カルゾム帝国にて2
「……ほう」
ラファエラ達を包んだ炎の消えたその後に残るのは二つの死体……ではなく、その場にそそり立つ金属の壁。
それは収縮すると幾つかの金属球となり、焼け焦げた床に転がっていく。
そういう変化形の能力を持つ
「やっぱりゼルフェクト神殿の連中か。なめた真似してくれるじゃないか」
「そうか? いきなり乗り込んできて皆殺しにする方がどうかと思うがの」
「仕方ないだろ? 生きてちゃいけないものが生きてるんだ。なら、殺すしかない」
「傲慢だの」
「反面教師ってやつでね。足りないモノを補おうと、自主的に決めてる」
「何の話かは知らんが……」
緑色の肌を持つ男……
覆面男達の隙間から見える肌はやはり緑で、それを見てカルゾム帝王が声をあげる。
「は、早く余を助けよ!」
「おいおい、さっきの火から助けてやったのは私だろうに」
「ええ、ええ。勿論だとも帝王殿。少し待つが良い」
リーダーの
四方八方から襲い掛かる覆面達を前にラファエラは複数の金属球を取り出し、ばら撒くように放り投げる。
「
「雷撃球か……
「
その魔法装具は、
彼等に伝わる
だが、それ故に知っている。単体では大した威力はなく、慌てて展開した
だから、問題はない。
「なっ……馬鹿な、今のは雷撃球のはず!」
「最初の「盾」を見てそういう感想が出てくるんだから凄いよなあ」
床に倒れ伏した覆面の
「で、残ったのはお前かい? その偉ぶりようからして、ここでの責任者もお前だろ。なら後の話は……」
「ふふ、くく……やれい!」
「ん?」
まだ何か居たのか。そう考えるラファエラの眼前で、貫かれ死んだはずの
ゆらりと、糸に繰られるかのような不気味な動きをする
「……確実に殺したと思ったけどな。さては、こいつらにも何か融合させてたな?」
「我等の覚悟を侮ったがお前の敗因よ!」
弾けるようにして跳ぶ覆面の
「……ちっ!」
ゴキリと嫌な音を立てた腕に魔力の雷を纏わせて何とか弾いても、残りの
「ああもう、うざったい!
ラファエラの周囲に現れた電撃の壁に
「……まったく、アホばっかりだ。他ならない私がこうして頑張ってるのに、どうしてこんなに自滅したい奴が多いんだ」
分かっていない。
何も分かっていない。
ゼルフェクト神殿の連中がゼルフェクトを復活させたいのは理解できる。
たとえ破壊神であろうと創造主だ。その先に理想の世界があると考えるのは愚かではあるが理解できる。
だが、違う。違うのだ。ゼルフェクトはそういうモノではない。
何故なら、ゼルフェクトとは。
「……!?」
城の床が揺れ、割れる。巨大な腕が飛び出し、足場が崩れ体勢を崩したラファエラを押し潰さんとするかのように握る。
「ぐ、あ……! こ、れは……!」
巨大な鋼の腕。何処か虚ろさをも感じるこれは、まさか。
「おお、
「
カルゾム帝王の歓喜に満ちた声にラファエラは自分を握る腕の正体を知る。
だが、そんなもの。普人の魂で代用などできるはずがない。あれは魔人の潤沢な魔力でどうにかなった代物だ。なのに、これは。
「喜べ、魔人の女よ。お前も我等の
「そうだ! ゼルフェクトの力によって余は帝国をこの世界の絶対帝国と成す! 永遠に続く栄華を手にするのだ!」
ミシリ、バキリと。ラファエラの身体が潰れる音がする。
聞こえてくる哄笑は、自分達の栄華を確信しているのだろうか。
「……はあ」
そんな中、ラファエラは小さく溜息をつく。
「……仕方ないな。こうなるともう……早いか遅いかの差でしかないだろうさ」
「ハハハハハ! 何をブツブツと……」
カルゾム帝王の言葉が、最後まで続く事は無かった。
ラファエラから溢れ出す強烈な光が……玉座の間を包み込む大爆発を引き起こしたからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます