破壊神ゼルフェクト3
「風よ、嵐よ! 逆巻き荒れ狂い、全てを呑み込み彼方へ消えよ!
エリーゼの放った竜巻の魔法が黒竜の一体を弾き飛ばし、一体をグラつかせる。
「くっ……!」
ゼルフェクトが片手間のように生み出したとはいえ、やはりドラゴン。
大魔法と呼ばれるクラスの魔法でも倒すには至らない。
だが、それでも。
「充分……! 変形・斬輪剣!」
アリサの持つアルハザールの剣がチャクラムに変化し、投げられると同時に無数のチャクラムに分裂しながら黒竜へと襲い掛かりその身体を切り裂いていく。
「グガッ……」
「ゲアッ」
絶命した黒竜達が消えていく中で、それでも突っ込んでくる一体のドラゴンにレヴェルの投げた鎌が突き刺さる。
アリサのチャクラムに比べれば傷の浅いはずのそれはしかし、そのたった一撃で黒竜の命を奪い……レヴェルの一声でその手に戻る。
「……ルウネの分がないです」
「悪いね」
そんなアリサの軽口に頬を膨らませながら、ルウネはそれでも油断なく周囲を見回して。
その間にも、カナメの準備は整っていた。
「
カブトムシの角のような鏃の矢を番えたカナメが、それを放つ。
甲高い鏑矢のような音を立てて飛翔するそれはゼルフェクトへと近づくにつれ野太い羽ばたきのような音へと変化し……その眼前で、カブトムシ型の鎧を纏った巨人のような姿へと変化する。
ゼルフェクトの顔面を掴んでミシミシと音を立てるそれを見て、レヴェルは呆然としたような顔をする。
「ウソ、あれってアトラス……!? いえ、違う。カナメの矢なのね……!?」
現れたアトラスに顔面を掴まれたゼルフェクトと触手達は巨竜騎士も
しかし、その攻撃は幻のように消えたアトラスには当たらずに宙を切る。
「そして、こうだ……!
続けて放たれた矢は着弾と同時にゼルフェクトを無数の光のリングで拘束して。千切られた触手までもが同様に拘束されている。
その隙に傷ついた
無論、それだけでは通じない。ゼルフェクトが無限に近い世界からの呪いの集合体である以上、そのうちのたった一つを「殺した」ところで意味はない。
……だが、それだけではない。カナメは
「カナメ、貴方……まさか、それを」
「
呟くレヴェルの目の前でカナメは
「……
放たれたその矢はカナメの手元を離れると同時に無数の黒い
その全てが相手に死を叩き付けるレヴェルの力で構成された、何処までも追いかける
そんな絶望的なものに蹂躙されながら、ゼルフェクトは絶叫をあげる。
たとえまともな生物ではないが故に死の概念がなくとも、死を叩き付けるレヴェルの力は……そして込められた魔力による打撃はゼルフェクトに確かなダメージを与える。
それはゼルフェクトの持つ魔力を削り、弱め……しかし、それでもゼルフェクトは倒れない。
国一つであろうと絶滅させるだけの力を持った
「まだ倒れないか……なら!」
次なる矢を携えるカナメの前で、しかしゼルフェクトは動かない。
地上に散らばった影人達も、空舞う黒竜達も……その全ての動きが、静止する。
「……?」
まさか、今ので倒したのでは。
そんな微かな希望が誰かの間に広がり……しかし次の瞬間、巨大な振動が地面を揺らす。
魔法。
違う。
偶然の地震?
違う。
感じるのは、身を凍らせるような絶大な魔力。
「こ、この魔力……まさか!」
「マズい……カナメ、我は一度離脱する!」
レヴェルが叫び、シュテルフィライトが何処かへと全力で飛んでいく。
そして、その瞬間。大地を割るようにして黒い光の柱が何本も現れる。
天を貫くように現れたそれらは……そのまま曲がり、静止したゼルフェクトへと吸い込まれていく。
ゼルフェクトが、咆哮する。
その身体を、強く輝く光の膜が覆う。
「この近辺のゼルフェクトの欠片……! 目覚めたというの!?」
揺れる。大地が揺れる。
現れた黒い光が合流する度に、ゼルフェクトの力が膨れ上がっていく。
誰もが絶望に膝をつくほどに。その心を、折るほどに。
そこに存在するだけで全てを諦めるほどに、ゼルフェクトの力が増していく。
カナメが「前のレクスオール」とカナメ自身の魔力を持つように。
二つのゼルフェクトの力が合わさっていく。
……そこには、巨大な一つの絶望が出来上がろうとしていた。
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