古の巨神伝説2
「ありがと、ルウネ」
「いえ」
ジタバタと暴れながらクラークに羽交い絞めにされているオウカをそのままに、ラファエラは早速疲れた顔でカナメの前にやってくる。
「で、えーと……あれだ。遺跡の話なんだがね」
「あ、ああ。また今度にする?」
「ちょっと、私を除け者にしようなんて許さないわよ!」
「恨まれそうだ。今話しておこう」
「……そうだな」
肩をすくめるラファエラにカナメが苦笑して頷くと、ラファエラは机に腰かける。
「まあ、見つけたって話さ」
「見つけたって」
「
「たぶん、でいいならだけどね」
「行く、行く行く! 今すぐ行くもが!」
「落ち着け。たぶんって言ってるだろ」
「むー!」
クラークに口も塞がれたオウカが暴れているが、抜け出せるはずもない。
そんなオウカの様子に満足そうに頷くと、ラファエラはカナメに向き直る。
「正確には、見つけたのは遺跡の位置に関するものだ。遺跡そのものじゃあない」
「えっと……つまり、その情報を解析すれば遺跡そのものが見つかるような確度の情報ってことだよな」
「そういうことだね。まあ、私としても「確かにそうだよな」って類の話になるんだがね」
もったいぶるラファエラに、カナメは考える。
ラファエラの言い方だと、何か見落としがあって……それに気づけば当たり前と思えるような、そんな話に聞こえる。
「つまり、俺達もその情報があれば同じ感想になるってことだよな……ラファエラ、聞かせてくれないか?」
「いいとも。そもそものきっかけは要石とか言われる巨石なんだが……」
要石。別にカナメと関係あるわけではなく何かを封じるようにそこに存在する巨石などの事を指す言葉だ。
地面に深く埋まっていることから古代の魔法に関連するものなのではないかと言われたり、しかし研究してみればただの大きい石ということが多く、見つかっても「またか」で済まされる事も多くなった……しかし観光資源として適当な謂れをくっつけられる事も多い代物の総称である。
そしてラファエラの見た要石は地面にその大部分が埋まっている平べったい、何かの舞台のようにも見える巨石であった。
「遥か昔に神々が踊ってたとかそういう謂れをくっつけた石らしいがね?」
「……それと
「まあ、ここからさ」
ようやく落ち着いたらしいオウカにそう言って笑うと、ラファエラは話を続ける。
その石舞台のような巨石を見て、ラファエラはピンときたのだという。
これはもしかして「そう」なのではないかと。
「転移魔法……って覚えてるだろ?」
「呪いの逆槍にあったやつだよな」
転移魔法。対象を瞬間的に別の場所に移動させる、失われた魔法のことだ。
「要石は転移魔法の「宛先」なんじゃないかと思ってね」
「宛先?」
「そうさ。転移魔法っていうものは位置情報を正確に入力しないといけない繊細な魔法だ。言ってみれば、些細な土地の隆起も許さないんだ」
「まあ、そうだよな。高さの位置情報もあるんだろうから」
「そういうことさ。要石みたいなクソでかいものが人為的に埋め込まれたのであれば、そういった事を防ぐ為の魔法がかけられてるんじゃないかと……そう思ってね」
ついでに言えば要石が埋まっているなら、そこに何かが出来る事を防ぐこともできる。
家屋の巻き込みなどという事態や木の類の発生の可能性も除去可能だ。
「で、魔法に関してはよく分からなかったが結構な魔力が込められてた。それでピンときて色々調べてみたんだが……どうにも「それ」と思わしき要石は、とある地点を中心に円状に存在することが分かった」
とある地点。帰ってきたラファエラ。
そこまでの情報が揃えば、カナメにだってピンとくる。
しかし同時に「まさか」とも思う。
「……聖都に、遺跡があるっていうのか?」
「聖都に、というよりも大神殿の側に、だろうね。そもそもこの国って、あの大神殿とやらの周りに出来た国なんだろう?」
なるほど、確かに考えてみれば当然かもしれないとカナメは思う。
大神殿は……再臨の宮は、神々が用意した建物だ。
当然そこは拠点として使われていたはずであり……古代の人類の施設があったところで、何もおかしな話ではない。
むしろ、そうした類のものが今は大神殿と呼ばれているそれしかないのが不自然なのだ。
「だとすると……地下、か」
「これは私の予想だがね。たぶん入口自体は聖国の誰かが情報を握ってるはずだ。そうでなければおかしい」
「そう、だな。俺もそう思う」
最初から土の下に埋もれていたというのであれば別だろうが、この大陸には今も昔も人が居たのだ。
故意に埋められていて気付かなかったという話でもなければ、この土地に町を造る際に分かっていたはずだ。
それが人目につく場所に存在しないということは……何かの理由があって秘匿されていたということになる。
「聖国がもう
「だったら見せて貰いましょうよ!」
「ん……」
もしそうなら安心だ。カナメが今更口を出す問題ではない。
しかし、そうではないのなら。
そうとは気づかぬままに其処に存在しているのだとしたら……確かめる必要は、あるかもしれない。
「……聞いて、みなきゃな」
カナメは知り合いの……気難しい神官長の顔を思い浮かべながら、そう呟いた。
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