閑話その1
「ねぇ、茉莉ちゃん!涼君とはどこまで進んだのー?」
そう聞いてきたのは涼と京さん、けんたろが公民館に出掛けた後だった。
「そうねぇー!茉莉ちゃん、どこまで進んだの?」
「梨佳さんまで…。やめてくださいよ!全然進んでません!」
「やぁだ、涼のやつ。奥手なのかしら?」
「違いますよ、お義母さん。涼君は茉莉ちゃんを大切にしてくれていると思いますよ」
「そうかしら…。そうだったらいいんだけど」
「ふ、2人はどうなんですか?」
お茶を飲みながら、息を整え、2人に聞く。2人組はどこからみてもラブラブ夫婦だ。
ラブラブの秘訣を是非とも聞きたい。
「私はねぇ、」
最初に話し出したのは梨佳さんだった。
「
穂高とは涼と京さん、梨沙ちゃんのお父さんだ。つまり、梨佳さんの旦那さん。
梨佳さんは更に話を続ける。
「最近ね、穂高は私に興味を無くしたんじゃないかと思うの」
「そんなこと無いですよ!」
私は思わず否定する言葉を発してしまった。なぜなら、穂高さんが梨佳さんのためにプレゼントを選んでいるところを見てしまったからだ。穂高さんには内緒にしてくれと頼まれた。もうすぐ結婚記念日なのだそうだ。
「ありがとう。知ってるわ。でも、不安になるの。穂高、いつも頑張ってくれてるから」
「そうですよね。お義母さんの気持ちわかります」
次に話し出したのは奈緒さん。
「私も京を信じきれないときあります。京ちゃんは今まで、女の子に緩かったから…。結婚だって、この子がいるってわかったから、同情して結婚してくれたんじゃないか、とか。私、過去があれですし…。」
奈緒さんは親に恵まれなかった子供だ。産みの親に捨てられ、養護施設で育ったが、8才の時に養父母に引き取られる。つい最近まで(つわりが終わるまで)いたのも養父母のところだ。仲は悪くないらしい。
「そんなことないわ!京をふらふらした子に育ててしまったけど、同情で結婚するような子には育ててないわ!大丈夫、自信を持って!」
「ですよね、わかってます!ありがとうございます」
「いいぇ」
「さ、そろそろ皆が帰ってくるんじゃないかしら?」
「そうですね!」
時計を見ると針が7時を指していた。結構時間がたっていたようだ。
(2人にも色々有るのだな)
私も涼に好かれている気がしない。でも、それは涼は私を好きじゃないから。きっと、これまでもこれからもそれは変わることがないんだろう。
でも、まだ、言える。
もう、別れようって。
待ってて。
きっと、私から解放してあげるから。
涼が苦労する必要はない。
私に縛られる必要など無いのだ。
でも、今はこの温かい空間に居させてね。
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