宝石竜シュテルフィライト3
「く、うお……!」
大地を輝きで埋め尽くすかのように、巨大な宝石の結晶が次から次へと地面から生える。
カナメ達の足元を狙うかのようなそれらは「そう」と分かっていれば避けるのは簡単だが、それ以外の行動が難しい。
そして、それだけではない。
「来るです! 右前方、赤!」
ルウネの示す方向では、赤い宝石結晶が内部から輝き光を放っている。
その輝きが宝石結晶全体に伝わるその前に、カナメが走る。
「
宝石結晶から放たれた極太の光線をカナメの魔力が絡め取り、矢へと変える。
「まだ来る! 左後方、緑……くそっ、遠い……!」
アリサの声が示す方向……かなり離れたその場所では、今度は緑の宝石結晶がチャージを終え光線を発射する。
一見見当違いの方向に発射された光線は他の宝石結晶に当たると反射して威力を増し、更に別の宝石結晶に当たり跳ね返る。
何処かで止めなければ、やがて手に負えない威力に成長するかもしれない光線は、発射される場所も……そして発射される数も一つではない。
地面に生えた全ての宝石結晶が発射器であり反射器であり、増幅器なのだ。
そしてそれは、カナメが
そして、跳ぶ事すら空に居るシュテルフィライトが許さない。
いつでもブレスを放てる構えのシュテルフィライトは、その魔眼を輝かせながら大地を見下ろしている。
「さあ、どうした。それで終わりかカナメ。もしそうなら……トドメをさしてやるぞ!」
そして、地上に向けて放たれるシュテルフィライトのドラゴンブレスが拡散されながら降り注ぐ。
盾を構えたところで当然防げそうにはないそれを、カナメはしっかりと見据える。
「
すでに何度目になったかも分からないドラゴンブレスをカナメは矢に変え、しかしその瞬間カナメの足元から宝石結晶が生えてカナメを弾き飛ばす。
「うあ……っ!」
「カナメ!」
「カナメ様!」
弾かれ転がるカナメを、更に生えてきた宝石結晶が弾く。
ないが、弾かれた衝撃が消せるものでもない。
それをするには、
だがそうした時に、果たしてシュテルフィライトを制圧しきれるのか。
その葛藤が、カナメの防御を最低限のものにしていた。
「
自分の落下地点に生えてこようとする宝石結晶を矢に変え、カナメは上空のシュテルフィライトを見上げる。
このままでは体力が削られていくだけなのは確実。そうなる前にどうにかしないといけないが、どうすればいいのか。
「……やってみるしかないか」
カナメは覚悟を決めると、アリサとルウネに向かって叫ぶ。
「アリサ、ルウネ! 今からちょっと無茶やるから、あらかじめゴメン!」
走り回る二人にも声が届いたであろうことを祈りながら、カナメは走るのをやめてその場に留まる。
そうすれば、当然のようにカナメの足元に巨大な宝石結晶が生まれ生えてくる。
カナメを吹き飛ばすべく凄まじい勢いで地面から生えるソレを、カナメは足に込めた魔力でしっかりと踏みしめる。
そう、弾き飛ばすというのであれば、弾かれればいい。その力すら利用して、跳べばいい。
「
「ふん……愚かな!」
放たれるドラゴンブレスをも
だが、それでも届かない。
空中のシュテルフィライトはすぐに空中を移動し、カナメの届く範囲外へと離脱しドラゴンブレスを放つ。
「まだだ……
「何をくだらん……」
言いかけたシュテルフィライトは、カナメの手元を見て目を見開く。
その手にある黄金の弓に構えた虹色の矢は、まさに今作っていた矢。
ならば、その能力は。
「う、お……」
「いけえっ!」
カナメの魔力を込められた
「な、なめるなあああああ!」
即座にシュテルフィライトはドラゴンブレスを吐き相殺するが、その直後にカナメが二本目の
如何に魔力を拡散するシュテルフィライトといえど、自分と同質の力であればそれは別の話だ。
対抗する魔法をも拡散し呑み込むシュテルフィライトのブレスの力を持った
「ぐ、あ……」
自分自身の攻撃を返される。その屈辱にシュテルフィライトは体から破片を撒き散らしながらも、自由落下するカナメを睨み付ける。
その更に後方では宝石結晶を避けながらアリサがカナメを救うべく走っているが……今度はそんなことはさせぬとシュテルフィライトはカナメの上空へと飛ぶ。
ここからドラゴンブレスを連続で放つ。
一撃二撃ならともかく、三撃四撃と放てば対応しきれまい。
久々に傷ついた身体も、この戦いで得た勲章。だが、それでも自分が勝つ。
自分の身体から落ちる破片と……痛みを気にもせず、シュテルフィライトは全力のブレスを放つべく魔力を込めて。
「……
何か輝く小さなものを握ったカナメの、そんな言葉を聞いた。
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