第2話 ウユニ塩湖

2,ウユニ塩湖



そんなこんなでいじめられっこになった私は、自分の家に帰った。

お父さんとお母さんは両方共働きで家にはいない。

最後に喋ったのはいつだっけ?


まぁいいや。家に付き、ドアを開けると小さくてフワフワしたのもが野球のボールのように飛んできた。

「「おかえり~~~!!!!」」

「エキュールただいま。」

フワフワしたものは私の手に頭をこれでもかとこすり付け私が帰還したことに体全体で喜んでいる。

この子の名前はエキュルイユ。長いので略してエキュール。

シマリスだ。


私は、自然に愛されるという能力でこの子と喋ることができる。

この子だけじゃないけどね。

家の中に入り、ベランダの窓を開けるともう一人私の親友がいる。

名前はジューラ。アワブキと言う名前の木だ。

「ただいま」と言うとジューラはそよそよと揺れる。


木は動物と違って、話すというよりは心に気持ちを伝えてくるという感覚だ。

一方動物の方は、私の頭の中に直接語りかけてくる。

私は生まれ持ってこの能力があった。

理由は私の先祖にそういう人がいたからだとお母さんは言っていた。


でも、お母さんはジューラたちと喋ることはできない。

お父さんは私が動植物と喋れると言っても一切信じようとしない。

私の頭がおかしくなったんじゃないかとおもって病院に連れて行こうとする始末だ。

まぁ、私にはこれ以外にもいろいろと能力が目覚めるのだが、それはもっと後の話。






○ ○ ○



楽しかった出来事が走馬灯のように流れる。

本当に楽しかったな。


君の声がかすかに聞こえる。

泣き叫ぶ声が。

私はいつ死ねるのだろう。







○ ○ ○



セミのやかましい鳴き声と強い太陽の光によって私は起きた。

目を開けるといつもの天井が見える。

横にはいつも通りエキュールが寝て…


いない?

私はベットから飛び起き探す。

いない、いない!

「エキュール!!」

家を探し回っているとジューラの所にいた。


「心配した…何でここに?」

そういうとエキュールはこっちを心配そうに向いて、

「僕は君のことを信じているよ。君の最後のことも…

でも、君はできるよね。君は将来君の命を懸けてでも守りたい人が出来るんだ。

いつでも僕は君を助けるよ。その時になったらまた喋れるようになるかm…。」


エキュールは急に喋らなくなった。

と言うか私にエキュールの言葉が聞こえなくなった。

「私の最後?私の命を懸けて守る人?

 どういうこと…わからないよ。

私は誰を守ればいいの?誰も守りきれないよ…。」


私が呟くとエキュールは私の肩に乗り私の頬に顔をこすり付けた。

もう声は聞こえないけど、大丈夫と言っている気がした。

「ジューラ 貴方はエキュールの言っていたことわかる?」

そう尋ねるとジューラは首を振り、枝を私に伸ばしてきた。

「大丈夫、そう言いたいの?」


みんな大丈夫だというけれど私にはわからない。

私には何も。




私は立ち上がり朝の準備をし始めた。

準備なんて忘れてエキュール探しに専念してたもんだから、結構急がなくてはいけない。

時計を見るともう7時40分。

いつもならもう家を出れるようになっている時間だ。


(朝ごはん作る時間あるかな?)

毎朝のご飯は私が作っている。

お母さんたちには作ってる時間なんてないから自分で作るしかないのだ。

急がないと。


ご飯をやっと食べ終わって時計を見るともう8時。

もう家を出なくてはならない。

髪をポニーテールにして重いバックを取る。

その時、バックの紐が椅子に引っかかり私は宙に浮く。


「うわっ!!」ドンッ。

目の前が白くなり、世界が回っている。

早く学校に行かなくちゃ…




  


 あれ?目を開けるとそこは…


どこだ?


いま、確かに言えるのは私の家ではないってことだけ。

かすかに聞こえる鳥の声と風の音。

土の香りもする。

ゆっくり体を起こすとそこは…


やっぱりわからない。

今分かったのは外にいるってことと、

空が不思議なほど青いこと、

それと 何にもないってことだけだ。


外なのに、建物も木も人だってない。

ただ地平線が広がっていてそれを見ていると地球は本当に丸いんだなと実感する。

太陽はあるのに熱くはなくて、風の音はするけど風はない。

 「えぇ?」今更気づいたが、私がさっきまで着ていた制服は白いワンピースに変わっていて、白い靴は無くはだしだった。


本当に今更だが自分の肌を触ってみる。

一切感覚がない。

言葉で表現してみると、幽霊になったみたいとしか言えない。

それに、今気づいたが風はあるみたい。

風が吹いてる感はないが、髪の毛と服がそよそよとなびいている。


私が茫然としていると後ろから急に声が聞こえた。

「ねぇ、」

ちょっと低めの声だが、人を見下している感じが見なくても分かるが私は振り向いた。

「えっ…」次の瞬間私は言葉を失った。

これは何だろう。


顏はネコだが白い翼が付いている…

翼猫っていうのだろうか。

体も真っ白で目はオッドアイ。

右が赤、左が青?ううん、どちらかと言うとエメラルドグリーンだ。

ぷかぷかと浮き、私を見下ろしている。

…糸でつられているわけじゃぁなさそうだな。


私の考えていることが全部わかっているように、悪戯な笑みを浮かべ私の周りをくるくると回る。

正直イラつくな…。

私は思い切って話しかけてみることにした。


「ねぇ、あなたって何者?」

何で浮いてるの?何で私に話しかけてきたの?

