しば犬転生 チョビンとマーちゃん

アリス&テレス

第1話


「うぐっ!」


 38日連続出勤、しかも日曜日の深夜、仕事先の机に突っ伏したのは、俺、田中満36歳。

 ちょっぴりブラックな企業に勤める労働者だ。

 俺の心臓は、今、猛烈な痛みに耐えている。


 ……このままじゃ死ぬかも……

 ……いや、多分死ぬ。

 死んだら独り暮らしの部屋に残してきたフィギアや本は、誰が処分するんだろうなあ……


 どうでも良いことを考えていた。

 そして、もう一つの考えが頭によぎっていた。


 もうこのまま、死んじゃっても良いんじゃないのかな。

 仕事から解放されたい、もう楽になりたい。


 ここで俺の意識は途切れた。


★白い部屋


「田中さん、田中さん、起きて下さい、順番ですよ、田中さーん」


 誰かが肩を押して、俺を起こそうとしている。


 ……んんん?

 そうだ、俺は38日連続出勤の末、パソコンの前で倒れたんだ。

 心臓が締め付けられてて猛烈に痛かったのを覚えてる。

 誰かが救急車を呼んでくれたのか?


「ああ、良かった、田中さん、目を覚ましてくれましたね」

「あ、はい」


 目を覚ますと、目の前には、背中に白い羽をはやし、頭に金色の輪っかを浮かべた人がいた。


「……コスプレ?」


 俺が思わず聞く。


「天使です」


 ちょっとムッとした顔で答えられた。


「天使?」

「ええ天使です。それで、田中さんは死にました」

「ふぁ? え、俺死んだの?」

「ええ、そうですよー、それじゃあ、事務手続きを進めますね、次の転生先についてのご希望とかはありますか?」

「転生ですか?」

「ええ、次の生まれ変わり先です」


 天使が事務的に、俺へと生まれ変わり先についての希望を聞いてきた。


 天使の言うとおり、転生ってものが有るのなら、もう二度と、前の生活には戻りたくない。

 あんな地獄のような生き方はしたくない。


「あ、あの? 転生先ってどんなのがありますか?」

「そうですねぇ、生前の功徳ポイントが高ければ自由な転生先を選べるのですが、田中さんの場合、無理っぽいですねえ。なれるとして、次も同じようなブラック企業に勤めるサラリーマンか、犬ですね」

「そんなのイヤです。ほら、最近流行りの異世界転生とか無いんですか?」

「異世界転生ですかあ、異世界転生は人気が高すぎて順番待ちなんですよねー」

「そこを何とかお願いしますよ」

「うーん、調べてみますね」


 天使が、手元の端末で何か調べだした。


「あー、田中さんの場合は、一度犬に転生してからなら、異世界転生できますね」


 ……犬かよ、どうせ選択肢は、前と同じブラック企業サラリーマンか、犬の二択だ。なら、犬だな。


「……犬でいいです」

「では、転生先は、犬っと」

「あ、あのー」

「まだなにか?」

「転生だからチート能力とかは?」

「地球にそんな物有りません……はい、次のかたー」


 俺はそのまま光の中に吸い込まれた。




 ……ううう、狭い、暗い、狭い、苦しい。


 ツルン……トテッ。


 落下の衝撃。

 急な開放感。

 さっきまでの狭くて苦しい圧迫感が消え失せた。

 が、何も見えない。

 暗いのはそのままだ、目が見えないのか?

 自分がどうなったのか分からなくて、パニックになる。


 ……誰かいないの?


 助けを呼ぶため肺に力を込めて、声を絞り出した。


「キュイン、キュイン」


 ……?


 俺は、「誰かいないのか」って喋った筈なのに、変な声が出てる。

 もう一度。


「キュイ、キュイ」


 あ、俺犬だった。

 子犬の鳴き声になってる。


 ペロッ


 何だか暖かくて湿った物が、体中をなめ回した。


 ペロペロペロペロペロペロ……


「キュインキュインキュイン」


 俺は、本能的に体中をなめ回す存在に答えていた。


 暖かくて気持ちいい。


 ん? クン、クンクン


 気がつくと、とても良い匂いが鼻に届く。

 俺の本能が、猛烈な勢いで、その匂いの場所へと行けと言っている。

 俺は、必死で匍匐前進をした。

 身体が思うように動かないが、脳の奥からそうしろと命令が届く。

 ようやく匂いの元へとたどり着くと、周りから声が聞こえてきている。


「「「ンクキュンクンクキュンク」」」


 うるさい。


 俺は、必死で、匂いの場所へすがりつこうとしてるのに、周りに同じようにしてる奴がいて、邪魔をする。

 同じように、良い匂いにしがみついてる奴らをかき分ける。

 フニャフニャと柔らかい。

 邪魔な奴らをかき分け、ようやく空いてる良い匂いを口に含んだ。


 ゴクリ

 キーン


 甘露。


 喉に、甘露が拡がって、脳がキーンとなる。


 もっと、欲しい。


 チュッチュッチュッ……


 必死で吸う。

 甘露が口の中に入ってくるが、吸う力が弱くて中々口いっぱいに頬張れない。


 どうすれば……そうだ。


 俺は、両手で、柔らかい良い匂いを押した。


 フニフニ、フニフニ


 両手で押しながら良い匂いを吸う。

 手で押す前よりも、ほんのちょっと多く出てきてる気がする。


 グイッグイッグイ


 さっきから、誰かが俺を押しのけようとしてくる。

 だが、この場所は絶対に渡せない。

 俺は、必死で自分の場所を守った。


「ンクンクンク……」


 美味しい。


 ペロペロペロ……


 一心不乱に良い匂いを吸っていると、またさっきの暖かくて湿った物が俺をなめ回す。

 気持ちいいけど、今はそれどころじゃ無い。

 良い匂いを腹一杯吸わないとダメなんだ。


「ンクンクンク……」


 ……

 腹一杯飲んだら、幸せな気持ちでいっぱいになった。

 今度は眠りたい。


 ……よいしょっと……あれ? 足に力が入らない。フラフラするぞ。


 ペロッ


 まただ。

 さっきの暖かいのが、フラフラしていた俺を引き寄せて、フカフカにしてしまう。


 フカフカ


 ……ああ、もう眠りたい。

 ……おやすみなさい。



 少しずつ周りの情報が入るようになり、俺の置かれた状況が分かってきた。

 良い匂いの正体は、オッパイだ。

 周りにいるのは、俺の兄弟。

 眠りから覚めると、兄弟達と良い・・オッパイを奪い合う。

 必死で勝利して、オッパイを飲む。

 そして、兄弟達と寄り添い、暖かい場所で寝る。

 この繰り返しを続け、やがて目が開いたとき、自分の正体が分かった。

 俺の母親は、茶色い柴犬だった。周りの兄弟も柴犬。


 なら、俺も柴犬だろうな。


 母犬は、俺たち兄弟をペロペロと優しく舐める。

 こんな優しい目で俺を見てくれる存在が居たのは、前世でも覚えが無い。


 カーチャン……


 俺の満ち足りた時間は、そう長くは続かなかった。

 自分の4本足で歩き回れるようになった頃、突然、兄弟達と一緒にカーチャンから引き離され、ペットショップに並ばされた。

 ペットショップで、俺は必死に頭を使った。


 どうせ飼われるのなら、お金持ちの家が良い。

 貧乏人の家に行って、外に繋がれ番犬とかするのはイヤでござる。

 働きたくないでござる。

 そして、お金持ちの家なら高級ペットフードとか食べられるし。

 お金持ちこそ、究極のお婿先。


 それからの俺は、ペットショップのアクリルごしに見える客の服装をみて、金持ちそう人が通るたびに、必死でアピールをした。

 何人かのお金持ち風のマダムが立ち止まってくれたが、皆俺を見て『可愛い、でもこの子、一番ブサイクね、あっちの子の方がいいわ』と言って、兄弟達が買われて行った。


 神様、柴犬に生まれ変わってもブサイクなのは、何かの罰なのですか?


