クリスマス―1
―― 十二月二十五日 昼過ぎ……
東京からの帰路についたケイゴ達は、ケイゴの実家近くまで帰ってきていた。
高速を降りた所にある、バーガーショップで食事中を済ませて県道を走っていた。
―― ケイゴのスマートフォンが鳴り、車を路肩に止めて電話を取った。
《もしもし? お兄ちゃん? 今どこ?》
《ああ もう近い 後十五分あればそっちに着くかな》
《わかった ご飯は?》
《食ったよ 何か買ってく物あるか?》
《お菓子と飲み物買ってきたら? 今 ミカンくらいしかないから》
《ああ わかった》
妹の由佳からの電話だった。ケイゴは県道沿いにあるコンビ二の駐車場に車を
止め、買い物に行こうとするとケイナが付いて行くと言い出した。それならと
三人でコンビ二で買い物をする事にした。
ケイゴは、店の入り口にある買い物カゴを持つとジュースと菓子を適当に
入れていく。テレジアは、本の前で立ち止まりファッション関係の雑誌を手に
取ってパラパラめくる。ケイナはカウンターからピクリとも動かなかった……
ケイゴはテレジアの元へ行き、テレジアが見ている雑誌を手から取ると買い物
カゴへ入れてた。
「なにするのよ」
「買ってやるから 後でゆっくり読め」
「そうなんだ? ありがとう ケイゴ ふふ」
ケイゴとテレジアは、カウンターに向かい支払いを済ませようとするとケイナは
どうもカウンターの横にある豚まんが食べたいようだ。ケイゴはカウンターでレジ
を打つ店員に、豚まんを三つ頼んで支払いを済ませた。
―― ケイゴの実家についた……
ケイゴは車を壁に寄せエンジンを止めた。ケイナは、さっさと車を降りて玄関に
向かう。テレジアは何かモジモジして車を降りようとしなかった。
「どうした? 行くぞ」
「……ううん どうしよう 何か緊張しちゃうわ」
「何が? 何に緊張してるんだ?」
「だって ケイゴの家族がいるんでしょ? 緊張しちゃうでしょ!」
「今 妹しか居ないし 何も緊張する事なんてないだろ? あっ あっちの世界
とか その辺の話はするなよ 地方でダンプの運転手って事になっているから」
「……うん わかった」
荷物を降ろすと、ケイゴとテレジアは玄関へ向かった。
先に来ているはずのケイナは、すでに家の中に入りこたつに潜っていた。
「お兄ちゃん おかえり!」
「ああ ただいま」
「……こっ こんにちは」
「…あっ こんにちは」
テレジアが緊張して由佳に挨拶している。妹の由佳も同じく緊張したようだ。
それを見たケイゴは、軽くため息をつく。
家に入りるとケイゴは買ってきた豚まんと頼まれていた『ようかん』を由佳に
預ける。
「豚まんは お前らで食え」
「ありがとう お兄ちゃん」
由佳は、ケイナとテレジアに豚まんを渡すとコップを取りに台所へ行った。
「ほら テレジア こたつに入ってろ」
ケイゴは、こたつ布団を捲りテレジアに入れと言う。テレジアは捲られたこたつ
の中を覗き込んだ。
「何? 暖かいわ?」
テレジアもケイナの時、同様にこたつに驚いてる様子だ。
「お兄ちゃん……」
由佳が台所からケイゴを手招きする。ケイゴは立ち上がり由佳の元へ行く。
「なんだ?」
「…なんだじゃないわよ あの人 お兄ちゃんの彼女なの?」
「…ばっ 馬鹿違うよ! 会社で働いてる事務だよ 事務」
「彼女じゃないんだ? ……あの人 外国の人なの?」
「……ああ まあそんなところだ」
「…ふうん ずっと東京とかでも一緒だったんでしょ?」
「ああ…それがどうかしたか?」
「…ううん 何でもない」
由佳はそう言うとコップをテーブルに運んだ。ケイゴは、そのまま台所でシャツ
の胸ポケットからスマホを出し長島の携帯に電話した。
《もしもし》
《ああ 長島さんか? 俺 ケイゴだけど》
《おお どうした? 何かあったか?》
《今 実家に戻ったんだが 長島さんはこっちに居るの?》
《いや? まだ出先じゃ 今日は戻らんぞ?》
《まじか?》
《まじじゃ 明日には戻るが どうした?》
《…また駅前のホテル取れるかな?》
《ああ 泊まるところか 連絡してみよう》
《助かる しかし よくこの時期にホテル取れるな》
《ガハハハ まあちょっとしたコネじゃコネ 少ししたら電話する》
《ああ ありがとう》
ケイゴは長島に一昨日、泊まった駅前のビジネスホテルの予約を頼んだのだった。
ケイナはテレビのリモコンを握りカチカチとチャンネルを回すもニュースなど
しかやっておらず暇そうにしていた。それを見ていた由佳がケイナに話しかけた。
「ケ ケイナちゃん DVDとかは見たりする?」
「DVD? なんじゃそれは?」
由佳はケイナにDVDを見せた。
「その丸いのがDVDというのか?」
「うん 見てみる?」
ケイナは釈然としない態度で頷いた。由佳がDVDを入れると再生が始まった。
由佳は大人しい子ではあったが趣味が『お笑い』を見る事だった。随分前からの
趣味で集めた『お笑い』DVDを山のように持っていた。
ケイナは、しばらく黙って見ていた。由佳はケイナの様子を見て立ち上がり
ケイゴ呼ぶを。
「……お兄ちゃん達 ケーキは食べた?」
「ああ 食べたよ」
「ケイナちゃんにクリスマスプレゼントくらい買ってあるんでしょ?」
「……いや 何も」
「何でもいいから買ってあげたら?」
「おもちゃか何かか?」
「……何がいいんだろうね でも何でもいいんじゃない?」
「ふむ まあ何か考えとくわ」
その時、ケイゴのスマホが鳴った。
長島からの電話で予約は取れたと一言だけあった。
ケイナは由佳に質問している。
「由佳 なんでこやつは謝ってばかりなんじゃ?」
「この人達は周りのお客さんを笑わす事が仕事なの 今やってるのが『ネタ』と
いって この人が自分で話を考えて お客さんを笑わしているの」
「人を笑わすのは大変なんじゃな……」
ケイナはDvDを見ていてもクスりとも笑わなかった。
テレビから流れてくるDvDの音声は
《ああーい! とぅいまてえぇーん!》
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