閑話 その3
これは茉莉が能力を使って寝込んだ時のお話。
今日は、涼の誕生日。そのため、奈緒さんと買い物に行くことにしていた。
奈緒さんは、京さんと車で来た。
「おーい、茉莉ちゃん!乗ってー!」
車の中から大声で呼んでいる、奈緒さん。
私は急いで車に駆け寄り、乗った。
「今日はよろしくお願いします」
「はーい、よろしくされます」
奈緒さんは機嫌が言いようで、ニコニコと笑っている。京さんも奈緒さんの笑顔を見て、穏やかな表情だった。
いいな、夫婦。と思った。
「どこに行くの?」
京さんが奈緒さんに聞く。
「最近出来たショッピングモールに行こう!」
「あぁ、西宮ショッピングモール?」
「そう!」
行き先は決まったようだ。
「ねぇねぇ、茉莉ちゃん!涼君のどこが好きなの?」
奈緒さんがさっきの会話の続きのような口調で凄い質問をぶっこんできた。
私は思わずむせかえる。
「…え、えと…。涼は、なんだかんだ私に優しくて、過保護で、騎士みたいなんです」
「うふふ。良いわね」
奈緒さんに根掘り葉掘り聞かれ、のろけ話をしていたら、あっという間に目的地に着いてしまった。
「じゃ、私、寄りたいところがあったのよねぇ。先にそっちへ行ってもいいかしら?」
奈緒さんがほんわかに言う。
「じゃ、私もプレゼントを見てきますね!」
「了解」
「僕はなおちんに着いてくよ」
「はい、その方がいいです」
そんなこんなで西宮ショッピングモールの入り口で別れた。
何を買おうか模索していると、ショーウィンドーに涼に似合いそうなネックレスを発見した。
黒曜石が埋め込まれた、十字架型のネックレスだ。
少し値がはるがいつものお礼だと思えば、何てことないかな?、と思い、即購入。
その後、奈緒さんがいそうなところへ歩いていると、前方150メートル程のところに二人を発見!
近づくにつれて、回りが騒がしくなったような気がした。
「…だ、誰かー!!その男を止めてー!」
すると後ろで女の人の声が聞こえ、後ろから黒のニット帽を被った男が飛び出してきた。
その男は、奈緒さん達の方に向かっていく。
奈緒さん達はまだ気がついていない。
危ない、と思った。
奈緒さんは妊婦で、流産する可能性だってある。
あと、20メートル。
やるしかないと思った。
ここには、私しか、奈緒さんが妊婦だということを知らないのだから。
京さんは気づいておらず、ずっと奈緒さんの方を向いているため、この事態は耳にすら入っていないと思う。
私は願った。
────男が捕まるように。
結果、それは叶った。
小さな願いだったため、体への負荷も少なく、立っていられないほどではなかった。
私は、奈緒さん達に気づかれないように、ひっそりと休み、12時前に電話を掛けた。
「楽しかったわね、茉莉ちゃん!」
「はい!京さんのお陰です。行く前にカメレオンをかけてくださり、ありがとうございました!」
「お安いご用だよ」
ショッピングを終え、自宅に帰ると、眠くなった。能力による、体への負荷が影響だと思った。
しかし、それは違い、インフルエンザにかかっていたことが後日わかる。
涼には心配をかけないように何も言わなかったが、どうしてだか、私が能力を使ったことがばれていた。
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