 数十回の失敗を経て、俺は、悲しみを飲み込む術を覚え、高望みを辞めた。


 優しそうな人なら、誰でも良い。

 俺をかわいがってくれそうな人こそ至高。

 優しさ以外に、何の価値があろうか? いや、無い。


 俺は、頭を切り換え、アピール先を変更した。

 ……が、俺の努力もむなしく、兄弟達は全て買われていき、俺だけが残っていた。

 焦ったが、どうすることもできない。


 だが、ある日、とうとう俺を救ってくれる老夫婦が現れた。

 老夫婦は、優しそうだった。

 俺は頑張った。それはもう頑張った。

 必死でアピールしまくって、最後には疲れて動けなくなった頃、『君がいいな、うちの子になろう』と言ってくれたじーちゃんと、ばーちゃんちの子になった。



★じーちゃんと、ばーちゃんち


 じーちゃんと、ばーちゃんは、優しかった。

 俺に、チョビンって名前を付けて可愛がってくれた。

 あまり大きな家では無かったが、生活に不自由は無い。

 俺は、前世の貧乏くじから、今世でようやく当たりくじを引いたようだ。


 子犬用のゲージの中から、家の中を自由に行動許可が出た頃には、外飼い犬にならないよう、トイレの我慢を覚え、障子戸の障子を破りたい欲望を必死で押さえた。

 じーちゃんが酔っ払うと話す、天文台で仕事をしてた昔話しを適当に聞き流す以外、他に何もする必要が無かった。

 それは、人間にとって最も良きパートナーの姿であった。

 俺は、生活に慣れるに従って、動かざる事山のごとしの勢いでニート化した。


 俺は、じーちゃんとばーちゃんちで、怠惰生活を手に入れるのに成功したようだ。



 ある日、コタツで晩酌をしていたじーちゃんの膝の上で、じーちゃんの昔話を聞きながら寝ていた時、玄関のチャイムが鳴らされた。

 ばーちゃんが、玄関に行くと、誰か女の人の声がする。

 しばらくすると、ばーちゃんが、女の人と何か言い争いを始めた。

 その声を聞いたじーちゃんも、玄関に行く。


 俺は動くのがイヤだったので、さっきまでじーちゃんが座っていた座布団の上に丸まって寝ることにした。

 余計な争い事に巻き込まれるつもりは無いからだ。


 俺が寝てる間も、玄関で言い争いが続き、静かになったと思ったら、3人分の足音が俺の寝ている部屋に入ってきた。


「へー、これが新しい家の住人ね」


 俺が薄目を開けると、化粧の濃い女の人がすぐ目の前にいた。

 まだ若い女の人は、顔中に痣があり、怪我をしている。


 何この人?

 ヤバくないか?

 俺の平穏な生活を脅かすのは勘弁して下さい。


 俺が、警戒感を表しにしていると、女の人が何かを抱いているのに気がついた。


「フンギャーフンギャーフンギャー……」


 うるさい。


 しば犬の俺は、耳が良い。

 耳が良いので、近くで大声出されると辛いのだ。

 俺は、うるさい声に閉口しながら、無視を決め込む事に決めた。


 さっさとアッチ行ってくれ。


 俺は、そのまま眠りについた。


 浅い眠りから目を覚ました頃、気がつくと俺のすぐ横に、さっきうるさく泣いていた奴が寝かされている。

 じーちゃんと、ばーちゃんの姿が見えない。

 顔の向きを変えると、台所の電気が付いていた。

 ガラス戸に3人の人影が見える。3人で何か話をしているようだ。

 俺が会話を聞こうと思って、身じろぎをしたとき、隣で寝ていた奴が低く声を出した。


「ウ、ウウウウ」


 ん?


 奴を見ると、上からかけてた布団がめくれてる。


 寒いのかな?


 さっきみたいに大声で泣かれると、俺の大事な睡眠時間を削られる。

 それはまっぴらゴメンだったので、奴のめくれた布団の代わりに、俺が覆い被さってやった。


 乳臭い。


 だが、何だか懐かしい感じだ。

 ……兄弟達と一緒に寝ていた時の、アノ感じ。

 俺は、奴の顔をぺろぺろと舐めた。

 むずかりかけていた奴は、落ち着いたのか、また寝息を立てだしていた。

 台所では、まだ何かの会議が開かれているようだ。

 俺は、そのまま寝ることにした。


 その日、じーちゃんと、ばーちゃんと、俺の家に、新しい住人が増えた。



★マーちゃん


「マーちゃん、これはチョビン、チョビンですよ」

「んー、マンマンマンマ」

「チョービン、チョビンねー、チョビンもマーちゃんと仲良くしてね」


 じーちゃんと、ばーちゃんが、俺の前でマーちゃんを紹介するが、マーちゃんは、俺の髭を引っ張って痛い。

 痛いが、首も据わってないマーちゃんを振り回すと危ないので、されるがまま耐える日々が始まった。


 新住人が家にやってきてから、一週間ぐらい経った頃か?

 怪我をしていた女は、顔の腫れが引いたらすぐに家から消えた。

 代わりに、マーちゃんが家に残された。


 やがて、マーちゃんがハイハイを覚えた頃には、必ず俺が側に居ることになっていた。

 正直働きたくない。

 働きたくないが、じーちゃんばーちゃんの目が届かない事があるのだ。

 俺が、マーちゃんを観るしかないじゃないか。


 俺は、いつの間にかマーちゃんの隣にいるのが仕事になっていた。



★5年後


 マーちゃんが家に来てから、5年が経った。


 俺とマーちゃんは、いつも一緒だ。

 マーちゃんがお外に遊びに行くとき、俺は必ず付いていった。

 家でゴロゴロしていたいのに、たいへん迷惑な話だ。

 なにせ、マーちゃんは、ほっとくと道路に飛びだそうとするので、慌てて服を咬んで引っ張らないといけないし、行っちゃダメだと言われた用水路に滑り込んだのを、引っ張り上げたりもした。


 最近では、マーちゃんの好奇心は、家の裏山に向かうようになった。

 俺は、山にいるマムシや、毒虫から、必死でマーちゃんを守った。

 一度、俺がマムシに顔を咬まれて、顔面を倍ぐらいに腫れ上がらせた時は、さすがにマーちゃんも心配して泣いていたが、そんな事ぐらいでは、マーちゃんの好奇心が尽きることは無かった。



