第1話 トレジャーハンター


 「よっ 久し振り!」

 「おお圭吾! 来るんじゃないかと思っていたわ ガハハハ!」

 「いやぁ 久し振りに顔見たら話したくなってさ 来たよ。飲むだろ?」


 買ってきた酒と、つまみをテーブルに袋から出しながら置いていく。テーブル

 にはすでに氷とウイスキーが入った飲み掛けのグラスがあった。

 俺は買ってきたものを袋から次々出した。


 「おお 調度、氷が欲しかったんだわ」


 そう言うと、長島さんは立ち上がり氷を一袋持ち、台所に向かった。台所と言っ

 ても三畳くらいのスペースだ。

 ガスコンロと冷蔵庫、縦長の食器棚、ゴミ箱がある。

 台所に持って行った氷の袋を冷凍庫に放り込むと、食器棚の中にあったアイス

 ペールとトングを持ってきて、残りの氷を空けペールに入れながら話し出す。


 「そういや最近 田部井が来たぞ すぐ帰っちまったけど」

 「田部井? 誰だっけ?」

 「孝司だろ コウジ 圭吾の一つ下にいたろヒョロっとしたのが」

 「ああ 田部井か なんか懐かしいな ハハハ んで、何しに来たの?」

 「……さあな 何でも羽振りがいいのか外車乗って知らんやつ等も連れて来や

 がったから追い返してやったわ! 変わりよって……」

 「ふーん…… あの田部井がねえ……」変われば変わるもんだな


 「だけど一番変わったのは、お前かもな… まあ、飲もうや! ガハハハ」

 「……そうなのかもな… まあ飲もう」


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 飲みはじめて一時間、当時の知り合いや先生の昔話で盛り上がった


 「小田と石川が結婚したの?マジか…」

 「そうだぞ! 驚いたろ ガハハハ 小田先生は お前が卒業した次の年に石川

 先生と結婚したんだ 小田先生は今もここで勤務してるわ」


 「そうなのか…あいつも俺の担任でひどかったろうな 今度会ったら謝っとくか

  ハハハ」


 「うむ 反省して謝りたい気持ちがあれば大丈夫だわ ガハハハ …… 

 あの頃の お前はひどいもんだったからな…」


 二口~三口、お互いコップを持ちながら酒を飲む 沈黙の後、長島さんが

 言い出した。


 「ところで圭吾 お前自身はどうしてる? 何かあるんじゃないのか?」

 「……」

 「昔みたく愚痴をこぼしていったらどうだ? 少しはスッキリするんじゃ

 ないか?」

 「…まあ、愚痴って訳じゃないんだけど…… 最近 一人でいると考えるんだよ

 家の事やら色々とね」


 コップを回し中の氷をカラカラ音させながら続けた。

「いや そんなに気にする事ないんだけど最近 お袋が熱出したりして仕事休む事

 多くてさ ゆっくり休んでもらいたいって思うんだが実際 そういう訳に

 いかないだろ……生活あるんだし」


 「……ふむ」

 「あとは由佳が今年 高校受験で金かかるしね 大学だって『行きたい』って

 言われれば行かせてあげたい…三年なんかアッという間だろう…」


 「今の会社じゃ無理なのか?」

 「まず無理だな…ハハ 情けないわ。会社に賃金交渉したけど駄目だったし」


 「……ふむ (こりゃ、相当まいってるな…)」


 下を向いて説明する俺を長島さんが目を細め見つめている。そんな視線ちっとも

 気づかない。


 「まあ あれだ! お袋もいるしなんとかやるさ!」

 「…なあ 圭吾 お前さえ良けりゃ別の仕事 世話するぞ?」

 「え?」

 俺は俯いていた顔を挙げ長島さんを見た。


 「色々と条件はあるが…話を聞くか?」

 「……今より生活が良くなるなら…話だけでもいいのか?」

 「ああ もちろん話だけでもいい…聞くか?」

 「うん 聞かせて欲しい…」


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 長島さんが俺を真っ直ぐ目視して、こう言い出す。


 「この事は他言無用だ いいか? 話を断ったとしても同じ事だ 

 約束できるな?」

 「うん」

 俺は頷きながら返事をした。長島さんはグラスの酒を一口飲むと話しはじめた。

 

 「大雑把な仕事の内容はこうだ ある土地に行き ある物を持ち帰って欲しい 

 内容はこれだけだ」

 「うん ある土地とある物とは?」

 あまりにも漠然とした話で俺は聞き返した。


 「ある物から説明するか……」

 長島さんはソファーに座りながら、身体を捩じらせ真後ろのロッカーの右端を開け

 写真を取り出した。テーブルに置かれた写真は二枚。

 一枚目の写真は白黒のポラロイド写真だった、そこには古い盾が写されていた。

 

 「これは盾か?これを持ち帰るの?」

 見たままを質問してみた。

 

 「いや 持ち帰るのは盾じゃなく盾の中心にある模様がついたものを 持ち帰る

 事だ」

 重なっていた一枚目の写真を、横にずらし二枚目の写真を見せられる。

 綺麗な模様だ、葉なのか?長島さんが続けて言った。

 

 「二枚目の写真は、うちのやつらが模様を解析したものなんだが、色はこちらで

 つけたらしい、実物は黒かもしれんし緑かもしれん、写真のように赤かかも

 しれんのだ」


 (……うちのやつら? 解析って? 長島さん何してんだ?一体、何者なの

 だろう……)

 

 「まあ、わしの事はどうでもいい ガハハハ もう少し詳しい説明をする 

 話を続けるぞ?」

 「あ…ああ、話を続けてくれ」

 「その盾は遺跡で発掘されたものだが 他にも武器や鎧などに同じような模様が

 施されてる報告があがっている これらを持ち帰ってもらいたのだ」


「あ!あれだな アニメや漫画とかによくあるトレジャーハンター的なあれか?」

 (ちょっとだけワクワクしてきたぞ俺…嫌いじゃない、むしろ好きだ!)

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