第16話
あの日から、心なしか
今は二学期最初の登校日が終わった放課後。
「中学生かっ!」
智とのことをあの図書室で
「いや、高校生だけど…………」
「それは、知ってますけど。でもこれ、完全にどう見ても『自然消滅する中学生の恋』のパターンじゃないですかー」
嘆息混じり半目でこちらを見ながら呟く毒舌宮下に、俺はぐうの音も出ずただ俯くことしかできなかった。
確かに、『自然消滅』というワードが最近俺の頭のなかでちらつくようにはなったけど。……なったけど!
で、でも、俺たち一応、メールとかのやり取りをしているし。連絡が完全に途切れたって訳でも……。……はぁ。これじゃあただの言い訳だ。とても反論なんて言えたもんじゃない。
しばらくして、俺はこの話題とは別の話を切り出す。
「……そっちは、なにしてたんだ?」
「?あぁ、私と
妙に『カップル』を強調してきやがったぞ、この腹黒女は。
「そうだ。で、なにしてたんだ、夏休みの間とか……?」
「そうですねぇ……」
宮下はしばし天井を眺めたあと、スマホを取り出してこちらに見せつけてきた。
「ざっとこんなものですかねぇ……」
その液晶に写っていた写真は、全て千鶴とのツーショットだった。どれも場所は病室だが、そこでお揃いの服を着たり、いろんな料理を食べていたり、そこのテレビで映画や本を見たり。でも、どの写真でも共通していたのが、そこにいる千鶴は全部笑顔だった。
「楽しかったですよ」
そう言って、邪気のない笑顔でスマホをしまう宮下。
「へ、へぇ。た、確かに楽しそうだねぇ」
す、少しは驚いたた俺だが、ここは、れ冷静に見下す形で返事をした。……全く悔しがってなんか、ないから。夏休みを全くエンジョイできてなくても、よよよかったもんね。
「でも……病室以外の場所に行けなくて、残念でした……。…………千鶴さんの水着、見たかったなぁ、でへへ」
見事に鼻の下をでろーんと伸ばして、なにか空想の世界に入り込む変態宮下に、俺は彼女を現実に引き戻すために、軽ーいチョップを頭のてっぺんにお見舞いした。
「痛いですねぇ!なにするんですか!」
「性犯罪者から戻すための正義のチョップ」
「なんですか、それは!」
「だから、正義のチョップ」
そうしてお互いわちゃわちゃしながら放課後の何気ない時間を潰していると、部活動をやっている者たちのために設けられた完全下校を告げるチャイムが鳴った。
「それじゃあ、智さんとも仲直りしてくださいね」
「うん、わかってる。それじゃあ」
それを解散の言葉とし、俺たちは各自学校を出た。
と、言ったものの。あれから智とは一言も会話をしていないどころか、全くコミュニケーションも取れていなかった。『久しぶりに会話するのはちょっと勇気いる』みたいなのが、多分俺たちの間で発生していて。そんなわけで、あれから二ヶ月が経過した。
「最近、時間の流れが雑じゃないですか?」
またもあの図書室で、頬杖をつきながら呟く宮下。俺は、はははと不気味な笑い声を発しつつ、大きな溜め息をこぼす。
「ほんと、なんでこうも話しかけられないのかな……」
「ですよね……。こうなった元の原因は、多分私にありますけど……でも、こうも長続きしますかねぇ。普通、一週間で仲直りするか別れるか、何かしらの発展はあると思うんですけど……」
『はぁ……』
ここで、二人の溜め息が重なる。しかし、これをおかしく思って笑ったりはしなかった。むしろ、どうしたものかと頭を悩ませていた。
「そう言えば、文化祭が近づいてきたな」
考え事が途方にくれた俺は話題を変えるために、今月に行われる行事、文化祭のことを話し始めた。
「ああ。今まですっかり忘れていました」
「だよな。俺もだ」
「…………………………」
「…………………………」
会話、終了。
やばい。この重々しい空気を変えるために文化祭の話を持ちかけたのだが、さら悪化してしまったぞ。
智のことを考えながら、別の話題の話をするという器用なことは、やはりながら俺にはできそうにないな。……はぁ。
それから、数分が経過した頃。
おずおずと、宮下が自分のてをあげながら、ひとつの提案を俺に寄越してきた。
「あの……私がこの事の発端みたいなものだから……私が、責任を取って仲直りのプランをする!名付けて『BNN大作戦』っ!」
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