宝石竜シュテルフィライト4
何を、一体何を掴んだのか。その明確過ぎる答えに、シュテルフィライトはまさかと思う。
まさか、まさかそんなものを使うというのか。
その為に、あんな無謀な突撃を。
「まさか……お前っ、それが狙いで!」
「
完成した矢が、放たれる。
そうして生まれ出たのは、輝く真珠色の騎士。
光を受けて虹色に煌くつるりとした滑らかな外観の全身鎧と、同系色のドラゴンのものに酷似した翼。
その手に持つのは、盾。腰に差した剣を抜くことなく、真珠の騎士は落下するカナメを抱え飛翔する。
「馬鹿な……馬鹿なっ! そんな矢……そんな無茶苦茶な矢、我は知らぬ……っ!」
ドラゴンの破片を空飛ぶ騎士に変える。そんな矢は、前のレクスオールですら使っていなかった。
魔力量が凄まじいのは分かっていたが、だとしてもこんな。
こんな無茶苦茶なもの……すでに「前のレクスオール」の「
「いくぞ、シュテルフィライト……!」
「ま、まだだああああああ!」
カナメが空舞う手段を手に入れた以上、もはや地上をどうにかすることに意味はない。
だが秘石の魔眼を解除したシュテルフィライトが放ったドラゴンブレスを、真珠の騎士はカナメを抱えたまま華麗に回避し……そのまま地上へ向けて飛んでいく。
「な、にを……いや、まさか!」
そう、シュテルフィライトの身体からは先程の攻撃で無数の欠片が落下した。
秘石の魔眼は今は発動していないから、地上の脅威はほぼ無い。
そして今の空中戦は、下の二人も見ていたはずだ。
と、いうことは。
「カナメ!」
「これを!」
「ああ!」
二人から何かを受け取ったカナメの姿に、シュテルフィライトはその推測が完全に正しかった事を理解する。
そう、拾っていたのは。やろうとしていることは。
「
「カ、ナメェェェェ!」
眼下で放たれた矢から、無数の真珠色の
その数、総勢二十三。
恐らくはシュテルフィライトの身体と同じ能力の装甲を持つであろう
一斉に剣を抜き、盾を構えて空を飛ぶ。その悪夢のような光景に、シュテルフィライトは手加減無しのドラゴンブレスを放つ。
「死、ねえええええええええ!」
全力で放ち、カナメ達ごと滅ぼし尽さんという勢いで放ったドラゴンブレスの、その中から……ボロボロに傷ついた盾と鎧をそれでも煌かせる数体の真珠の騎士達と、全く無傷の真珠の騎士達が現れる。
前面に防御役を置いて部隊の被害を最小限にしたのであろうことは明確で、その更に下では透明な障壁を展開し仲間達を守っているカナメの姿もある。
「こ、の……!」
シュテルフィライトの眼前でバラバラに散った真珠の騎士達は剣で何度もシュテルフィライトの表面を斬りつける。
鱗が無くとも世間でドラゴンと呼ばれている類のものよりも遥かに硬いシュテルフィライトの身体は簡単に傷つくことはないが、それでも気分の良いものではない。
ない、が……それより大事なのはカナメだ。カナメを見失う事があってはならない。
そう考え見下ろしたシュテルフィライトの視線のその先には……カナメと、三体の真珠の騎士の姿。
その意味は考えるまでもなく、三体の真珠の騎士達はカナメ達をそれぞれ抱えて飛ぶ。
これでもはや、秘石の魔眼は完全に意味を消失した。
騎士達の性能を考えれば、回避に徹すれば簡単にドラゴンブレスにも当たるまい。
だが、それでも「それだけ」でしかない。
カナメの
言ってみれば、これでようやく同じ舞台に立ったという程度。これ以上はやらせはしない。
常に飛び続け戦場を変える事で、カナメの接近を防げばいい。
そう考え、シュテルフィライトはカナメ達から離れた空域へと移動する。
そう、丁度巨大な石……要石と呼ばれるソレがある地点へと飛んで。その瞬間、その要石の周辺に巨大な魔力を帯びた光の柱が立ち昇る。
「これは……転移魔法だと!?」
光の柱から抜け出た巨大な鋼の腕が、シュテルフィライトの顔面を掴む。
握り潰そうとするかのようなその力は、隅々まで魔力が通っている証。
そして、その腕だけでシュテルフィライトは理解する。
魔人達の叡智を詰め込んだ遥か太古の鋼の巨人、
「そんなものが残っていたか……!」
光の柱が消え、その姿が露わになる。
輝きを放つ水晶の目がシュテルフィライトを捉え、掴んだ腕を振り放り投げる。
「ぬ、う……!」
背後にはカナメ達。眼前には
「だが、警戒すべきはただ一人!」
警戒するべきは、カナメだけ。そう考え
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