第2話

金曜日の夜、滋賀に向かう途中の車の中で、


俺は、弟の滝人が心筋梗塞で倒れて、入院したことを知った。


夢で兄貴が言った通りだった。



翌日、母を連れて病院に行き、主治医に話を聞いたが、


大したことはないという。


安静にするために一週間くらい入院してもらうが、あとは投薬で対処できると


いう話だった。




点滴を受けてはいたが、滝人に会って話もできた。


「わざわざ、来てくれてありがとな。


自分でも急にこんなことになって、びっくりだよ」


滝人は俺を見て、少し照れたような顔で、頭をかいた。



「大したことなくてよかったな」



と俺が椅子に座って、そう言うと滝人は頷いた。



「うん、眞人兄ちゃんもそう言ってた。」


俺は目をしばたいた。


「どういう意味や?」


滝人はすこし笑った。


「俺さ、意識を失ってる間、眞人兄ちゃんの声が


『大丈夫、大したことないから、安心しろ』


『隼人(ハヤト)もすぐ来てくれるぞ』


って言うのを聞いた気がするんだよね」



そう言いながら滝人は、俺の顔をじっと見て、いたずらっぽい目をした。


「あ、もしかして隼人兄ちゃんも、


眞人兄ちゃんに呼ばれて、ここにきた?」


俺もいたずらっぽく笑い返した。


「そやな、同じや」


「眞人兄ちゃんは、ほんと周りに気ィ遣いだね」


滝人の言葉に頷きながら、


俺はその『気ィ遣い』という言葉に、


滝人が知るはずのない、胸の痛みを覚えた。

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