っていうか隠れられるところなかったのにどこから出てきたの?

色々聞きたいことは山盛りだが、一斉に喋って馬鹿だと思われてあの顔でバカにされるのは私には耐えられない。


だから一個ずつ聞いていくことにした。

だが帰ってきたのは答えではなく…

「誰だと思う?」

…へ?

質問したのに質問で返される。

(わかんないから質問したのに誰だと思うってないでしょ?)


「あの、わかんないから質問したんだk」

「誰だと思う? 俺。」

話を途中で切られ、やっぱりィラッとするしこういう生き物ってオスメス有るんだなと思った。

「だってあなたが私の知っている人かなんてわからないじゃない!」

私は正論を言ってやった。

イラつく猫は空中で頬杖を付き、ちょっと黙った。

そして「これぐらい教えないとわかんねぇよな」と独り言を言った。


それからまた黙り、こう言った。

「お前の知っている人っちゃ そうだし… お前が知らない人って言うんだったら知らないんじゃねーの? 俺はおまえのことよく見るけど。」

やっぱりわからない。

というかこの人の正体を知って私に何の得があるのだろうかと思い始めた。

私は開き直るのが得意だ。

だって、途中で考えるのが面倒になったら開き直っちゃうんだもの。

でも、あの人が知っているのに私があの人の正体をしらないのは少し、少し癪に障る。

それに、今喋れる相手はこのばか猫しかいないんだから。


「わ た し は、あなたみたいな羽生えている心の狭い猫のことなんて知りません!」

はぁ、この世界のどんな馬鹿だってあんたみたいのを見たら一生忘れないっての。

返ってきた答えは考えもしなかったことだった。

「まぁ、そーだろうな。だって俺人間だし。」


あぁ?意味わかんない…

人間?この馬鹿翼猫が…

それも私の知り合いで、こんなに男でイラつく人…。

「私の知り合いにこんなうざい人居たっけ?」

私が独り言でつぶやいた言葉を猫はしっかり聞いていた。

そっか、猫って耳良いんだよな。


「あっそ。」

なんか思い出したような気が…

まぁ良いか。


「あぁ、そういえば私家で転んで起きたらここに居たんだけど

学校があるの帰らせてよ。」


あのときもう8時だったんだ。

今頃もう8時10分になってるよ。

まぁ、この猫のことだから知らなーいだとかどうしたら帰れると思う?とか

言うんだろうな。

「あぁ、帰るのね。はいはい送って行ってやりますよ。」


えぇ~!急に優しくなった?

まぁ、別にいいんだけど急に言われて力が抜けるというか…

「てか、ここどこだし!帰れるのなら先に言ってよ!」

本当に空と地しかないところなんてこの日本にはない。


「帰りたいなんて一言も言われてないから。」

イラッ

ここを外国でたとえると…

ウユニ塩湖が一番しっくりくる。

それぐらい何もないのだ。


本当に奇妙で美しいところだが一緒にいる人に問題がある。

私は好きな人なんて出来たことないが、たぶん好きな人ときたい所は?

と聞かれたらここと言うだろう。

だけど、人を好きになる予定もないしどんな気持ちかわからないから

ここに来たいと思わなくなるかもしれないが…


いまは、たぶんここに来たいと言うだろう。

私が景色に見とれていると「帰りたくなくなったか?」と猫がにやにやと笑う。

「どーせ、一緒にいる相手ってあんたでしょ。あんたと居るのはもうこりごりなの

早く帰らせて、学校に遅れる。」


「あっそ。まあお前は好きな人と来たいだろうしな。」

猫は私の顔の前に来て私の鼻を肉球でつついた。

「はぁ、あのねぇ私には好きな人なんてこれまで一回もできたことはありません!」

そうだ、私は好きな人がいないんだ。

他の女子たちはきゃあきゃあ言いながら恋バナを楽しんでいる。

私は生まれてから十数年。一回もできたことがない。


というか、人との接触がない。

唯一好きになった異性はエキュールただ一人!!

(ジューラは長い付き合いだけどオスかメスかいまだに不明)

女子たちに好きな男子は?と聞かれ家のリスだよと言ったらちょっと引かれた。

「あのねぇ、向日葵ちゃん私たち人間の男の子のこと言ってるんだけど…」

優しく教えてくれた…


人間じゃなきゃダメなんて私に聞くときに言って無かったじゃん!!

私は気づいていなかったが、相当怒っている顔をしていたようで

「なんか悪かったな…」と苦笑いをされた。

「はぁ、じゃあ帰してやるから動くなよっと…」

猫が腕を振り上げると体がふわっとした下を向くと

「ふぇ!?体が浮いて…」

私がじたばたしていると猫は顔をしかめ。

「縛るぞ」と一言言った。

「行くぞ…     また後でな。」

?いまなんか…

「うわぁ!」






○ ○ ○




なんで、なんで、あの時…


俺はあの時出来たのに 救えたのに。



やっぱり俺は…


人を不幸にするだけなのか




愛してるって失ってからわかってもどうしようもねぇな…








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