ホラー小話
topps und panzer
第1話 河童
先日あった話だ。
俺は今年から大学生になった。
大学で親しい友人も出来たし、高校生の頃からの知り合いもいる。
念願かなってやりたい授業も受けれるし、それなりに充実している生活を送っていた。
そんな有る金曜日の出来事だ。
次の日学校が無いので、友人達とゲームセンターに行って遅くまで遊んでいた。
その日の帰りは少し遅かったが、俺は両手いっぱいにフィギュアの入った袋を持っていてルンルン気分だった。
三千円ほどで五体のフィギュアを取り、なんと、そのうちの一体は百円で取るというミラクルまで引き起こした。
そんな上機嫌の俺は自転車をとめている駐輪場に向かって歩いていた。
俺は家から4、5キロの所にある駅まで自転車で、そこからは電車で通学している。
家と駅の間には隅田川が流れており、途中全長五十メートルから百メートルほどの長さの橋を渡って駅まで毎日自転車を漕いでいて、俺は安全運転を心がけている。
もちろん暗くなれば電気を点けるし、両耳イヤホンで音楽を聞いたりなど違反になることは一切していない。
そして先述した通り、おれは普段よりも帰るのが遅くなっていて、少しだけスピードを出して自転車をこいでいた。
しばらくして、隅田川に架かる橋についた。
(そう言えばこの橋の名前を知らないな。)
そんな事を考えながらただ何気なく、川に目が行った。
きっとその時の俺は些細な水面の変化に気が付いたのかもしれない。
隅田川の堤防の近くで何か、人のようなものが水面から顔だけを覗いていることに気が付いた。
最初はなんだあれ?、誰かこんな時間に川に潜ってるのか?
と訝しんでいたが、そんな事ぁないだろとすぐに結論ずく。
なんたって夜の10時近くに周辺にはこれと言って大きな光源は無いし、有るといっても水面に映るスカイツリー位なもので、詳しくは知らないが、そんな光源だけで夜の川に潜るのはあまりにも危険じゃないのだろうか?
何にせよなにかが夜の川で泳いでいることは解った。
自転車を橋の途中で止めてそれをよく観察していると、その人影らしきものは川辺へと上がり周囲を見回したあとこちらをジロリとにらみつけてきた。
「ッ!!」
当然街灯はついてるし、ライトアップされたスカイツリーがそれなりの大きさで見える都心。しかし、当然ながら周囲はそうとう暗い。川からあがってきたダイバーがこちらの視線、ましてや見ている場所をピンポイントで見つけられるはずがない。
一瞬驚いたが、見られたという錯覚だったのだろう。そう思い込もうとしたが、こちらを見つめる目を見てあれがただのダイバーではないとすぐに理解した。
なんと、猫のように目が光っていたのだ。
理屈はわかる。網膜に反射板だかなんだかが付いていて目に入った光を増幅して暗い場所でも視覚を確保すると言うものだ。
しかし、普通に考えて水からあがってきたダイバーの目にはゴーグルを付けるだろうし、もっと言うと人間の目は光らないはず…。
(ではあれはなんだ?)
よく見ようとしたが、暗くてよく見えない。
俺たちは、しばらく見つめ合っていたが、人影は再び水中へと飛び込んで行ってしまった。
△▼△▼
そのあと俺はすぐに家に帰りPCを立ち上げた。
あの人影にはほんの少しだが、思い当たる節があったからだ。
昔、小学生の頃に聞いた話なのだが河童が隅田川の周辺の工事を手伝ったと言う話だ。
調べてみると今の浅草あたりで工事を手伝っていたと言う記述を見つけた。
(やっぱりそうか…。)
結局あの河童と思われる人影がなんなのかはわからないままだ。
もしかしたら自分たちの工事した箇所の点検に来てたのかもしれないし、ちがうかもしれない。
それとも、スカイツリーとともにライトアップされた夜桜を見に来ていたのかもしれない。
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