連携が取れずにいたずらに消耗してしまうことになります
ならば信清殿の申し出を受けつつ、我々は我々で戦えばよいのです
信清殿は引き付けろとは書いておりますが、堅陣を張って守りを固めよとは申しておりませぬ」
信清の申し出を受けつつ、しかし信長軍は自分達が最も戦いやすいように戦う。
そもそも数が多い信賢軍を迎え討つ形になる信長だ。
ただ受けに回っているだけでは勝ち目など到底見えてこない。
信長軍はこの戦いで信賢軍を打ち破る気で野戦に挑み、勝利のための一手に信清がどう出るかということを見ながら戦うことで、最悪の事態に陥っても状況を立て直しやすいようにしておく。
それが林秀貞の考えであった。
「なるほど
よくわかった
秀貞の申す通りにしよう」
信長は林秀貞の申し出を受け、各々に告げる。
「先陣は勝家に任す」
「はっ!」
「可成と盛重両脇を固めよ
長秀と秀貞は後方から掩護せよ」
「かしこまりました」
「後は状況に応じて各々の判断に任せる
頼んだぞ」
軍議が終わり信長の家臣団の諸将はすぐさま持ち場に戻って行く。
この時、信長の意思と家臣団の思いには食い違いが生じていた。
信長が各々の判断に任せると言ったのは、自らが詳細な戦略を立てることができないために家臣達に丸投げをするために言ったのだった。
しかしそれを家臣の諸将は、自分達に細かい裁量が与えられていると受け止め、それが信長に信頼されているという思いにつながる。
さらに最悪の事態に陥った時も各々の判断が重要であると言ったように受け取ったことにより、主君がその命を家臣達に預けたという共通の認識があった。
主従の間での意思の食い違いは悪いケースを生むことが多い中、今回の戦いにおいてはそれが家臣団の士気を高める効果を偶然生むという、思いもよらないところから大きなプラス要素となって信長軍を後押ししてくれるのだった。
信長軍が信長のいる本陣の前に柴田勝家を最前線に置いた守りながらも攻められる布陣で信賢軍の侵攻を受けて立つ。
対する信賢軍は数的有利を前面に押し出して短期決戦で勝負を決めるつもりなのか、布陣などの拠点設営もそこそこに早々と戦いが始まった。
序盤は数的有利の敵の攻撃を受ける信長軍がやや押される形となるのだが、柴田勝家や森可成のような猛将の奮闘に加え、丹羽長秀や佐久間盛重や林秀貞などが連携を取って見方を援護することで穴を一切作らず、数的有利が唯一勝っている点である信賢軍に押し込ませることなく耐えきる。
数で一息に片を付ける予定だった信賢軍は当初の予定が崩れたのか攻撃する部隊の連携に綻びが生じ、その弱った点を重点的に信長軍が攻めたことにより数的有利はあってないものとなった。
戦況は信賢軍有利から拮抗する形になり、徐々に信長軍が押し始めていた頃、とうとう問題の織田信清率いる千の部隊が織田信賢軍の背後に姿を現した。
援軍の到着だと湧く信賢軍は一気に攻勢を強めようと前方に兵を増やすのだが、それにより手薄となった背後から突如信清軍が信賢軍を襲撃し始めた。
想定外の襲撃を受けた信賢軍は混乱し、総大将の信賢は早々に戦いを放棄して敗走。
率いられていた兵は散り散りに逃げて行き、戦いは始まってからあっという間に決着となったのだった。
「はっはっはっ・・・
いや、大勝利とは実に喜ばしい」
敗走した織田信賢の後を追うように岩倉城へと攻め寄せた信長軍。
そこには信賢を裏切って信長についた信清の姿があった。
「信清殿、此度の助力感謝する
しかしなぜワシの方についたのか・・・」
信長と信清はそこまで仲が良かったわけではない。
信清は兄弟での家督争いの際に弟の信勝を支持し、それ以降敵対する立ち位置にいた。
それが一転して信長の味方をしたのだ。
信長だけでなく、信長の家臣団もその動向に様々な考えを持って疑り深く注意深く動向い目を光らせていた。
「尾張はすでに信長殿を中心にまとまりつつある
弟の派についたのはそこで尾張がまとまると考えた故のこと
しかしそうはならなかった、ならば考えを改めるのは何もおかしなことではなかろう」
信清は信勝を支持していたが、その信勝が負けたことを踏まえて次はどうするべきかを考えていた。
その答えが信長に敵対し続けず、信長を中心に尾張をまとめるというものだった。
