宝石竜シュテルフィライト
「魔力充填開始……!」
腰の後ろから
相手はドラゴン。それも古代から生きているような……現在の基準で例えるのであれば
そんなものに様子見だとか奥の手だとか、そんなものがあるはずもない。最初から最大のカードを切る。
それこそが最善手であり……それ故に、ルウネは棒に魔力を込める。
「……
巨大な青い刃が出現し、それを見たシュテルフィライトが楽しそうに笑い声をあげる。
「ははは、面白いものを使う! そんなものは久しぶりに見たぞ! だがそれは……ん?」
アリサの
どちらもシュテルフィライトに対し決定打となるかは不明。
……だが、最低でも一瞬の興味さえ引ければそれで充分。それさえあれば、カナメは。
「
カナメの手に、光が集う。カナメの魔力を材料として、光が凝縮していく。
普段よりも更に、強く、多く込めて。あの夜、レッドドラゴンを貫いた時のような……消し飛ばすレベルの魔力を凝縮させる。
「
それは、カナメの手の中で光の矢となって顕現する。レッドドラゴンを恐怖させたそれを見て、しかしシュテルフィライトは狂喜する。
「おお、それだ! レクスオールの矢……! なんと懐かしい! なんと凶暴な光か! さあ来い! 撃つがいい!」
「……!」
足元に辿り着こうとしているルウネから興味を完全に失ったかのように見えるシュテルフィライトに、カナメは僅かな違和感を覚える。
それだけではない。アリサの
何故。疑問に思うも、答えは出ない。
疑問を抱えたまま放たれた
……そして。
「……えっ」
「な……!?」
ルウネの
「ルウネ!」
「はいです!」
「放て……
ルウネが素早く離脱するのを見届けると同時に、アリサの
「なるほど。何の魔法かと思えば吹雪か。つまらぬ魔法だが、さて」
最大の攻撃手段であるカナメの
それが何を意味するのか……その答えは、すぐに弾き出される。
「なるほどね、その身体……魔力を弾くってわけだ。私の
戦いの場では有り得ない程の余裕もそれか、とアリサは吐き捨てる。
人間が巨大な敵と戦う際に必須の魔法をほぼ無効化できるのだ、余裕に決まっている。
「くく……ほぼ正解といったところだ。だが安心しろ、レクスオールはそんな我と何度も戦い撃退してきたぞ」
「ネタバレしても余裕ってか。ムカつくね……!」
「勝って当然の戦いは飽いた。それ、お前もその玩具以外に手があるならやってみせよ」
「ちっ……」
アリサは杖を素早く仕舞うと、腰の剣に手を伸ばす。
世界最硬を誇るダグマ鋼の剣。ようやく出来た逸品ではあるが……このドラゴン相手にどこまで通じるか。
ちらりとルウネを見れば、やはり攻めかねているのが見える。
当然だ。相手がドラゴンである以上「技」だけではなく「力」は必須。
それでいて、魔力という対抗手段がほぼ使えないのだ。
……そしてそれは、カナメとて同じだ。
今は外で、周りには何もない。
ならば
いいや、無理だ。
魔力を拡散された状態で何処まで通じるだろうか。
ならば……ならば。
「さあ、どうしたカナメ。やらないというのであれば、我からいくぞ?」
「……いいや、手は決まったよ」
「ほう?」
「確認するけど。お前に負けを認めさせればいいんだよな?」
落ち着き払った静かな口調で言うカナメに、シュテルフィライトは頷く。
何を思いついたのか。何を見せてくれるのか。
そんな歓喜と共に、シュテルフィライトは宣言する。
「ああ、その通りだ! 我を打ち倒し屈服させてみせよ!」
「……分かった。なら、俺の魔法でお前を倒す」
カナメの構える弓に……手に、風が集う。
「
放たれた矢は巨大な竜巻へと変化し、大地を呑み込む轟音と共にシュテルフィライトへと向かう。
「ハ、ハハハ! 何かと思えばこんなもの……!」
自分よりもさらに巨大な竜巻を嘲笑いながら、シュテルフィライトはその先にいるであろうカナメに軽い失望を覚える。
……すでにその先に、三人が居ない事にも気付かないまま。
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