古の巨神伝説3
「聞いてみなきゃって、心当たりがあるのかい?」
「んー、あるといえばある、というか。知ってるならあの人かなっていうか」
「なによ、ハッキリしないわね。誰なの?」
ラファエラとオウカの視線を受けながら、カナメは「うーん」と唸る。
たぶん知っているだろう……程度の話になるのだが、言わなければ許されそうにもない雰囲気だ。
「ヴェラール神殿のセラト神官長だよ。他に知っていそうなのっていえばディオス神殿だろうけど、俺はそっちには伝手無いしなあ」
正確には挨拶くらいしたことはあるのだが、セラト程の付き合いではない。
ダルキンがお店を閉めてしまったせいでセラトがクランにお茶を飲みに来るから、自然とセラトとは顔馴染みになってしまっているのだ。
「あの人かあ……私苦手なのよね。話しかけるなって空気纏ってるし」
「私は会った事ないなあ」
「はは……」
実際セラトは結構神経質なのだが、自由人な気質のあるオウカとラファエラは正反対なだけに苦手なのだろう。
「とはいえ、会うとなると約束しないといけないよな。ルウネ、面会の申し込みしてきてくれるか?」
「分かったです」
頷いて歩いていくルウネがドアに手をかけると丁度コンコンと扉をノックする音が響き、アリサが顔を出す。
「お? なんか珍しい組み合わせだね」
横をすり抜けていくルウネに道を譲りながら、アリサは部屋に入ってくる。
確かにこの三人の組み合わせは珍しい……というか、ラファエラとオウカが普段居ないだけではあるのだが。
「とりあえずお帰り、カナメ」
「ああ、ただいまアリサ。他の皆はどうしてるんだ?」
「エリーゼはなんか紙の山に埋まってた。最近特に手紙とかが多いみたいでさ。なーんか面倒事の予感がするよね」
「……心配だな」
ハインツがサポートしているのだから心配する必要はないのかもしれないが、身分的な事を考えれば王国絡みの問題なのだろう。
とすればカナメが関わってどうにかなる問題でもないだろうし、エリーゼにそれとなく聞いた時には「大丈夫ですわ!」と言われてしまったので、今のところカナメとしてはどうしようもない。
「イリスはレクスオール神殿。夕方くらいまでには全員ぶっ飛ばしてでも帰ってくるって言ってたはずだけど」
「神官長だもんなあ……」
本来職務的にはほとんど何もないはずの「神官長」なイリスが忙しい理由は、主にカナメであったりする。
レクスオールの如きもの、などという意味を持つ姓を与えられてしまったカナメの登場によりレクスオール神殿は最近色んな申し込みやら何やらが届くらしく、イリスが直接黙らせなければいけない案件が多数発生しているようだ。
ちなみに、これに関しても「今のところカナメさんに手伝って頂くような事態ではないです」と手伝いを断られている。
「レヴェルは大神殿じゃないかな。調べたい事あるって言ってたし」
「ふーん」
イルムルイの一件があってから、レヴェルは「自分の知らないその後の知識」の吸収に貪欲だ。
カナメも調べものに付き合わされた事がある。
……まあ、こちらについては特に心配はないのだが、帝国でルヴェルの
「アリサの方はどうなんだ? なんか最近忙しかったみたいだけど」
「ん? ああ、新しい剣の調整も丁度終わったからね。今は丁度暇だから、お疲れだろうカナメと遊びにでも行こうかと思ってたんだけど……」
そこまで言って、アリサはラファエラとオウカに目を向ける。
取り込み中であることを察したのだろう、軽く肩をすくめる。
「また今度にした方がいいかな?」
「ああ、いや。逆に丁度良かったかもしれない。今二人と話をしてたんだけど、
アリサは冒険士だ。冒険者として必要な各種技能を高いレベルで修めている上に前衛としても優秀。
トリッキーな戦い方を好む中衛寄りのラファエラと、
アリサがいれば、その足りないモノが簡単に埋まってしまうのだ。
「
「あくまで「かもしれない」の話だけどな。だからセラトさんに話を聞こうと思って」
「ふーん?」
「乗り気じゃなさそうだね」
意外そうに言うラファエラに、アリサは「そりゃそうでしょ」と答える。
「
「ん、まあ……ただ、「あるのかどうか」は確認しておくべきだと思ってる。もし知らずにあるんだとしたら、そっちの方が危険だしさ」
「確かにね。知ってると知らないでは対処方法が違う。そこは賛成かな」
頷き合うカナメとアリサを見て、オウカはラファエラに近づき耳打ちする。
「……そういえば私よく知らないんだけど、この二人どういう関係なの?」
「ん? さあ。友達なんじゃないかな?」
適当な返しをするラファエラにオウカは「そうかしら……」と言いながら二人を見つめていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます