魔法レベル4


 ケイナの魔力レベルを調べるため組合に向かった。途中、雑貨屋でキャンディー

 を買ってあげると、おいしそうにペロペロ舐めてる。組合につくとテレジアの周り

 に人だかりが出来ていた。


 「そうよ! あたしの相方は こう下から ズバァー! サンダーでズババ!

 てな感じで瞬殺よ! 瞬殺! で これが その時の『魔石』よ!」

 「おおお! 間違いなくS級ランク石だ! すげーな!姉ちゃんの連れは」

 「ああ! Sランクの『魔石』なんか初めて見たぜ! 赤だよ赤!」


 (うわっ……超ドヤ顔してるわ…)

 俺は、気づかれないように受付カウンターに向かった。


 「あのーすいません……割り札一つ売って下さい」

 「はい 冒険者の方ですか? 証明書あります?」


 俺は、冒険者組合発行の身分証明書を見せ、割り札を購入した。この割り札とは

 札を千切る事で炎が出るのだが、その色で自分の魔法レベルがわかる不思議な

 札だ。

 札は燃えると消滅する。身分証明書を見せたのは割引が効くからである。普通は、

 魔法レベルがわかると一緒に売っている、自分の色と同じ札を買い、千切る事で

 魔法レベルの使える全てのスキルが使えるようになる。『カナル』にいた

 ギルベルトやアバナ婆さんは魔法レベルが1で白い札でスキル習得をしたはず。

 

 魔法レベルが2なら黄色い札でスキル習得となり魔法レベル3なら青い札と

 いった感じで習得していく。俺の場合、『黒い炎』でこの『異世界』では存在しな

 いらしい。町で売っていたレベル3の青札でスキル習得したら使えるようになった

 のでそのまま使っている。ちなみにテレジアも青札、魔法レベル3だが……実際、

 テレジアが魔法を使ってるのを見た事がない。

 魔法レベルは、手のひらの魔法陣の色でも魔法レベルを識別できる。 


 「やってみな ケイナは何色かな? 白かな黄色かな?」


 すると、テレジアが近づいてきた。気づかれてしまった。


 「ちょっと何してんの? 噴水で待ち合わせって言ったじゃない!」

 「いや ケイナは魔法レベルいくつかなーって思って 割り札買いに来たんだ」

 「ケイナちゃん? 魔法使えるの?」

 「…どうだろ 割り札で調べるだけでもいいかなって」

 

 (魔法使えるも何も、すでに『変化』で常に使ってるんだけど……)


 「まあいいわ ケイナちゃん その札ちぎってみて」

 「うん」


 ビリッ ボワッ!

 札から大きな紅の炎が出た…テレジアはそれを見て、あんぐりと口を開け呆然と

 した。千切った札は、すぐ消滅した。テレジアは慌ててカウンターに行き

 確認した。


 「ねえ! 間違いなく 割り札を売ったんでしょ?」

 「……はい 何か不具合でも?」


 受付カウンターのお姉さんは不思議そうにテレジアを見た。


 「……ケイゴ ちょっと来て ケイナちゃんも こっち」


 俺とケイナは、テレジアに引っ張られ、待合室の隅に座らされテレジアが小声で

 話しはじめた。


 「……いい? 他に言っちゃ駄目よ? よく聞いて 今 ケイナちゃんが出した

 炎は『紅』よ……」

 「ああ 確かにそうだった な? ケイナ」

 「うむ ケイゴ ペロペロキャンディー食べたい」

 「また後で買ってやるよ」

 「二人とも いいから聞きなさい! 『紅』ってのは魔法レベル4なのよ!4!