★天体観測


 真夏の良く晴れた夜、じーちゃんとばーちゃんが、マーちゃんを連れて、裏山に自動車で登った。


 じーちゃんは、天体望遠鏡を自動車から降ろしている。

 ウンコラショウンコラショと言いながら、天体望遠鏡をセットした。

 俺の背中には、犬用のリュックサックが装備され、マーちゃんの荷物を入れてる。


「わー、すごいねえ、あまのがわだー」


 俺は、マーちゃんの見ている方を見上げた。

 今夜は新月。良く晴れた、真夏の夜空が拡がっている。

 俺たちは、天体観測を始めた。


 ばーちゃんが、星図に懐中電灯を当て、マーちゃんに星の名前と星座を教える。

 マーちゃんは、いつも家で聞いてた、おとぎ話しの星座を指さし、キャッキャ言って喜んでいた。


 しばらく続けた天体観測も終わり、帰る頃にじーちゃんが、マーちゃんに話しかけた。


「マーちゃん、じーちゃんはね、寂しくなったり何か願い事があると、ここに来てお星様にお願いするんだ、マーちゃんも何か困った時には、お星様にお願いするといいよ」


 じーちゃんは、さっきまでのおとぎ話の延長で、お星様への願い事を言ってたようだが、マーちゃんの表情は真剣だった。

 すぐにマーちゃんは、お星様に向かって手を合わせて何か願いだした。


「お星様、お母さんをマーちゃんにください……チョビンがいるけど、お母さんも欲しいです」


 じーちゃんは、しまったなって顔になってる。

 ばーちゃんが、じーちゃんのお尻を叩いた。


 じーちゃん、自分で言ったんだからしょうがないな。


 俺は、後ろ足で、蚊に食われた耳の横をかいていた。



★あれ?


 天体観測に行ってから、二週間ぐらい経った頃、あの化粧の濃い女が家にやってきた。

 今回の女の顔は、少しやつれていたが、前見たときみたいな痣は無かった。

 また、じーちゃんと、ばーちゃんと、俺と、マーちゃんの家に泊まり、一週間後に消えた。


 ……マーちゃんを連れて。


 俺は、マーちゃんが突然いなくなってパニックになった。

 いや、俺は平穏な暮らしがしたいから、むしろ、マーちゃんが居なくなって、好都合だ。

 ……だけど、俺を残して突然居なくなるってのは、どうなんだ?

 ほら、何かあるじゃん、こう言う時ってさ、別れの儀式的な何かとか。


 兎に角、俺はどうしていいのか分からず、マーちゃんの寝ていたベッドの周りをウロウロしながら、どっかに隠れていないか探したが、無駄だった。


 少しだけ広くなった家には、しばらく何もする気力を失った俺が残った。



★お嫁さん


 マーちゃんが消えてから数ヶ月が経ち、一度冬を越して雪が消えそうになった頃、俺はお見合いをしていた。


 その日、俺はじーちゃんとばーちゃんに連れられ、自動車で余所様の家に着いた。

 連れてこられた先は、じーちゃんの後輩の家らしい。

 お互いの近況とか、勤務先の様子とかを話し合っている。

 俺はと言うと、さっきから俺を睨んでいる柴犬と対面していた。


 ……何だろう、これはアレかな? フェロモン?


 オスとして、俺の本能が全力で訴えかけてくる。


 俺ケモナーって訳じゃないんだが、相手はまんま芝犬。擬人化要素は皆無の柴犬……

 でも本能が。


 目の前の柴犬も、まんざらではなさそうだ。

 俺を睨んでいた体勢から、俺へと近寄ってきて、鼻をくっつけて挨拶をしている。


 あ、やばい、俺本能に負けるわ。

 だって今の俺、犬だし。


 じーちゃんとばーちゃんは、俺の本能の様を見て、微笑んでる。

 後輩さんと「上手くいきそうですね。種付けが成功したら、1人くださいね」とか言ってる。


 俺は、ハメラレたのか?


 そんな人間時代の前世記憶は、本能が凌駕し、獣として行動した。


 ってわけで、俺は、前世を含めて、童貞を卒業しました。

 ふう、獣として遺伝子を残すのは、勝者の役目? 俺、遺伝子を残せる勝ち組側に生まれて初めて行けたんですかね?


 大人の階段を上った俺は、ある種の自信と共に家に帰った。


 そして、その翌日、マーちゃんが家に来た。




 ズザザザ……


 家の前に、聞き慣れない自動車が駐まった音がする。

 コタツのすぐ側で、耳を立てて、来訪者が来たことに気がついたが、俺は番犬では無いので、働かずにただ聞いただけだ。


 チャリッ


 ……あっ!


