第3話 正体
おい、起きろよ・・・・
ぉぃ、
「起きろってのバーカ。」
急に頭をたたかれ私は飛び起きた。
ここは、学校?
横を見て私をたたいた犯人を見ると、蓮だ。
なんで、この人に頭をたたかれなきゃならないの。
「! ってかバカって何よバカって。
少なくとも貴方と同じくらいは勉強できるし…」
何で私はあまりしゃべったことのない人とこんなに自然に話しているの?
何か覚えがあるような…
「あっそ。」
「___あぁ!!あなたまさか。」
私はこれまで出したことのない大声をだし、みんなこっちを見てくすくす笑っている。
蓮は小声で「違うとこ行くぞ。」と言い、私たちはみんなに見られながら教室を出て
屋上に行った。
「馬鹿!そういうところが馬鹿だって言ってんだよ。」
蓮は私に怒る、なによあなたのせいじゃない…
「で?あなただったの、あの翼猫。」
私が言うと蓮はポリポリと頭をかく。
こいつは面倒だと思うと頭をかく、頭の片隅にでも置いといてやろう。
数秒してから蓮は答えた。
「やっとわかったか。」
やっとわかったかってわかるはずないじゃない。
その意を込めて蓮を見る。
私に見つめられ蓮はいたずらににやっと笑う。
まるで、もっと自分に聞きたいことがあるんじゃないかとでもいうように。
仕方がないから聞いてあげる。
「ねぇ、どうやって猫になったの ていうかどうして私をあんな場所に。」
「んっ?」
急に手で口をふさがれとても驚く。
蓮の目線を見るとそこには
(麻綾。なんでいるの?
ここの屋上は誰も来ないはずなのに…)
「ねぇ、蓮。あなたなぜこの子と一緒にいるのかしら?
それにこんな人気の少ないところで…
まさか!あなたやましいことでもしていたんじゃあないですわよね。」
「わたくしに黙って浮気ですの?」
麻綾に黙ってって、やっぱり付き合ってるの?
私がそう考えていると隣で舌打ちが聞こえた。
「おまえさぁ。マジでうざいんだけど。
俺お前と付き合ってんじゃねーし、こいつとはなんもねぇ
もしこいつと付き合ってたとしてお前に何の関係があんだよ。
浮気?はっ意味わかんねぇ。
死んだとしてもお前とだけは 絶対に付き合いたくねぇよ 。」
えっ?
私はゆっくり麻綾の方を見た。
あぁ、やっちゃった…
麻綾は両目にいっぱい涙を浮かべ顔をゆがめている。
今にも泣きそうだ。
「ぐすっぐすっ 蓮あなたのこと見損ないましたわ。
このことは覚えて居なさいよ 絶対に後で私に頭を下げることになるわ。
あんたのこと必ず 必ず潰してやるからぁ。」
麻綾は最後の言葉を言いながら走って行ってしまった。
なんか勘違いされたみたい。
上を見上げると(蓮の身長は167㎝ 私の身長は155㎝だから、見上げる高さになる。)
蓮はおなかを抱えて笑い始めた。
「ハッハッハ。やっぱお前よりバカなのあいつだわ。
許さないってよ、何をしてくださるのか楽しみにしておくわ。」
「で、今まで忘れていたけどあなたなんで猫になれるの?
気になりすぎてこれ以上じらされると夜眠れなくなりそうなんだけど…」
私はちいさい頃からそうだ。
気になることがあって朝まで寝れなかったことはよくあったことだ。
いまは当たり前だと思うようにしているけど、蓮の猫になるのは化学でも
解明できない。
自分のことだから、蓮は分かるだろうと思ってた。
「俺もわかんね。」
「えぇ、わかんないの?自分のことなのに」
私が言うと蓮はこういいかえしてきた。
「じゃお前は自分が何で動物とかと喋れるのか知ってんのかよ。」
あぁ、そう考えると自分も分かんなかった。
…え?待てよ 植物と心が通じることはこの前のことで分かるのはわかるけど
動物のことなんて一言も…
「…ねぇ、何で私が動物と喋れるって知ってんの?
この前のことじゃわかんないでしょ。
___もしかして、今より前にあったことある?
初めて会った時からずっと思ってたんだけど、ずぅっと昔に私と貴方ってあったことない?」
ほんの少し、蓮の表情が曇った気がするそして「さあな」と一言言った。
「俺が、動物と喋れるんじゃないかって思ったのは
さっきだよ。だって俺が翼猫になったとき俺と喋れるのなんて動物と喋れるやつしかいないじゃん。」
あっそっか。
ていうか、猫化したら普通の人と喋れなくなる欠点があるのね。
…じゃあなんで私の前に出てきたんだろう。
だってもし私が動物と喋れなかったら、意味なかったはずなのに。
まっいっか.
「ねぇ、あの翼猫になる必要ってある?」
良く考えると、他の人に自分の正体がばれない様にすることしかあれの意味なくない?
「俺だって猫になりたくなかったけど、これが生まれ持った能力じゃ仕方ねぇーだろ。」
これが生まれ持った能力?