信賢は将軍家からのお墨付けである尾張守護の座を持つ自らを中心に尾張をまとめたかったようだが、そもそもそれができるのであれば信勝を頼りにすることもなかった。
信賢に尾張をまとめる力はないと判断した信清は、信長についた方が尾張をまとめるのにも自らの保身のためにも最良の結果が得られると考えたのだ。
「岩倉城を攻め落とし、尾張を一つにまとめようではないか
はっはっはっ・・・」
信清の笑い声が信長軍本陣に響き渡る。
信清はすでに信長の勝利を信じて疑わず、信長もまた勝利を目前にした状態。
岩倉城に籠る信賢軍はもう残りわずかであり、力攻めだろうが籠城する相手との持久戦だろうが、どちらであろうとも勝利はほぼ動かない。
どのような采配をして岩倉城を陥落させるかは信長の判断一つに委ねられるのだった。
浮野での一戦を終え、岩倉城を包囲した信長軍。
そこから約二か月の時が経った頃、信長は清洲城で政務に励んでいた。
「・・・それで、岩倉城はまだ粘っているのですか?」
「ああ、意外としつこいらしい
ひとまず包囲を続けて降伏させるように言ったが、ここまで長引くとは正直思わなかったな」
政務に励む信長の傍らで濃がその補佐に当たる。
約二か月前に岩倉城を包囲してから、籠城側は消耗しているのは間違いない。
しかし頑なに降伏をしようとはしなかった。
「勝ち目はないであろうに、何故降伏せぬのか・・・」
紙に筆を走らせながらも、信長は籠城を続ける岩倉城のことが気になって仕方がない。
「力攻めはしないのですね」
籠城をしたまま頑なに降伏しない信賢。
このまま戦いが長引けば兵達の士気や、国外に対する守りにも影響する。
戦いは短いに越したことはない。
「力攻め・・・か
争っているとはいえ、遠縁であるとはいえ、親族であり血縁だ
簡単に討てばよいという話でもない」
信長は自らの血族や親戚筋に対しては寛大な対応をしている。
謀反を起こした弟の信勝も一度は許しており、敵対したからといって容易に殺すというのは彼の考えにはそぐわないのだろう。
更に親族殺しは戦国時代ではそう珍しくはないとはいえ、弟を殺した後に立て続けとなれば信長の風評にも影響する。
濃もまた、力攻めを心から賛成できない。
「では、降伏するように説得してみればいかがでしょうか?」
「それはもうにやっている
しかし信賢は頑なに動かぬ」
「それは条件が悪いからでしょう
信賢殿だけでなく、城内にいる全ての者を殺さない
それくらいの約束が必要かと思います」
そもそも信賢を殺す気が信長にはない。
ならばその考えを相手に交渉材料として見せることで心を動かそうという作戦である。
降伏と引き換えに城内にいる全ての者の命を助ける。
ただ闇雲に相手が屈するのを待つよりも、力攻めでより大きな被害が出るよりも、無血開城ほど良い選択肢は他にはない。
譲歩をしていないが譲歩をしているように見せ、相手には頑なに抵抗したためにその譲歩を勝ち取れたと思わせる。
そうすれば抵抗する者達の面子もある程度保たれ、全員にとってそこまで悪い結果で幕引きとはならない。
「なるほど・・・
その案は悪くないな」
信長は立て続けの親族殺しの悪評を免れ、信賢の助命が成立し、城内にいる者も攻めている者も大きな被害は出ないまま終わり、信長の勝利で尾張統一がなされる。
最上の結果を導き出すのは何も戦に勝つことだけではない。
「よし、では早々に降伏を促す書状を送るとしよう」
信長は今行っている政務を一度止め、新たに取り出した紙に筆を走らせる。
そして書状ができるとそれを懐にしまい、スッと立ち上がった。
「殿、どちらへ?」
「岩倉城へ行ってくる」
「殿自らでございますか?」
「そちらの方が信賢も降伏しやすかろう」
「書状だけでよろしいかと思いますが、親族想いの殿らしいですね」
親族により良い状況で降伏を促すためだけに信長が岩倉城を包囲する信長軍のもとへと向かう。
信長自らがその書状をしたためて岩倉城へと送りつけるということは、進退窮まっている信賢に最後の降伏のチャンスを与えることにもなる。
これで降伏しなければ岩倉城を攻め落とす他なく、それだけは避けたい信長は自らがしたためた書状と自分という存在を用いて信賢を降伏させなければならない。
「サル!
