第2話 久しく歩く道
これは自分が実際に体験した話だ。
あれは、一般入試の後友人とゲームセンターを散策し、ルンルン気分で家へ帰っている時のことだった。
友人とは最寄り駅が違うので電車で別れた後普段ならバスに乗って帰る道のりをふと歩いて帰ろうと思いバス停を通り過ぎ家へ向かって歩いていた。
しばらく歩くと小学校の時に使っていた下校路にでた。
(この辺あまり変わってないんだなぁ)
(ここコインパーキングになる前何だったけ?)
そんな他愛のないことを考えながら歩いていた。
そこでふと思い出したのが
(そう言えばここにデ○ズニーのグッズが沢山置いてある家が有ったなぁ)
そんなことを思い出し左手にあるであろう記憶の中の赤茶色の三階立てくらいの家を思い出しつつ左手を見る。
次の瞬間、違和感を感じ一瞬遅れて得体の知れない恐怖が身体を覆い尽くした。
手には汗をかき、体は震え、舌は乾き、そして心が怯える。
まるで自分が孤児みなしごだと親に言われたような、まさに得体の知れない感覚。
(な、なんなんだよこれ!?)
今までに感じたこともない感覚に混乱するも確かに感じる恐怖。
そこで最初に感じた違和感に気付く。
窓ガラスがなく、小学生の頃にはデ○ズニーのグッズであふれていたその場所は何よりも暗く飲み込まれそうな暗さだった。いくら冬の五時半頃とは言え、此処まで暗いのには違和感が有った。
さらに目を逸らしたいのを好奇心で無理やり押さえつけ、さらに見てみると窓枠の周りが煤のようなもので黒くなっていた。
元々が赤茶色だったので薄暗くなっていた寒空の下では容易に気付くことが出来なかった。
(き、きっと火事が有ったんだ、そうに違いない。)
そう勝手に結論付けて足早に去ろうと一歩踏み出した瞬間、狙ったかのようなタイミングで「がたん」と木材の倒れるような音がした。
その音のせいで足を止めてしまう。
音源は左手の方。
今はほとんどやっていないが、保育園に通っているころから様々なスポーツをやっていたので直感なら鍛えられている。
その直感が「今すぐ立ち去れ」と大音量で警鐘を鳴らしている。
しかし、その場を離れることはかなわなかった。
何故なら左手に向けた視線の先、そこには真っ暗の中リングシリーズの貞子を彷彿させるような髪の毛の量の人影。
こんな事態だというのにストレートが恨めしく映る自分てんぱ。
体ごとこちらを向いている性別不詳の人影がこちらにむっかて手を伸ばしてくる。
気のせいかあたりには物が焦げるかのような匂いが広がっている。
そして一歩、また一歩とこちらに向かって歩いてくる。
背中を伝わる汗が不快感をもたらす。
彼我の間には窓枠が有るのにそれすらも無視しているかのように歩み寄ってくる。
一歩、また一歩と歩み寄ってくる人影。
その人影がついに窓枠に手をかけ家から出ようとした瞬間。
チリン……。
前方に視線をやると一匹の白黒の猫。
っは、として視線を左に戻すとそこには人影はいなくなっていた。
気が付くとあたりの焦げ臭さもなくなっており、恐怖故か笑っている膝に鞭打ってすぐにその場を駆け出した。
もしあの時猫がいなかったらどうなっていたかはわからないが、それこそ考えるだけ無駄なのだろう。
これを読んでくださった方の中に近いうちに久しい場所へ行く予定のある方は注意してください。
変わったのは景観だけでないという事をぜひ。
ホラー小話 topps und panzer @topps
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