第47話 監視者


 俺とテレジアは、昨日包帯を買った店で再び包帯を買ってカーティスの店に

 寄った。カーティスは今日も飲んでいた。


 「お 早かったな ヒック」

 「…うわ 昼間から飲んでるわ この人」

 「あ!? なんだケイゴ 今日は女連れか やるねえ フゥアッハッハッ」

 「そんな事より出来てるのか?」

 

 俺がそう言い放つとカーティスは隣の作業場の入り口に立てかけてある武器を

 指差した。俺は嬉しくなり武器に駆け寄り手に取った。


 「おお! 想像通りだ うん! いい感じだ」

 「どうだ? いい仕事だろ?」

 「ああ! 最高だぜ ありがとうカーティス」

 「それはおまけだ」


 隣には牙を収める筒が付いてる、短い道具が置いてあった。


 「いいのか?」

 「ああ 残った材料で作っただけだし 牙を封じるのに二本無いとバランス

 悪いと思ってな おまけだよおまけ フゥアッハッハッ」

 「サンキュー カーティス そういやノーラばあさんて知ってるか?」

 「…ノーラ んー どっかで聞いたような ノーラ んー」

 「マジックコート取り扱ってるばあさんなんだけど なんかカーティスの事

 知っている様子だったんだよ」

 「あっ! 思い出した ああ ノーラさんか 元気だったか?」

 「ああ 元気だと思うぜ」

 「…そっかあ しばらく会ってないな」

 「知り合いだったのか?」

 「ああ 死んだ親父と仲が良かったんだ たまにここで親父と飲んでた頃も

 あったな」

 「へぇー そうだったのか」

 「ああ それじゃノーラさんのところで取り引きするのか?」

 「明日からね」

 「そうか 頑張れよ」

 「ああ」

 「ところで そっちのお姉さんは誰なんだ? 本当に彼女なのか?」

 「あ いや… 旅の仲間さ」

 「テレジアよ よろしくね! カーティスさん」

 「そっか 旅してるのかケイゴ…… よろしく テレジアちゃん」

 「……ん?」


 その時、俺は視線を感じた。


 「テレジア 振り向くな そのまま聞け」

 「何? どうかしたの?」

 「…誰かが俺達を見張っている この場から動くなよ」

 「う うん… わかったわ」

 「もしかしたら 昼間のやつらの関係者かもしれない すぐ戻る」

 「カーティス ちょっとの間テレジアを頼む すぐ戻るよ」

 「……ああ そこに座りなよ テレジアちゃん」


 (…ふーん やっぱただの小僧じゃ無さそうだな ケイゴも視線を感じたか)


 俺は正面に見える高い建物から感じた視線を追う事にした。店を出て高い

 建物から死角に入ると全速力で建物まで走った。

 外階段を昇り、屋上に行くと体を低くしてカーティスの店の方向を、双眼鏡で

 見つめるローブを着たやつがいた。


 「遅いー! 何時まで買い物に掛かっているのよ! 早く頂戴!」


 女の声がした、しかも子供のようだ。

 何の事を言ってるのか、さっぱり分からないが手を俺に向かって差し出している

 ので、手のひらに落ちてる石の破片を渡した。ローブを着た女の子はそのまま口

 の中に石の破片を入れた。


 「ペッペッペッ! なっ 何なのこれ! ア アドリア!」


 女の子は、ようやく双眼鏡から目を離しこちらを向いた。


 「石の破片だ それに俺はアドリアじゃないぜ?」

 「ヒッ!? お前はカーティスの店に居た…… どうしてここがわかった!?」

 「いや なんとなく誰かがこっち見張ってるなあって 誰かなと思ったら子供

 がいるじゃねえか お前 何してんだ? こんなところで」

 「な なんと無礼な! 私は十八歳で大人だ! 立派なレディだ!」

 「ぶっ! レディですか? はいはい 良い子はそろそろ暗くなるので お家

 に帰りましょうね? ……まったく 子供のうちから覗きとかどんなしつけされてん

 だか 親の顔が見てみたいぜ」

 「おっ おのれ! 私を侮辱ぶじょくしたにも飽き足らず 父上母上まで愚弄ぐろうするとは

 この場で叩き切ってやるわ!」


 女の子は立ち上がると帯刀している短刀を抜いた。身長は百四十五センチ

 くらいだろうか、雄叫びをあげ襲い掛かってくる。


 「あの世で悔やむがいい! おりゃあああ! あっ」


 ドタッ

 女の子は自分のローブを踏みつけて前のめりに転んでしまった。顔から転んで

 しまい両手で押さえ転げまくっている。


 「うぎゃあああ! おのれ! よくも よくも!」

 「だ 大丈夫か?」


 その時、後方から人の気配を感じた。振り向くとローブを着たやつが俺に標準

 を合わせてハンドボウガンを向けていた。


 ビシュ

 ハンドボウガンから一発の矢が飛び出した。駄目だ、今回は避けれなかった。


 ガシッ

 しかし、ハンドボウガンの矢は俺に当たる事無く後ろでのた打ち回っている、

 女の子のすぐ側に突き刺さった。


 「てめえ 子供に当たったらどうすんだ? 何者だてめえは!」

 「チッ はずしたか 大丈夫ですか!? アナベル様!」


 どうやら女の子の名前らしい、仲間?部下なのか、そいつも女だった。


 「貴様…… アナベル様に何をした? 返答次第では生きて返さぬぞ」

 「遅い! アドリア! 何処まで行ってたのだ」

 「申し訳ありません いつものパンが焼き上がるのに時間が掛かってしまい

 待っていて遅くなりました で アナベル様 こやつは一体?」

 「私が見張っていたのに気付いて見にきたみたい」

 「で あんたら二人で何をしてんの? 俺を見てた訳じゃ無さそうだな」

 「……お前が知る必要は無い 私が聞いてるのはアナベル様に何をしたかだ!」

 「何もしてないんだが? 勝手に自分でローブを踏みつけて転んでんだけど?」

 「……ほ 本当ですか?」

 「う うん…」

 「ああ… 顔が擦り剥けています さあ今日は帰りましょう」

 「うん… アドリア お腹減った…」

 「パンは買ってあります 宿で食べましょう…」


 そのまま二人は階段を下り町に消えていった……


 「……なんだったんだ あいつらは」


 俺はカーティスの店に戻った。


 「ケイゴ! 大丈夫だったの?」

 「ああ ベンツ一味の関係者じゃなかったわ」

 「……ローブを着ていたか?」

 「カーティス! 知っていたのか? あいつらは知り合いなのか?」

 「まあな 随分前から俺を監視しているよ… 毎日毎日ね」

 「何かしたのか?」

 「……いいや あいつらは放っておけ 別に危害は加えてこないから」


 カーティスは、それっきり例の二人組の話はしなかった。


 「ケイゴ 明日使うんだろ? 調子が悪かったら持って来い 直してやる」

 「ああ とりあえず使ってみるよ じゃあ そろそろ帰る」

 「またこいよ 俺は今 暇してるから」

 「ああ あんま飲み過ぎるなよ」

 「じゃあね カーティスさん」


 武器を預かり俺達は宿へ戻った。

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