第15話 バルダッシュ攻防 1章 一回目の戦い 4

短いので臨時投稿です。明日は普通に投稿します。


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 屋根に出たマギオの民を、上空を舞っていた翼獣の背に乗ったアラクノイが見つけた。翼獣が一匹、アティウスの率いるマギオの民めがけて降下してきた。巨大獣から逃げるのに懸命だったマギオの民は気が付かなかった。いきなりレーザー銃の連射を浴びせられて、アティウスは直前に身をかわしたが、八人のマギオの民が屋根から転がり落ちていった。アティウスが身をかわしたのは本能としか言いようがなかった。いきなり背部に妙な気配を感じて、横に倒れ込んだのだ。そういう“感じ”をマギオの民は大事にしていた。

 二、三回勾配のきつい屋根の上を転がって、体勢を立て直そうとしたアティウスのほとんど目の前と言っていい距離に翼獣が浮かんでいた。長い舌を口からたらし、舌の先からぼたぼたと唾液が落ちていた。ぎらぎらと光る目がしっかりとアティウスを捕らえていた。その背中に乗っているアラクノイは、まったく表情の伺えない顔をアティウスに向けていた。アラクノイが手に持っている奇妙な棒を構えた。光の矢の鉄砲だ、アティウスは逃げようとしたが体勢が悪すぎた。屋根の上に手を突いて転がり落ちるのを支えるのがやっとだった。それでも一発なら逃げられるかも知れないが、アラクノイの光の矢を撃つレーザー銃は連発が効くのをアティウスは知っていた。


―やられる!


 アティウスは覚悟を決めた。アティウスの目の前で妙にゆっくりした動作で、アラクノイがレーザー銃の狙いを定めた。次の瞬間、翼獣の側頭部を青い光条が貫いた。翼獣は大きく身を反らせた。背に乗っているアラクノイが跳ねとばされて落ちていった。後を追うように翼獣も路上に落ちた。

 アティウスは光条が発射された方を見た。五百ヴィドゥーほど離れた建物の屋根の上に小さな人影があった。人影は軽く手を振るとすぐに見えなくなった。


「アティウス様!」


 すぐそばにシレーヌがいた。アティウスに呼びかける声が震えていた。


「いまのは、いったい・・・?」

「タギだ。またあいつに助けられた」

「タギが・・」


 シレーヌにはまだ事態が飲み込めないようだった。目の前でアティウスが殺されると思った瞬間、アティウスを狙っていたアラクノイが落ちていったのだ。安堵と不審の入り交じった感情が胸の中を渦巻いていた。アティウスが無事だったのが自分でも信じられないくらい嬉しかった。


「行くぞ!」


 シレーヌが落ち着くのを待ってはいられなかった。アティウスを先頭に十人足らずに減ったマギオの民が全速で、まだ続いている阿鼻叫喚の虐殺の場から遠ざかっていった。

 


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