馬を!」
部屋を出た信長は大声を出した。
そして少しの間をおいて一人の男が走ってくる。
それは稲生の戦いの時、民衆の動きを教えてくれた農民出身の草履取りの男だった。
「おや、馬引きに出世されたのですか?」
「は、はい!」
主君とその妻を前に緊張した面持ちを見せる元草履取りの藤吉郎。
この時代の農民は田畑を耕して米や野菜を作り、年貢として領主に収めるというのが基本的な生き方だ。
勉学などする余裕もなく、国によれば男手は戦に駆り出されて人手不足になるなどということも珍しくない。
それなのにここにいる藤吉郎は農民出身であるにもかかわらず目端が利き、頭も悪くない。
信長は藤吉郎のそんなところを気に入ったのか、草履取りから馬引きに出世していた。
「以前は臨時で台所番もしておりましたね
あの時、商人の不正を暴いたのは実に清々しい気持ちでした」
「も、もったいないお言葉、ありがたき幸せにございます!」
濃が藤吉郎の功績を笑顔で評価する。
台所番とは薪や米の出納を管理する役目で、藤吉郎はその役目に就いていた時に商人が不正に多く織田家から金銭を得ていることを突き止めた。
織田家に薪を売りに来た商人に薪の数が正しいのかどうかを問い、商人が正しいと言った後に本数を商人の目の前で数え始めたのだ。
それも数えた後に薪には縄を結んで数えた印として、薪の本数を全て数えた後に注文した数に足りていないにもかかわらず、注文した数の金額が請求されていることを商人に突き付けたのだ。
「あの商人とは今もやり取りがありますが、あなたのおかげで以前より良い取引ができているようですよ」
不正を働いた商人とは引き続き取引は続けているが、不正を行ったことを理由に取引額を織田家優位に話を進めることができた。
不正を暴かれてしまった商人はそのことが知れ渡れば他でも商売ができなくなる。
口止めも兼ねての割引価格を求める織田家の要望に応えざるを得ないのだった。
「今後とも、織田家のために力を尽くしてくださいね」
「は、はいっ!」
深々と頭を下げる藤吉郎は主君の妻に褒められたことがよほどうれしいのか、その表情は緊張からにやけ顔に変わっていた。
「・・・そろそろよいか?」
蚊帳の外になっていた信長がもう話は済んだのか、と二人に問う。
「はい
では岩倉城の件、良い報せをお待ちしております」
濃に見送られる形で信長は藤吉郎が引く馬に乗り、護衛の馬廻り集を率いて岩倉城へと向かった。
この数日後、信賢は降伏を受け入れて岩倉城を開城し、信長と信勝の兄弟の対立から始まった尾張国内の内戦はようやく終結することとなった。
岩倉城陥落後、織田信賢は命を助けるが金輪際終わりには来ないという約束の下で、尾張を追放される形で助命が成立した。
その取り決めと尾張岩倉城が信長の手に渡った後、清洲城で戦勝の宴が催された。
「いやぁ、めでたい!
尾張一国の統一は織田家のこれからの繁栄の兆しではないか?
