クリスマス・イヴ ―1


 ―― ケイゴの通っていた中学校に着いた、ケイナとケイゴは……


 タクシーから自転車を降ろし用務員室へ向かう。

 ケイゴは、自転車を置き用務員室に入ると長島とテレジアがソファーに座って

 待っていた。


 「遅いわよ ケイゴ!」

 テレジアは開口一番、ケイゴに文句を言う。ケイナはテレジアの隣に行くと、

 ソファーに乗りピョンピョン跳ね出す。


 「ケイゴ ご苦労さんじゃったな 服と靴は買ってきたか?」

 「ああ ジャンパーとランニングシューズを……」

 「ランニングでもさせるのか? ガハハハハ」

 「あっ あとこれ 借りた一万と『コピー』した指輪」


 ケイゴは長島に頼まれていた指輪を渡した。


 「うむ……これで何かあった時はそっちにいけるのう 何も無いのが一番なん

 だが… タクシーは帰したのか?」

 「いや 門のところで待っているよ」

 「ああ なら早く行け メーター上がるしの 明日も来るんだろ?」

 「顔出すよ あっスマホと充電器 こっちいる間は持ってるよ」

 「おお そのほうがいいな 持っていけ とりあえず飯食って休ませてやれ」

 「わかった ありがとう 長島さん 二人とも行こう」


 そう言うと、ケイゴは用務員室を先に出た。ケイナは追っかけるようにして表に

 出て行く。最後にテレジアが買ってきてもらったシューズを履いて、出ようとした

 時に長島はテレジアに『コピー』してきた指輪とは別の指輪を渡し何かを言った。


 「おーい テレジアまだかあ?」

 「テレジア 早く!」


 表でケイナとケイゴがテレジアを呼ぶ。


 「はーい すぐ行くわ」


 テレジアは去り際に、長島の方を向いて

 「大丈夫…… 心配しないで!」


 そう言ってドアを開け二人の元に走っていった。


 (ケイゴを頼んだぞ…… テレジア嬢ちゃん……)


 ケイゴ達は、タクシーに乗り込み駅前に向かう。町はすっかりクリスマス気分、

 店舗はLEDの飾り付けや小さなツリーが出ていた。ケイナとテレジアはその光景

 を、目が食い入るように見続ける。タクシーが駅に着くとタクシーを降りて食事に

 する事にした。駅前の人の多さに圧倒されるケイナとテレジア。ケイゴが握ってる

 ケイナの小さな手からは、緊張しているのだろうか汗が感じ取れた。


 「んー…… 飯なあ 何食うかな ファミレスでいいか?」

 「あたしは 何処でもいいわ」

 「うん!」

 

 ケイゴ達は、近くのファミレスに入って食事を取る事にした。ケイナはメロン

 ソーダとチョコレートパフェが、甚く気に入ったようだ。テレジアもデザートの

 モンブランが気に入ったらしい。


 食事が終わったケイゴ達は、長島に手配してもらったホテルに向かった。

 部屋は二つ、取ったらしい。


 「何も二つも取る事なかったのにな」

 「ええ いつも一緒なのにね」

 「……」

 ケイナは、そろそろ『お寝むタイム』だ、ファミレスを出た辺りから時々、

 コクリコクリしはじめていた。


 部屋は、すでに暖房がついていて上着を脱がないと暑いくらいだ。ケイナの上着

 を脱がしベッドに寝かせ布団をかける。ケイゴはテレジアの格好を見て思った。


 (なんてちんちくりんな格好してるんだ……)

 何時もは短パン、ブーツを履いてるのに家の中で家事をしている時のスカートに

 ランニングシューズ……

 

 「テレジア 明日服を買いに行こう」

 「なんで? いいわよ あたしはこれでも おかしい?」

 「……おかしいと言えばおかしいけど」

 「それに これはケイゴが買ってくれた上着だしね! ふふ」


 適当に選んだジャンパーだが、テレジアには嬉しかったようだ。


 「いや もっと良いの買おう」

 「いいの? あたしに服を買ってくれるの?」

 「ああ 好きなの買えよ さてどうするかな……家に帰って寝てもいいんだけど

 明日また迎えに来るのもあれだし……隣の部屋で俺も寝るわ ケイナの事頼むな

 おやすみ」

 「……ケイゴ 何も言わないのね」

 「……ん? こっちに来ちゃった事か? だって 来ちゃったもんはしょうが

 ねえだろ ……それに隠すのも限界だったしな 俺は契約してテレジアがいる世界

 に行っていたんだ……」

 「……」

 