「はぁ、もっといい変わり方あっただろうに。」
そらそうだな、あたしの生まれ持った能力は1つ。
1つは動物と心が通じ合う能力。
それと、途中で出来るようになった能力は通称神ノ夜想曲といわれる能力だ。
大雑把に言うと楽器を奏でる事で他人の精神を操る能力だ。
能力の感じが卑怯で好きではない。
まぁ、いざとなったら使うけど。
だから、音楽の時間とかはこの能力を出来るだけ制御しているけど、ときどき
クラスメイトが変な行動をとるのは私の能力のせいだろう。
本当にごめんね…
「蓮の能力はほかにないの?」
さすがに翼猫だけだと正直言ってしょぼい。
「ある。
だけど、教えられねぇのもあるけどな。
俺の能力はさっき教えたピロラグニィキャットまぁ、炎を吐く猫を従える事が出来て、自らが猫と同化し炎を操る事も出来る能力。
もうひとつはスカーレットリスキー、簡単に言うとダメージを受ければ受けるほど強くなる能力だ。」
意外と多いな…
でも、何で教えられない能力があるんだろう…
まさか、透視能力的なやましい能力が!?
まぁ、蓮に限ってなさそうだけど…
聞くだけ聞いてみよう、一応私の知っている人の中で初めての能力所持者だもん。
「で、なんで教えられないの?
なんかあるとか…。」
いつもは好奇心なんてないし、知りたいことなんてあんまりないのだけれど
この頃は色々あって知りたいことが多くなった。
だってふしぎなんだもの。
でも思った通り。
「はぁ、教えるわけねぇだろ。
教えられねぇっつってんのに教えるバカがいるか。」
いや、思った以上の言い草。
「貴方思う以上に口悪いわね。
私が聞いたのが馬鹿でした。」
私は蓮に背を向けて屋上の金網を掴んだ。
この小さな町が見える。
私たちはこれからどうすればいいのだろう。
蓮はともかく、私は普通の中学生にも超能力者にもなり切れていない気がする。
どちらも半分半分だし、動物と喋れるのはともかく人の精神を操るのは人間として卑怯だし、自分の思い道理にしようなんておかしいと思う。
なのにこんな能力が付いた。
私は私が嫌いだ。
いつも卑怯でいざと言うときに何も出来なくてダメなんだ。
だから___友達を 殺してしまったんだ
それも、ここで。
わたしはあの子を追い詰めた。
唯一の人間の親友を。
○ ○ ○
1年前。
ちょうど今の夏の頃。
陽炎が揺らいでいたあの日。
あの子は笑っていた。
とてもぎこちない笑みだったと今なら気づけるがあの時はあの子のことを考える余裕が無かった。
「幸せだよ。私は、今一番幸せだから 気にしないで。」
あの子の口癖。
顏はとても悲しそうだった。
体には痣とか傷があった。
家族にされたものだろうと予想は付く。
あのときだって、あの子のお母さんにあの子が殴られているとき私は止めなかった。
あの子はもう死ぬのかなとか考えながら茫然としていただけだった。
体が動かない、あんなに近かったのに。
あの子はいじめられ始めた。
体が痩せこけてみて居られないほどだったからだ。
私はあの子を避け始めた。
怖くなったのだ。
あの子が死のうとしていることも知っていた。
でも、止めなかった。
朝学校に行くと、さよならと私の机に紙が置いてあった。
私は悟った。
本気なのだと。
それで、死ねる場所は屋上しかないと思い、駆け出した。
走った、走った、走った。
途中で何回も転んだ。
血が垂れてきたけど、あの子の痛みと比べたら全然だった。
やっと屋上に来れた。
息を切らし、ドアによっかかる感じで開けると、そこにはあの子がいた。
あの子の名前を叫ぶと、あの子は驚いたようだった。
そして、これまで見たことのないほどの笑顔で言った。
「私は幸せだったよ。」って。
次の瞬間あの子は消えた。
すぐに警察が来た。
警察の話によると、 笑ってたんだって。
あの子…
私が見捨てたせいで、死んだんだ。
私は怖かった。
友達を失うことよりも、いじめられることが。
だからもう、友達は作らないようにしている。
でも、私馬鹿だからもしかしたら蓮と仲良くなれるんじゃないかなって思った。
だめね、また私のせいで蓮も。
私は呪われているから
だから、お母さんだってお父さんだってあんなになったんだ。
○ ○ ○
「高木 心か…」
急に蓮が話しかけてきた。
高木 心…
あの子の名前。
「そう、ここから
私の目の前でね。」
そういうと蓮は鼻で笑った。
「馬鹿だな。」
!?
私は思わず振り返った。
心のことを悪く言うのは許せない。
「なんで、何でそう思うの。
心は悪くない。
私が悪いの。」
蓮は顔をしかめた。
「自分勝手じゃねーか。
俺はそういうやつが一番大っ嫌いだ。」
蓮は急に怒鳴った。いつもの意地悪な笑みが崩れ、私を睨む目は悲しみとふがいなさが入り混じっていた。
「蓮?」
私が静かに聞くと蓮は髪をかき上げた。
「胸糞悪い。俺先に帰ってるから。」
蓮は屋上のドアを開け、階段を下りて行った。
(なんかあったのかな。)
私はそう思いながら、夏の蒸し暑い風を浴びていた。
教室に戻ると
いつもの通り女子たちがこっちを見てあざ笑ってくる。
もう慣れたものだ。
(心はこんなのよりもっとつらかったんだろうな。)
涙があふれてきそうになるのを必死に抑えながら私は胸を張る。
(弱いところなんて絶対に見せない。)
私はそう思った。
ふと蓮の方を見ると窓の外をぼーっと眺めてはため息をついていた。
遠目から見ると恋してる男子って感じだけど。
あいつにああいう顔は似合わないと思う。
って、あんまあの人のこと知らないけど…。
さよなら。
私の友達。
○ ○ ○
自分勝手か…
家出した奴が言うことじゃないな。
まぁ、家に戻るとかそんなこと死んでもしたくはないけど…
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