古井戸

ツヨシ

第1話

かくれんぼの最中に、僕は偶然空き家を見つけた。


神社の裏にあり、周りには森しかないところだ。


屋根も壁も一部崩れ落ちていて、完全な廃墟だった。


奥に進むと、狭い庭の先に古い井戸があった。


僕は中を覗き込んだ。中は思っていたよりも深く、底は見えなかった。


そのまま見ていると、井戸の中で何かが動いているような気がした。


暗くてよくはわからなかったが、黒っぽいもやもやしたものが、井戸の内壁をゆっくりとぐるぐる回っているような。


僕は怖くなってその場を後にした。



それでもそれが気になった僕は、時折その井戸を見に行った。


前と同じく暗くてはっきりと見えたわけではないが、やはり黒くてもやもやしたものがぐるぐると回っているように見えた。



ある日、いつものように井戸を覗き込んだ僕は、ふとあることに気がついた。


そのもやもやしたものが、最初見た時よりも高い位置で回っているように見えたのだ。


――登ってる?


なんだか怖くなった僕は、そこらにあった石をそのもやもやしたものに投げつけた。


するとぐるぐると回っていたもやが、その動きをぴたりと止めた。


――?


僕はそのまま見ていた。


最初は何も変化がなかったが、やがて黒くてもやもやしたものが、これまででは考えられないくらいの速さで回りだした。


とてつもない速さだった。


そしてどんどん登ってゆき、僕の目の前にその姿を現した。



     終

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

古井戸 ツヨシ @kunkunkonkon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