 大人の足音と、小さな足音が聞こえた。

 聞き慣れた足音が、玄関へと歩いてくる。

 俺は、ガバッと起きると、部屋のレバーノブに飛び、ドアを開けると部屋を出る。

 そのままの勢いで、急いで玄関まで走って行った。


「ヘッヘッヘヘッヘッヘッ……」


 息が荒い。

 俺が飛び出していったので、ばーちゃんが何事かと、出てきた。


 ガチャ


 ドアが開く。

 最初に見えたのは、化粧の濃い女だった。

 続いて、化粧の濃い女に引っ張られるようにしてマーちゃんの顔が見えた。

 俺は、急いでマーちゃんに飛びついた。

 マーちゃんの顔に怯えの色が張り付いていて、放っておけなかったからだ。


 ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ……


 マーちゃんがくすぐったそうにして笑ってる。


 マーちゃん大丈夫か? 辛い目に遭ってなかったか?


 俺は、必死でマーちゃんの顔を舐めて、その幼い顔に張り付いていた不安の影を消そうと必死だった。

 化粧の濃い女と、ばーちゃんがまた何か言い争いを始めた。

 俺は、急いでマーちゃんを奥のコタツの有る部屋へと引っ張って避難させる。

 じーちゃんが、マーちゃんの頭を優しく撫でている。


 俺は、その日、マーちゃんを守るためにずっと側にいた。

 夜、化粧の濃い女が、お風呂にマーちゃんを入れようとするので、俺は付いていった。

 脱衣場で追い出されそうになったが、洗濯機の影に隠れて抵抗した。

 化粧の濃い女は、諦めて、マーちゃんの長袖の上着を脱がせだした。


 あっ。


 マーちゃんの小さな背中とお腹に、ソレが有った。

 殴られて出来たような痣と、たばこを押しつけられたような跡が残っていた。

 ……

 ……この女、許さんぞ!


 俺が怒りに燃えた時、化粧の濃い女も服を脱いだ。


 あっ。


 化粧の濃い女の身体にも、無数の痣やたばこを押しつけた跡が残っていた。


 こいつもやられてる……なら誰がやったんだ?


 考えられるのは、こいつの男だろうか?

 俺は、今起きている事態を、じーちゃんとばーちゃんに知らせるべく、脱衣場から飛び出して、呼びに行ったが、犬の鳴き声では全く理解してもらえなかった。


 結局、風呂場から何食わぬ顔で出てきた女は、じーちゃんと、ばーちゃんと夜遅くまで話を始めた。

 俺はマーちゃんの側から絶対に離れず、マーちゃんと一緒の布団の中で、台所の会議を盗み聞く。

 ……

 女の話では、マーちゃんが、毎日俺の名前を呼んで泣くので、俺を家に連れて行きたいとか言っている。

 最近では、おねしょをするようになって、今までの育児方法が悪いとか文句を言っていた。


 ふざけんな、マーちゃんのおねしょは、幼稚園の年長組に上がる前で終わってたぞ。


 俺の怒りは関係なく、翌朝、俺はマーちゃんと一緒に車に乗せられて、化粧の濃い女とまだ見ぬ、DV男の家に向かった。


 俺は絶対にマーちゃんを守る。



★決戦の地


 自動車が広めの駐車場に入っていく。

 豪邸では無いが、綺麗な家だった。

 玄関を開くと、男が待っていた。

 これから会社に行くところだったのだろうか?

 40過ぎぐらいの男が、背広を着て立っている。

 中年太りで、腹が出て脂ぎった顔が醜悪に歪んでいた。


「遅いっ、約束の時間を12分も超えているっ」


 男が一喝して、化粧の濃い女とマーちゃんがビクリと震えた。


 ……こいつだ。


 俺は、マーちゃんを傷つけたのは、コイツだと確信した。


「おい、聞いてるのか?」


 男は、怒鳴りながら、化粧の濃い女の髪の毛を掴んだ。


「ゴメンなさい、あ、あの祖父の家を出るとき、子供がもたもたしたものだから」


 ウソだ!

 自分がぐだぐだ言いって、車に乗ろうとしなかったからじゃないか。

 マーちゃんのせいにしやがって。


「わかった、なら罰だ、自分の子供に罰を与えろ」

「あ、あのもうそう言う事は……」


 ドスッ

 ビクッ!


 男が、化粧の濃い女の腹を殴った。

 隣でマーちゃんが、震えている。


「口答えをするな、さっさとやれ」

「は、はいっ」


 女が振り返って、マーちゃんの髪の毛を掴む。


 この男は、卑怯な奴だ。自分の手を汚さず、母親にやらせるだなんて。

 それに、女もこんな男の言いなりになって、マーちゃんを殴ってたとは。


 俺は、覚悟を決めた。

 これからやる事は、ペットとしての一線を越える事だ。

 確実に保健所送りになる。

 だが、俺の怒りは、限界を超えていた。


「あんたがグズグズするから、お母さんが殴られちゃうんでしょ」

「お母さん、ごめんなさい」


 化粧の濃い女は、マーちゃんのお腹を殴ろうと手を振り上げた。


 させるかっ!


