第六十二回 成都王司馬穎は孫會と戦う
「
「それならば、ここまで誘い出して勝負を決するのがよかろう」
頭上には黄色の
▼豹尾とは、
▼五花馬はたてがみを整えて飾った馬を意味する。
その左右に
それに応じて趙王の軍勢から砲声が響き、軍門の旗を開いたその間から孫會が姿を現した。こちらは
▼獬豸とは麒麟に似た一角獣、法の公正を象徴する神獣。
▼襖は武官が着る官服の一種、脇を縫っておらず官服より動きやすい。
「大王は何ゆえに兵を挙げて帝の
孫會が
「趙王は
「大王は万金にも等しい身でありますれば、豪奢な
孫會の言葉を聞き、成都王が怒って言う。
「
その声に応じて居並ぶ諸将より公師鎮が刀を抜いて馬を駆る。
「成都王の
孫會がそう言うと、許超と士猗が馬を並べて駆け出し、許超は公師鎮と刀を交え、士猗は石超と鎗を合わせる。四将は陣頭に武勇を奮い、刀鎗は乱舞して人馬ともに勝負を争う。ただちに敵を仕留めようとする勢いに、
「助けに出て成都王の軍勢を打ち破れ」
孫會が密かにそう命じると、伏胤は馬を駆って敵陣に突きかかり、許超が公師鎮と悪戦する横合いから斬り込んでいく。公師鎮は刀を振るって伏胤の奇襲を防いだところに許超の鎗を腹に受け、もんどり打って馬上から転げ落ちた。
※
趙王の軍勢は許超が勝ったと見るや一斉に攻めかかる。
「成都王を擒にせよ」
口々にそう叫んで突き進む軍勢を前に、伏胤、張衡に迫られた石超は戦を捨てて逃げ奔る。大将が逃げ出しては軍勢も踏みとどまれない。成都王の軍勢は総崩れになって敗走していく。趙王の軍勢は逃げる敵を追い討ちに討つこと、十余里にも及んだ。
成都王の軍勢では公師藩、王彦、牽秀たちが奮戦して
「趙王の軍勢は勢い猛々しく戦いを善くする。孤の軍勢は戦陣に慣れず、敵を見ては逃げ出して一戦に敗れてしまった。七、八千の兵を失ってさらに公師鎮まで戦死しては、しばらく
「勝敗は兵家の常、どうしてこの一敗に敵を怖れて退くことがありましょうか。さらに、敵の軍勢を観るに、率いる将帥は数人に過ぎないことは明白です。大軍といっても指麾が行き届くはずはありません。我が軍勢は敵に三倍しており、孫會は
盧志が反対すると、兄の公師鎮を喪った公師藩もそれにつづく。
「兵には進む道はあっても退く道はありません。軍を引くなど許されないのです。吾が先鋒となって兄の仇に報いさせて頂きたい」
成都王は二人の反対を聞いても猶予して決せず、軍議は三日に及んだ。
※
「一軍が北よりこちらに向かっております。およそ一万ほどかと思われます」
斥候がそう報告すると成都王は盧志を召し、防備を固めさせる。誰とも知れぬ軍勢が到着すると、率いる将は馬より降りて軍門に歩み寄ってきた。
盧志は来意を問うと、ついで陣内に引き入れて成都王に謁見させる。
「吾は
将の一人が涙を流して訴え、成都王は石勒に言う。
「孤の観るところ、お前の齢はまだ
石桑が答える。
「ご安心下さい。吾らを一隊として用いて頂ければ、士卒を指麾して軍機を誤りません」
成都王はそれを聞くと、軍政の官にある者に命じ、衣甲や糧秣を給して軍営の傍らに駐屯させた。
ついで、
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