第31話

「サ、サンタさんだらけだね……」

 商店街を歩く俺の隣で、智が目を丸くしてつぶやいた。

 言われてみれば、さっきから必ずと言っていいほど視界にサンタが移る。

 今日は十一月の二十五日。まだ一か月も間が空いているのに、世間はもうクリスマスムードになっていた。

 店のガラスに張られたクリスマスケーキの広告。街路樹に取り付けられたイルミネーション。店の前で宣伝やらティッシュ配りをするサンタさん。

 そして、それらに群がる目を輝かせた子供たち。

 俺は子供たちから智に視線を移して、にっと笑う。

「確かにね」

 

 その後周りを眺めながら歩いていると、商店街を抜けた。

「そういえば、智ってサンタさんいつまで信じてた?」

 俺はふと、智に問う。

「私……かぁ……。うーん……」

 智はしばらく思案顔になり、やがてすっきりとした顔でこちらを向いた。

「小学四年生のころぐらいまでかな。結構遅いでしょ」

「遅いのかな?俺もそんくらいだよ」

「そうなの!?」

「うん。俺の親、サンタが異常にうまくてさ、本当にサンタがいるんじゃないかって、信じ込んじゃってさ」

「私の親もサンタさん上手だった!でも学校の友達が、サンタなんているわけないじゃんって言い出すし——」

「年を重ねていくごとにサンタなんて実在しないってわかっちゃうんだよね」

「だよねだよね!」

 ガシッ!

 お互いの意思が疎通した気がしたので、無言で固い握手を交わした。と、

「あ。千鶴ちゃんってサンタさんのこと知っているのかな?」

 握手の状態で、智が首を傾げた。

「……知らない……かも」

 そこでまたもや、お互いの意思が疎通する。今度は声を合わせて、


「「クリスマスパーティーをしよう!」」 

 

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