恐怖

美那の青への執着は会うたびに目に付くようになった。


そしてその執着は日に日に過剰になっていった。


服、靴、バッグにアクセサリー類は当然のようにすべてが青。


口紅等の化粧品もすべて青をベースとしたものになり、手足の爪の色も青になった。


「そんなに青いものばかり身に付けるなよ」


俺は幾度となく美那にそう言って注意を促した。


しかし美那はいつも不思議そうな顔をして決まってこう言うのだ。


「どうして? だって青は伸哉がこの世で1番好きな色なんでしょ? 私、もっと伸哉に好きになってもらいたいの」


確かに俺は青が好きと言った。


だけど物には限度というものがあり、美那の青への執着はその限度を超えていた。


俺は美那に恐怖を感じ始めた。


そしてとうとう青という色そのものに対しても恐怖を感じ始めた。



青色のものを見るだけで頭痛と吐き気がして、気分が悪くなるようになった。


普段あまり気にしていなかったが、意外と青色のものは身近に溢れてる。


ボールペンや消しゴム、マグカップ、タオル等の小物や、服や帽子、靴等の衣類。


1人暮らしをしている部屋の中にあるすべての青色の物を俺はゴミ袋に入れた。


俺の部屋から青色のものが一切なくなった。


それでも俺は青色のものが怖くて堪らなかった。


友達の斗真にも美那のことを相談した。


斗真は美那と初めて会った合コンにも参加していた。


だけど斗真は「お前の考え過ぎだ」と言って鼻で笑った。


俺は斗真がしていた青い腕時計を、落ちていた小石で叩いて壊した。

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