 俺は、女へと飛びかかった。

 ガブッ!


「キャー」


 女の足を思いっきり咬んでやった。

 女は、噛みつかれた痛みで、マーちゃんを落とした

 俺は、うずくまったマーちゃんに怪我が無い事を確認して、男の方へと振り返った。

 体格差がある、いきなり後から攻撃された只では済まない。

 が、男は、俺に襲いかかって、女を助けるどころか、その場から、急いで走って逃げようとしてた。


 チャンス。


 俺は、急いで後から追いかけた。


「ワンワンワンワンワンワン……」


 大声で吠えてやったら、男は、足をもつれさせて転んだ。


 腹が出すぎなんだよ、オッサン。


 俺は、回り込んで男の首に噛みついた。


「アガガガガアアアアアアアアアアアアアアア」


 男の悲鳴がうるさい。


「ガウガウガウ……」


 うるさい男への俺の返事は、呻きながら、噛みついた犬歯を男の喉へと突き立てて、振り回す事だった。

 口の中いっぱいに、血の味が拡がる。


 頸動脈まで中々届かないもんだな。


 俺は、柴犬のスペックの低さにいらいらしながら咬んでいた。


「う、うおおおおおおおおおおおおお」


 男は、俺の顎を両手で掴んで、俺を壁に投げつけた。


「キャンッ」


 痛えっ!


 肋骨ぐらいは折れたかもしれない。

 ダメージは、けっこうあった。

 だが、とにかく4本足で立ち上がり、男を威嚇する。

 男を見ると、奴の首筋からは、かなりの血が出て、そこら中血が飛び散っていた。


 ざまあみろ。


 男は、自分の血を見て慌てたのか、急いで隣の部屋に逃げ込んだ。

 部屋のドアを閉められたので、追撃ができないのは残念だ。

 部屋の奥から、救急車を呼ぶ声がする。

 後にいた化粧の濃い女は、警察に電話をしていた。


 それより、マーちゃんは?