はっはっはっ・・・」
信清も勝利に貢献したことで戦勝の宴に呼ばれていた。
その宴席の場で信清は盛大にはしゃいでいるのだった。
「はっはっはっ・・・
しかし此度の信賢軍を打ち破る戦、我々の助力も勝因の一つ
今後の所領や政は信長殿にお任せいたすが、今からどのような褒美が届くのか楽しみでしかたない!」
信清は宴の席で自分の助力にが勝利の要因であることや、今後の尾張国内の所領の配分は信長の一存で決められるが大いに期待できるなど、信長軍に加わった理由をことさら当然のように話していた。
その話の内容は当然信長だけでなく宴の席に同席した濃、そして信長に付き従う家臣d何の面々もしっかりと聞いていた。
信清の自分本位の言葉にその場の空気が悪くなり始めるのだが、その雰囲気を即座に察してか、濃が酒を手に信清の盃に酒を注ぎに行く。
「信清殿
尾張国内の所領を決めるのは殿のお役目ですが、この度のご活躍は確かに我らにとって喜ばしいことでございます
殿にはよくよく話、驚くような結果となるよう考えて決めていただこうと思います」
「おおっ、帰蝶殿!
さすがは美濃の蝮と呼ばれた斎藤道三の娘
よくできた女子だ!
はっはっはっ・・・」
戦勝の宴では信清は終始ご機嫌であった。
そして後日、濃も約束通り驚くような結果を信清へ、信長の口から伝えさせる。
織田信清から犬山城を接収し、信清は尾張を追放する。
戦勝の功労者には似つかわしくない驚くような結果となるのだった。
尾張統一後、清洲城にて相変わらず政務に勤しむ信長の側に、これまた相変わらず濃の姿がそこにはあった。
尾張を統一したことにより政務の忙しさは倍増。
尾張全域の隅々、織田家の支配下となっている全ての領地が政務の対象となっている。
更に同盟が破たんした斎藤家の美濃や今川家の支配領土である三河など、国境の守りや防備に係わる最終決定権も信長にある。
その認可を求める書状や意見を伺う書状など、毎日のように難しい内容に目を通さなければならないのだった。
「やれやれ・・・
尾張の大うつけと呼ばれていた頃が懐かしいな」
政務など放棄して城下町へと繰り出して遊びほうけていた。
そんな時とは打って変わって国をまとめるのに忙しい日々を送っている。
同じ人間の人生とは思えないほどの変わりようだった。
「まるでここが人生の終着点であるかのような物言いですね」
政務をしながら感慨深く物思いにふける信長の独り言。
その独り言を濃は聞き逃さなかった。
「殿にはもっと大きな存在になっていただかなければなりません」
「前にもそんなことを言っていたな
ワシにその大きな存在が務まると思っているのか?」
「やってみなければわかりません、というのが正直なところです
ですが私は全力で支えますし、私だけでなく多くの方々が同じ思いで殿に仕えております
なのに現状で満足されては困ります」
濃は今川義元の上洛を防ぎ、歴史を変えるという譲れない目標を持っている。
そのためには信長にもっと力を持ってもらわなければならない。
濃以外の家臣達には信長の出世こそ自身の喜びであり、信長が上へ行けば行くほど下の者達も上へと上り詰めていくことができるという思いがある。
最上位が現状に満足してその位置で停滞してしまえばそれ以上の発展や成長は望めない。
故に家臣達は信長がさらに大きな存在となることを望んでいる。
「そう言われてもな
領土拡大をするにしても、美濃の斎藤家か三河の今川家を相手にしなければならない
今以上と言われてもできることはなかろう」
その時、政務のために書状に目を通していた信長が一つの書状の一文に目を止めた。
「ん?
金の出納にまた何かあったのか?」
報告書となる書状には金が記録してある以上に減っていることが記されていた。
藤吉郎が台所番をした時に商人の不正を暴いて以降、織田家家中では様々な資材や食料や武具や金の事細かな入出を記録して厳格に管理していた。
それなのにもかかわらず、金の消費が記録以上になっている。
「管理が甘いのか?
何か策を講じる必要が・・・」
「その必要はないかと」
「ん?
何故だ・・・と、もしや帰蝶
何かしたのか?」
金の入出の異常に対する対策を濃は必要ないと間髪入れずに言い切る。
そのあまりの返答の速さとどこか自信に満ちた表情に、信長は彼女が金を何かに使ったために数字が合わなくなったと瞬時に察した。
出納の数字が合わない、その犯人は濃で間違いないようだ。
「はい
少々、必要だったものですから」
「必要?