 黙っているテレジアに、ケイゴは続けた。


 「それに もっと居たいしなテレジアとも…… もちろんケイナともな…」

 「……どうするの? 契約違反で『異世界』探索が無理になったら……」

 「……どうする事も出来ないな 俺には…… そうしたらこっちで仕事探して

 食っていくしかないだろ」

 「……ケイナちゃんどうするのよ」

 「…明日 長島さんに聞くよ」

 「……あたしは あの子とは絶対離れないわ!」 

 「…起きたら迎えに来るよ おやすみ」

 

 (俺だって一緒に居たいに決まっているだろう……だから、お前に隠して

 きたんじゃねえか……)


 ―― 次の日の朝……


  ケイゴは起きると、着替えてテレジア達の部屋へ迎えに行く。


 コンコン コンコン

 「おーい テレジア ケイナ 起きたか?」

 「起きた! ……これどうやって開けるの? ケイゴ」

 「上の鍵を…… 平べったいのを回すんだ」


 カチャ

 「開いた! ケイゴおはよう!」

 「ああ おはよう テレジアは?」

 「用意してるよ?」

 「そうか テレジア! 入るぞ」

 「……いいわよ」


 テレジアは、まだ昨日の事を気にしているようだ……

 ケイゴはケイナを抱きかかえ中に入ると、テレジアに

 

 「出掛けよう 買い物だ」

 「……うん」

 

 ケイゴは駅前のレンタカーを借りて移動をはじめた。昨晩の雪はすっかり解けて

 道路の端に少し残っている程度だった。


 「凄い! ケイゴ凄い!」

 「……ケイゴ 大丈夫なの? 事故とか起こさないでね……」


 ケイナは、はしゃぎテレジアは心配してる。対照的な二人を見てケイゴは笑う。


 「飯食いながら行くか」

 「食いながら?」

 「?」


 ケイゴはハンバーガーショップのドライブスルーに入り注文をする。箱の中から

 声がする。


 「いらっしゃいませ ご注文お決まりでしょうか?」

 「それじゃあ……とろろんチーズバーガーセット三つ、飲み物は……お茶と

 オレンジとコーヒーで」

 「コーヒーはホットでよろしいですか?」

 「アイスで」

 「お車を前に止めお待ち下さい」


 ケイゴは車を左に寄せてバーガーが来るのを待つ。ケイナとテレジアは唖然と

 する。


 「……なんで箱から声が聞こえるのよ?」

 「あれはスピーカー通して……と言ってもわかんないよな ハハ……」

 「……とにかく凄い世界だわ ここは…… ケイゴ……あれは何?」

 「あれ? ただのビルだよ」

 「……ビル?」

 「ああ 会社とか企業が入ってるビルだ こっちの人間はあそこで仕事やったり

 するんだ もちろん一部の人間だけどな 色んな仕事があるよ ここは」


 ピポロン ピポロン

 ケイゴのスマートフォンが鳴る、ケイゴは胸のポケットからスマホを取り出して

 対応する。


 《もしもし ああ長島さんか どうした?》

 《……うん うん ああ わかったよ 今行くわ》


 「……何 今のは?」

 「ああ 長島さんだよ どうした?」

 「長島って 昨日のおじいさんよね? どうしてしゃべれるの? その小さな

 箱に入れるの?」

 「ぶっ ハハハハ そんな訳ねうだろ ハハ 通話だよ通話」

 「通話?」

 「ああ 回線使って声のやり取りしただけだよ」

 「……よくわからないわ」

 「通りとか見てみ みんな携帯もってんだろ」


 テレジアが周りを見てみるとバス停で待つ人や、通行している人がカタカタ携帯

 というアイテムをいじったりケイゴがさっきしていた通話をしている。


 「こっちの世界じゃ 普通 当たり前の事なんだよ」


 タッタッタッタ

 「おまちどおさまです ありがとうございました」


 ケイゴはバーガーを受け取り移動をする。

 「飲み物は適当に頼んだから 好きなの飲めよ 買い物前にちょっと寄り道

 するわ」


 ケイゴはそう言うと、長島の元へ車を走らせた。

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