 俺は、マーちゃんの無事を確認するため、急いで駆け寄った。


「うう、チョビン大丈夫?」


 しまった。俺、犬生の不覚。マーちゃんを心配させてしまった。


「キュンキュイン」


 ペロペロペロペロペロペロペロペロペロ……


 俺は、マーちゃんの顔を濡らす物を舐め取る。

 そして、後の女と、男からマーちゃんを守るために、女とドアの向こうに隠れた男を威嚇し続けた。



★保健所へ


 しばらくすると、外にサイレンの音が聞こえた。

 救急車よりも先に警察が来たようだ。


「お巡りさんこちらです。中に子供と嫁が兇悪な犬に襲われています助けて」


 男が外で叫んでた。


 なんだよ、元気じゃねーか。頸動脈を噛みちぎれなかったとは残念。


 奴は、部屋から外に回って警察を案内している。

 すぐに警察官が、ドアを開けて飛び込んできた。

 婦人警官と、男性警官の2人だった。


「こっち、あいつです、あの犬が咬んだの」


 化粧の濃い女が、ヒステリックに叫ぶ。

 2人の警察官は、少しあっけにとられた顔で、俺を見てた。

 柴犬が1頭居るだけだ。

 大型犬がいるのかと思ったのだろう。

 警察官の後から、糞野郎男が出てきた。


「何やってんだ、あの兇悪な犬をすぐ殺せよ。射殺しろっ」

「あー、旦那さん、救急車来るまで外で座っててください、傷そんなに深くないですよね」

「な、なんだと、なら速く捕まえて、保健所で殺処分しろよ」

「あー、はいはい、下がってください」


 男の警察官が、糞野郎男の言ってることに呆れたのか、馬鹿にするような口ぶりで押し返した。


「ううううう」


 俺は、警察官より、糞野郎男へと低く唸って威嚇した。


「チョビン、ダメー」


 俺は、マーちゃんの前に立ち塞がろうとしたが、突然後から抱きしめられ、身動きができなくなった。

 そんな俺の姿をみて、婦人警察官も咬まれる心配は無くなったと判断したのか、笑顔になって、マーちゃんに話しかけた。


「お嬢ちゃん、もう大丈夫だよ、そこの犬をお姉ちゃんに渡してくれるかなあ」

「ダメッ、チョビンは、マーちゃんを助けてくれたの」


 マーちゃんが、俺を自分の後に隠そうとする。


 ……暖かい。


 こんなに緊迫した状況なのに、マーちゃんの体温が心地よくて、少し幸せな気持ちになった。


「うーん、ゴメンね、マーちゃん」


 婦人警察官が、マーちゃんを押しのけるようにして、俺の首根っこを掴んだ。


「辞めてー、チョビンは、マーちゃんが叩かれるのを助けてくれたの、そこの悪い奴から助けてくれたんだから、連れてかないでー」

「ん?」


 婦人警察官は、笑顔から真顔になって、すぐに後にいた警察官に俺を渡した。


「ゴメン、秋本君、その子持ってて」

「チョビン、だめー、チョビンを返してー」


 マーちゃんが一生懸命叫んでいる。

 婦人警察官は、またマーちゃんに向き直した。


「マーちゃんゴメンね、ちょっとお姉さんに教えてくれないかな? さっき叩かれてたって言ってたよね?」


 婦人警察官が、マーちゃんに優しく問いかけた時だった。


「まてっ、その犬を捕まえたのなら、もう良いだろ、余計なことをするな」

「そうよ、すぐにその犬を保健所に連れて行ってよ」


 糞野郎男と化粧の濃い女が、慌てて叫んでいた。

 婦人警察官は、後からの声を無視して、マーちゃんの服の袖をめくった。

 マーちゃんの細い腕には、火傷の跡が点々とある。

 すぐに、服をめくり、お腹と背中にあった打撲跡を確かめた。


「酷い」


 少し涙ぐみながら、婦人警察官は、首元にある警察無線で応援を呼んだ。

 その後、糞野郎男と、化粧の濃い女は、救急隊が来るまでの間取り調べを受けていた。

 大声で怒鳴っていた糞野郎男は、男の方の警察官に一喝されて、涙目になって黙っていた。


 泣いてたマーちゃんの隣に、俺がぴたっと寄り添って涙を舐め取る。

 婦人警察官は、優しくマーちゃんに話しを聞いてくれた。

 ちゃんとマーちゃんは、受け答えをして何があったのかを話していた。


 やがて救急車や、児童養護施設の人、地元民生委員の人がやってきて、最後にじーちゃんと、ばーちゃんがやってきた。


 マーちゃんは、またじーちゃんちに戻った。


 残念な事に、俺は他の警察官が持ってきたゲージに入れられ、保健所送りになった。


 ……まあ、しょうがない、俺には次がある。

 次の異世界転生に人生を賭けよう。


 全ては、丸く収まる筈だった。



★翌日のお昼過ぎ


 俺は、保健所のゲージの中に収まっていた。

 周りには、ご同輩の犬猫がどんよりと、諦めムードで寝っ転がってる。

 ゲージから逃げだそうと思えば、いつでも逃げ出せる。

 最初に確認したが、鍵は簡単な引っかけ式なので、ゲージの隙間から手を出してチョチチョイとすれば、クルッと回って、鍵が外れる。

 ただし、部屋のドアが開かない限り、外には出られないようだし、無理するつもりも無い。

 他の奴らは、どいつも鍵開けは無理らしいので、諦めてるみたいだ。


 辛気くさい奴らだな。


 だが、俺は余裕だった。


 俺には、来世で異世界転生がある。

 マーちゃんを助けて、功徳ポイントも充分だろうし、むしろ死ぬのは怖くないって言うか、楽しみですら有るのだよ。


 ちょっと怖いが、未来を知っているので、我慢出来る範囲だ。


 ゲージの中で寝っ転がっていたら、外から職員の立ち話の声が聞こえてきた。


「おい、聞いたか、昨日人を咬んで連れてこられた犬の飼い主の子、行方不明だとよ」

「なんか、防災無線で、呼びかけてたな。寒いのに見つからないと危ないぞ」

「まだ小さい子供なのに可愛そうに」

「ああ」


 ……? マーちゃんのことか?