 魔法レベル4の色は『紫』と『紅』の二色あるのよ 魔力が桁外れの規格外なのが

 魔法レベル4 最高レベルの術者って事よ 『紫』で国中 探しても十人いるか

 いないかと言われているわ 『紅』となればレア中のレアよ 国は愚か大陸全土で

 二~三人と言われているのよ」


 テレジアは一人で興奮している。


 「で 何が問題なんだよ? さっぱりわかんねーよ」

 「いい? 良く聞くのよ? あたしらは各属性につき一つの魔法しか扱う事が

 出来ないわよね?」

 「当たり前だろ それくらい俺でもわかる 光属性は『フラッシュ』しか使え

 ないだろ そういう事だろ?」

 「そうよ でも『紅』は複数使えるのよ…… しかも強力なボルト系までね」


 俺とケイナはお互いの顔を見て、はしゃいだ。


 「いいじゃん! それ凄いじゃないか!」

 「うんうん! 良いではないか!」

 「……だから あんた達は! はしゃいでるな! これがどういう事かわかる?

 つまり…狙われるのよ……」 

 「は? 一体誰に?」

 「……国よ」

 「国? この国のやつらにか?」

 「そう つまり政府に狙われるって事なの 今は大きな戦争こそ無いけど 国境

 では小競り合いが実際起こっているのよ ほとんどの魔法レベル4の者は 政府の

 特殊機関に飼われてるって噂よ 隣国も同じようにレベル4の術者を小競り合いに

 送り込んでるらしいわ……」

 「……強制なのか?」

 「そうでしょうね…断れば関係者への嫌がらせもあるみたい……それを逃れる為

 に わざと魔法レベル3の青札で一生終える人もいるらしいわ……」

 「……ふむ」


 テレジアは時折、我慢を抑えるような表情をした。


 (……テレジア)


 「とにかく青札でいなさい どちらにしても首都じゃなきゃ紅札は買えないし 

 買った時点で尾行されるわよ……」


 「わかった! とりあえず三人の秘密だ いいな?」

 「うん!うん!」

 「……」


 テレジアは浮かない顔をしている。大丈夫だろうか…おかしな事にならなければ

 良いが……


 俺は話題を変える。


 「ところでテレジア 『魔石』はいくらくらいになった?」

 「…えっ ええ! 凄いわ! いくらだと思う?」

 「金貨二十枚くらい? もっとか?」

 「フフン! なんと! 『魔石』二個で金貨六十枚よ!」

 「ええっ!? そんなにかよ! やったな」

 「心配しなくても ちゃんと半分渡すわよ」

 

 (何言っちゃってるの?この人……倒したの俺だから!でも  少しは元気に

 なったかな? いつものテレジアに戻っているな)


 「いや 俺の分はいいよ ケイナにお金使ったろ? これからもその金で必要な

 物を買い揃えてやってくれないか?」

 「……オッケー わかったわ ケイナちゃんの事はあたしに任せて! ね!」

 「うん! テレジアはキレイにしてくれるから好きじゃ」


 俺達は、一応普段通りに戻った。

 

 「テレジア サポーターの件どうだった?」

 「うん それがロバ持ちのサポーターの日当は平均で金貨一枚と銀貨五枚くらい

 みたいなの 戦闘があった場合も手伝うらしいけど そっちは正直あてにならない

 でしょ?」

 「なあ 組合の掲示板使ってみないか?」

 「掲示板か……それでもいいわね! ちょっと待ってて」


 テレジアは、書く物と紙を受付から貰ってきた。


 「それじゃ条件書いていくわね」

 一、期間は一週間 探索場所『隠遁の森』

 一、日当金貨三枚 延滞した場合日割り増し 半金前渡し 完了後残金渡し 

 一、各蓄積アイテム最低二個持ち込みでお願いします 魔獣との戦闘はしなくて

 いいです 全てこちらで処理します 他 相談可 

 連絡先 ケイゴ宛 宿『ミカヅキ』


 「こんな感じかしら 金額はケチらないで通常の倍つけたわ 後は来るの待ち

 ましょう」

 「ああ いいんじゃないか よし ペロペロキャンディー買いに行くか」

 「おうー!」

 「おー!」


 こうして俺達は、掲示板にサポーター依頼を残し組合を出た。

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