破壊神ゼルフェクト2
『ゲラゲラゲラゲラゲラ……!』
哂いながら、無数の「口」が破壊を撒き散らす。
影人が、黒竜が次から次へと生まれ出る。もう終わりだとでもいうかのように。
百、二百、三百……千、二千、一万……。増え続けるモンスター軍団に、エリーゼはゾッとする。
あんなもの。
あんなモノに、人間が叶う道理がない。
ここまできても遊んでいるかのようなその姿。カナメの
杖を握る手が震えて。矢を放ち続けるカナメへとその視線が向けられる。
叶うならば、カナメと共に逃げてしまいたい。
あんなものを倒せる魔法をエリーゼは知らない。
カナメの矢も通じないならば、もうせめて。
「……大丈夫だ、エリーゼ」
「カナメ、様」
「いつか君が俺を守ってくれたように、今度は俺が君を守るから」
そう、あの夜。
カナメが夜の街へと駆け出した夜にエリーゼが守ってくれたように。
今度は、カナメが。
「でも、カナメ様……!」
「ここまでは、作戦通りなんだ」
「えっ」
作り溜めした
「アイツには……ゼルフェクトには、知能がある。俺達に出来る限りの絶望を与えて殺そうとする、そんな思考がある」
こちらにすぐに攻め込んでこない時点で、その予測はされていた。
だからこそ、作戦には幾つかの段階があった。
まず第一弾は、波状攻撃。
カナメによる
そして、ディオス神殿の神官騎士達による究極魔法による一撃。
ゼルフェクトがこちらを甘く見積もっているようであれば、これで大打撃を与えられる可能性もあったが……結果は失敗。
そして、それが失敗したからこその第二弾。
「ゼルフェクトが俺達の全力を見定めて本格的な攻撃に移ってきたなら……そこが、防御面での油断に繋がる」
そう、つまりそれは。
「ヒハハハハハハハ! ゲラゲラゲラ……ヒハ!?」
壊れた建物群。更地となりかけて影人達の溢れるその場所に、光が湧き出る。
それは複数の巨大な魔法陣。描かれる複雑な紋様は、転移を示すもの。
光の柱の生まれ出たその中から、巨大な鎧騎士達が……複数の
「あ、あれは……
「そう。俺が一度矢にして造り直した、「完成品」の
カナメは、
「
籠の中の全ての矢が一本の矢へと変化し、カナメの手の中に収まる。
即座に放たれたそれは輝きを纏いながら、
「
複数の
飛翔する巨竜騎士が、その大剣を振り下ろす。
「ゲ、アアアアアアアアッ!」
神話の時代にすら一体しか存在しなかった複数の
そして、オウカの執念が蘇らせカナメによって完成したオウカの
それが複数の触手をぶちぶちと音を立てて千切り、ゼルフェクトの巨体を弾き飛ばして。
巨竜騎士が、魔力を纏う大剣で
「……ダメ、あれは……!」
レヴェルが叫ぶと同時に、ゼルフェクトの身体が真っ二つに切り裂かれて。
その断面から生えた無数の触手が巨竜騎士を絡めとる。
……そして同時に、千切れた触手達が動き
それだけで壊れるほどヤワではないが……触手に生えた「口」達の放つ攻撃が
「やっぱり……あのゼルフェクトも普通の手段じゃ殺せない……!」
かつてのゼルフェクトもそうだった。今回は違うかもしれなかった。
それでも、やはりアレは。
「カナメ、そっちにザコ共が行くぞ!」
上空で黒竜達の相手をしていたシュテルフィライトの叫び声はが響き、数体の黒竜達がカナメに向かって飛んでくる。
だが、それもまた作戦の内。
「……俺は
「分かった、任せて」
「はいです」
「私、だって……!」
そう、彼女達はカナメにゼルフェクトの放つ「何か」が来た時の為の護衛要員。
カナメの魔力消耗を避ける為、ゼルフェクトに集中できるようにする為の。
「剣よ、私の意に従え!」
「出るです……
「鎌よ、死を纏いなさい……!」
アリサの持つアルハザールの剣が巨大化し、ルウネが負けないくらいに巨大な光の刃を構え……レヴェルの手の中には黒い輝きを放つ鎌が収まる。
そして……エリーゼも襲い来る黒竜を睨みつけ、杖を構える。
負けては、いられない。こんなところで、こんな場所で。
想いも、命も。こんなところで潰えさせるものかと、エリーゼは恐怖を抑え込んだ。
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