いったい何にだ?」
「そのうちわかりますよ」
濃のもったいぶるような物言いに信長は焦らされている思いで彼女の次の言葉を待っていた。
しかし濃は明確に何に使用したかを答えなかった。
「帰蝶、勝手に金を使ったということは許しがたいことで・・・」
信長が濃の勝手に苦言を呈そうとしていた時、騒がしくうるさいほどの足音が部屋へと近づいてくる。
そして勢いよく開かれた障子の向こう側には、息を切らせた佐久間信盛がいた。
「信盛、どうした?」
「と、殿・・・
使者が・・・
使者が・・・参りました・・・」
息切れを起こしている佐久間信盛は、荒い呼吸の合間に言葉を何とか発していく。
「使者?
いったいどこから・・・」
「おや、よさ過ぎる頃合いですね
ちょうどその話をしていたところです」
「帰蝶?
どういうことだ?」
状況を飲み込めない信長は濃の方を見る。
しかし濃は答えずに得意げな表情を見せるだけ。
よく事態が理解できていない信長は佐久間信盛の呼吸が整うのを待ち、落ち着いて話ができるようになってから事の詳細を聞く。
「京より将軍、足利義輝公の使者が参っております!」
「・・・な、なに?」
信長は驚きのあまり大きな声を出してしまう。
そして濃の方へと視線を向けた。
「帰蝶、どういうことだ!」
「どういうことも何も、将軍家へ一筆を添えて少々出仕したまででございます」
「一筆を添えて出仕?」
濃は信長に黙って織田家の金を将軍家へと送っていたのだ。
織田家の金の出入りの計算が合わない原因はこれでわかった。
しかし問題はその金と共に添えた一筆であった。
「いったい何を書いたのだ?」
「大したことではありません
将軍家のために織田家は持てる力を尽くす、ということ
そしてそのために将軍家より正式に織田家当主織田信長を尾張守護へと任じていただきたい、と書いただけです」
濃の言葉に信長も佐久間信盛も言葉が出なかった。
尾張守護の座は織田信賢を追放した時点で実力の上では信長のものとなっていた。
しかしそれでは実力はあると認められても権威というものがない。
よって濃は将軍家に書状を送り、織田信長は尾張守護であると正式にお墨付きを与えてもらおうと動いたのだ。
「将軍家は十二代将軍様の代でほぼ力を失っている状況です
ですが十三代将軍足利義輝公に代替わりしてからというもの、将軍家は周辺の大名に働きかけるなど順調に権威を回復しております
そんな将軍家は今、頼りになる大名家とすぐに動かせる金銭、この二つを特に欲しています
今回、織田家からの話を将軍家が断る理由はございません
つまりこの話を将軍家へとした時点で、織田家当主織田信長は尾張守護となることが決まったようなものなのです」
織田信賢は尾張守護の座についていたというだけで大した実力もないのに三千もの兵力を集めることができた。
一方で信長は周囲より実力があると見られており、そこに将軍家お墨付きの権威が加わればもっと大きな力を持つことになる。
「殿はこれより織田家当主というだけでなく、尾張守護の織田信長となるのです
尾張全域を治め尾張に居を置く殿は名実ともに尾張の国主
これより殿のことは一部家の当主としての呼称の殿と呼ばず、一国を治める国主の呼称である『御館様』と呼ばせていただきます」
突然のことに信長は驚きと困惑と緊張など多くのことが合わさって言葉が出てこない。
先に我に返った佐久間信盛が「おめでとうございます!」と声をかけるも、信長はしばらく無反応のままであった。
その後しばらくの時を置いて我に返った信長は、足利将軍家より使わされた使者と会って尾張守護に任じることが決まった旨の報告を受ける。
そして後日京の都にある将軍家の御所へ訪れ、そこで将軍本人より直々に尾張守護に任じられることとなる。
突然のことに混乱しながらも、使者からの言葉を受けて尾張守護の役目を受けることを返答して、尾張守護となることが内定。
濃が素早く動いたこともあってか、信長は尾張統一して間もなく名実ともに尾張国主として尾張守護の座に就き、押しも押されもせぬ一国の国主となるのだった。
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