 ……え、ちょっと待ってくれ、俺は、このまま死んだら、この犬生バッドエンドじゃねーか。

 まずい、ここから出て助けに行かないと。


 ゲージ内で立ち上がって、部屋の様子を確認する。

 残念ながら、部屋のドアはガッチリ閉まっている。

 レバー式のドアノブじゃないので無理だ。


 くそっ、とにかくゲージから出るしかねーか。


 俺が、ゲージの鍵を廻して外に出ると、他の犬猫達が騒ぎ出した。

 そりゃそうだろう、諦めムードの中、器用な奴が逃げだそうとしてるのだ、自分も助けて欲しいだろう。


 ……んー、これだ。


 俺は、閃いた。

 そこから、手の届く範囲のゲージの鍵を全部開けた。

 部屋の中が、犬猫の鳴き声でいっぱいになる。


「どうしたんだ? うわ、何だこりゃ…って待てっ」


 様子を見に来た職員がドアを開けたので、一気に飛び出した。

 後から、他の犬猫も続く。


 俺は、保健所の建物から飛び出ると、山の形を確認した。


 あっちだ。


 じーちゃんちの裏山の形がはっきり分かる。

 まだ残雪が残って、寒い。


 ……待ってろよマーちゃん。


 俺は、駆けだした。

 最初は、じーちゃんちに行って、マーちゃんの匂いを辿るつもりだったが、途中で辞めた。

 それより、心当たりが一カ所だけあった。

 前に天体観測をした、裏山の頂上だ。

 じーちゃんが、マーちゃんに困ったらお星様にお願いするんだよと言っていた場所。

 マーちゃんは、一所懸命にお祈りをしていた。


 もし、マーちゃんが行くとしたら、あそこしかない。


 俺は駆けた、必死で駆けた。

 痛む脇腹を無視して走り続け、お日様は落ち、すっかり暗くなった頃、山の上にたどり着いた。


「ヒュヒュヒュ……ウーワンッマーちゃん


 ちょっと辛いが、大きな声で吠えた。

 ……返事は無い。

 もう一度。


ワンワンワンワンマーちゃんどこだー

「ウウウウ」


 ……何か聞こえた。どっちだ。


 耳を澄ませると、小さなうめき声が聞こえてきた。

 俺は、その音がする方へと、必死で走った。

 山頂から少し下りた遊歩道の脇に、俺の目指す大事な人がいた。


ウオンウオンウオンマーちゃん無事か

「ウウウウ……チョビン?……ああ本当にチョビンだ……お星様ありがとうございます、チョビンを返してくれてありがとう……もう何も要りません…チョビン……」


 声は弱々しいが、ちゃんと生きてる。

 だが、身体が冷たく、ウワゴトを呟いている。

 低体温症のせん妄だ。

 俺は、慌てた。

 必死で俺の身体をこすりつけて、マーちゃんの体温を戻そうとする。

 なのに、山の天気は無情だった。

 冷たい風と一緒に、季節外れの雪がちらつく。


 ウソだろ。


 俺はマーちゃんの上に覆いかぶさり、必死で顔を擦り付け続けた。

 俺の体温で、マーちゃんを助けるんだ。


「チョビン……」


 マーちゃんが、俺を抱きしめた。


 おいおい、このシチュエーションって、フランダースの犬と同じじゃないか。

 絶対にダメだ、あんなバッドエンドは、俺が許さない。


 俺は、マーちゃんの顔を、俺の毛むくじゃらの顔で覆って、体温を逃がさないように必死でこすりつける。

 ただ、俺の体力は、もう大して残ってなかった。

 俺の生命力も、無理な体力を使ったのと、冷え込む夜の山の厳しさに奪われていた。


 くそっ、何なんだよ神様の馬鹿野郎。

 せめて、マーちゃんだけでも助けて下さい。神様お願いです。


 俺は、寝ないように一晩中頑張った。

 長い長い時間の中、マーちゃんの小さな心臓の鼓動が聞こえてくるのだけが、俺の望みだった。


 やがて待ち望んでいたモノがやって来た。

 東の空が、青く金色に光る。

 夜明けだ。


 俺は頑張ったぞ、あと少しだ。もう少し頑張れば、助けが来る。マーちゃんが助かるはずだ。


 辺りが白い。昨日の夜の雪が残ってる。

 だが、マーちゃんの心臓の鼓動は、はっきりと聞こえる。

 放射冷却現象で、辺りの気温が一気に冷えてきた。


 寒い。くそっ。


 ……残った体力の全てを使って、顔をこすりつける。

 俺は必死で耐えた。

 朝の光が登り、一番冷え込む時間を乗り越えた頃、犬の声が聞こえた。


 警察犬だ。


 朦朧とする意識の中、捜索隊の声が聞こえてくる。

 残念ながら、俺はもう力尽きていた。

 でも、俺の耳には、マーちゃんの心臓の音が力強く聴こえている。


 ……勝った。


 何に勝ったのかは分からなかったが、俺は勝ったようだ。



 俺の意識は、そこまでだった。



★ 白い部屋


「チョビンさん、あなたは死にました。次の転生先についてのご希望とかはありますか?」


 あいつだ、天使の奴だ。


「えっと、次の転生先って選べるんですか?」

「ん? ああ、前に田中さんのお名前で来た方ですね、大丈夫ですよ、今回は功徳ポイントいっぱい溜まってるので、異世界でも現世のお金持ちにでも自由に選べますよ」

「分かりました……じゃあ……で、お願いします」

「はい、じゃあ次の方ー」


 俺は、白い光に包まれた。




「キュイキュイキュイ」


 兄弟達に囲まれ、新しいカーチャンのオッパイを吸っていると、誰かに抱き上げられた。


「よし、君にしよう、うちの子においで」


 優しい声が聞こえる。


「じーちゃん、この子、チョビンの生まれ変わり?」

「そうかもね、マーちゃん。大事にしてあげようね」

「うん、いっぱい可愛がる、大事にするよ」

「キュイキュイキュイキュイ……」



 俺は、初めての奥さんのお腹に転生した。

 そしてまた、マーちゃんちの犬になった。


 今度こそ、優雅なニート生活を手に入れるために頑張るつもりだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

しば犬転生 チョビンとマーちゃん アリス&テレス @aliceandtelos

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